2018年4月13日、それまで1600satoshi近辺で取引されていたコインが、急遽1satoshiにまで値下がりする出来事があった。
コインの名前はBitSoar。英語で「舞い上がる」を意味するSoarとは裏腹に、価格は地面に叩きつけられた格好になる。
当然、投資家たちは大騒ぎになった。暴落しているが、もし元の価格に戻れば100倍近い爆益になる。その10分の1でも10倍。しかも暴落する直前まで価格は数ヶ月安定していたのだ。当たればデカい。それほど分の悪い賭けではないかもしれない。しかし、大騒ぎしている人々の誰一人として、暴落の原因が何なのかを知らないのだった。
BitSoarの公式ウェブサイト を訪れてみる。PoSと非中央集権を謳ったよくあるコインで、際立った特徴はないものの、いい加減に作られている感じはしない。各国語に翻訳されたホワイトペーパーもあり、ウォレットもリリースされている。得体の知れないコインがあふれるCoinExchangeの銘柄の中では「まとも」な部類だとすら思えた。
ただし気になる箇所もあった。上場先としてPoloniexやBittrexといった名だたる取引所が挙げてあるが、これは事実に反する。実際の上場先はCoinExchangeのみである。また、サイト全体が静的コンテンツで占められており、新着情報を随時更新するような作りになっていなかった。当然、今回の暴落についても全く触れられてはいない。
本物か偽物なのか定かではないがTwitterアカウントも見つけた。しかしこのアカウントは一度もツイートしていないようだった。
Facebookページはチームのメンバ―がイベントに参加した写真がいくつか投稿されているものの、2018年2月の投稿を最後に更新されていなかった。
2018年4月15日、公式ウェブサイトが404 Not Foundを返すようになり、投資家たちの不安は高まった。開発チームがコインを大量に売却して逃げたのではないかという憶測が広まり、50satoshiまで反発していた価格は7satoshiまで下落した。その後、サイトの状態は500を返したり、PHPのエラーを表示するようになったりと変化した。サイトが復旧し、開発チームから何らかのアナウンスを行うのではないか、と期待する人たちもいた。
翌16日に公式ウェブサイトは復旧。しかし内容はまったく更新されていなかった。開発チームからのアナウンスを期待してBitSoarの価格は90satoshi近くまで上昇したものの、結局アナウンスが行われることはなく、ジリジリと後退を始めた。
この記事を書いているのは2018年4月24日。すでに謎の暴落から10日が経過している。価格は6satoshiまで落ち、開発チームからのアナウンスは依然として行われていない。ただしこの一週間の間に、ホルダーたちが集う Telegram において、韓国人と思われるユーザーが興味深い投稿をいくつか残している。真偽のほどは不明だ。
その投稿によると、BitSoarは韓国の企業が開発したコインであり、韓国のSNS・カカオトークの中では開発チームからのアナウンスがあったらしい。また今回の暴落に関する未ティーングが2回ほど行なわれ、2回目には韓国の投資家も参加していたそうである。以下はカカオトークでの発表とされるレポートを筆者が英語経由で日本語に翻訳したものである。意味が通らない箇所もあるが容赦願いたい。
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BitSoarについての包括レポート
開催日: 4月17日午後2時〜4時
場所: Guroホテル
1.Bitsoar ハッキング状況
- 2018年4月13日 (金) PM5: 30 ~ 4月15日 (日) PM5: 30 ウォレットサーバーがハッキングされる
- ウォレットサーバーを閉鎖
- 被害総額: 47億枚
- ハッキング経路は中国のIPからと思われる
- さらなる被害はなし
- 対ハッキングセキュリティシステムを再編。サーバーをインターネットから隔離し、IPSハードウェアファイアーウォールを導入(月額20,000ウォン)。セキュリティ会社をKCXが利用するものに置き換える。
2. 現在の BitSoar の措置
1) 新コイン開発計画
開発会社: Tongblock開発会社
開発期間: 45日
開発者: 国際的に有名な開発者たちが行う(世界第5位のインド人開発者を含む)
2) 内容
新コインとBSRを1:1の割合で交換
交換基準は次のとおり。
Jang Chul-hoonの個人ウォレットを通じて購入されたフランチャイズ権を持つコインは1:1の割合で交換されるが追加報酬がある。
ディストリビューターやCOKEを通じて購入されたコイン以外については別途議論する。
CoinExchangeで購入されたコインについては、可能な限り損害を出さないように努力する。CoinExchangeで購入してBSRのウォレットに移されたものについては、サーバーにリストされている。本日以降CoinExchangeで購入したものについては、原則として補償は行なわれないことを理解してほしい。
Koyukのトランザクションデータを保存しておくこと(取引日、数量、金額、身分証明書を含む)
追加補償金:5〜10%を予定(5%は確定しているが、長い間待っていた人には新コインを少し多めに支払う予定)
新コインの総供給量は26億枚を予定
新しいコインのビジネスモデル Tien-Fei: Visa Master / Union Pay Cardなど、にするためには生活の中でコインを使わなければならない。したがって生活の中でほとんどコインを持っていない場合はコインを使うことができない。我々は数量を確認した後に、正確なコインの数を決定する。現在では多くのコインが100億枚程度を販売している(?)。したがって、開発者チームが見つかった後で改めて通知する。
開発が完了する前に基本的なドキュメントを準備する。アナウンスを通じてKCEXへの上場を促進する。KCXに情報したあとは、まずP2P取引所KCEXが開設され、その後香港の取引所GCEXがリストアップされる。上場時期はブロックサイドでアナウンスされたあとにアナウンスする。新しいコインは、取引所に上場する前に取引所に事前に掲載される。
理由: KCXの定款ではCoin Market Capの1〜50位までのコインは上場できるが、取締役会の決議によって150位までに緩和される予定。新しいコインを上場させるのが簡単になるかもしれないため注目している。
KCXはオーストラリアのACEX、香港のAPEXと交流があり、100億ウォンのコイン交換ローン契約(コインが不足している場合にコインを借りる)を結んでいる。新しいコインは、現在KCEXとGCEXに上場している。
BSP(BSR?)は将来改名する
採掘量を減少させる:Bitexの上場の条件として望ましい
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このレポートによれば、BitSoarは新しいコインにスワップするようだが、そのコインの価値は保障されていない。また補償の対象はハッキング前の投資家となっており、暴落後に購入しても補償は受けられないように読める。どうやらこの「宝くじ」はハズレだったようだ。Telegramの情報によれば韓国の投資家たちは非常に怒っているらしい。だが本当に怒るべきなのは、このような重要なアナウンスから今も爪弾きにされている非韓国語圏の投資家だろう。
上がる材料が見えないので、筆者は手元に残しておいた少量のコインをとっとと叩き売ることにした。
今後も数多く生まれるであろうクソコイン劇場のありふれた一幕である。