先日、美術館との打ち合わせの前に少し時間があったので、私とレジデンス先のギャラリースタッフ2人、知り合いの彫刻家さんの4人で周辺を散策していました。
その道中で彫刻家さんが突然道端の草を指差して、
というわけです。
植物に詳しいギャラリースタッフの方が「それはホトケノザって言って、まあ雑草だよ」と教えると、
と言って、食べ方について調べていました。
道端の雑草を『食べられるか否か』という無人島サバイバルめいた思考で見ている人がすぐそばにいることに私は驚きました。それも駅前の大きなモニュメントを作った実績のあるような年配の作家さんが。
これは極端な例かもしれませんが、アートで食べていくのは、それだけ難しいということです。生活必需品でないこと、欧米に比べ日本のアート市場が小さすぎることなど理由はさまざまですが、そもそも継続的な収入になりにくいというのが大きなところです。
作品が一度売れたからといって、次も売れるとは限らない。売れっ子になったとしても、いつブームが去るとも限らない。今月100万円稼いでも、来月は収入ゼロかもしれない。それが現在のアートの世界です。
残念ながら、その現在のアートの世界を変えようと考えているアーティストは少ないと感じています。多くのアーティストが現状に不満を抱いていながら、大抵は『どんなものを作れば売れるのか』の視点でしか考えていません。そして売れる作品と自分の作りたい作品のどちらかを選ぶしかないという錯覚に陥ってしまいます。『作品が売れるようになりたい』気持ちと『売り絵を描いても仕方がない』という気持ちの板挟みになるわけです。
そして自分の作りたいもののために売ることを諦め、売れっ子を見下すようになる人たちもいます。貧乏で苦労している作家こそが本物のアーティストだと言う人もいます。
この対立思想が世の中に浸透すればするほど、すなわちアーティスト性とお金との溝が広がっていくほど、『好きなものを作って飯が食える』作家の数は減っていくので、これをなんとかしたいと思っています。アーティストは食えないのが普通だろうという認識が広まると、それだけお金を払う人がいなくなるからです。
「実際に市場がそうなってるんだから対立思想が生まれるんだろ」という意見もあるかと思いますが、卵が先か鶏が先かはそれほど重要ではありません。実際に今この瞬間にも鶏は卵を産んでいるのですから。
『売り絵を描いても仕方がない』という考え方自体は、完全に間違いというわけではありません。売れる作品というのは幅が限られており、そのときの流行に合わせて同じような作品が売れていきます。そして流行に合わないものは淘汰されて消えていく……市場の原理としてはこれで正しいですが、全てのアーティストが既存のニーズに乗っかることだけを目指していると、業界自体が先細りします。
たとえば日本のゲーム業界が名作のリメイクや続編、または焼き直しのような既存ジャンル既存システムの作品ばかり作っていた時期はどうだったでしょうか。
もしくは大学が各職能のエリート養成学校になってしまい、業界においての最先端研究を行わなくなったら国はどうなるでしょうか。
それと同様に、売ること以外の部分を目的とした作品も、アートの世界には必要だと考えています。
もちろん売り絵にも存在意義があります。売れない作家が妬み嫉みをいくら言おうと、『欲しい人がいて、それを作る人がいる → 相互利益』というのは揺るぎない正義です。人類全体における富と幸福の総量が増えています。
私はこの両方が等しく必要だと考えています。つまり、
という構図を、
という構図に持っていきたいわけです。
私は普段Twitterで製作や展示活動の情報発信をしていますが、ALISで記事を書くようになったのは『作品を売ること以外のアーティストの収入源をみつけ、そのモデルケースになって情報共有することで、アートで食える作家を増やしたい』という理由です。いいねや投げ銭、有料記事などを収入源にできる窓口としてアーティストがALISを有効活用する方法を模索していきたいと考えています。
また、これは想定外のよかったことなのですが、ALISの性質から言いましても、とりわけウォレット機能も実装前の現状で記事を書いたり積極的な活用をされているみなさま方は、投資志向の強い人が多いように思えます。いいねひとつ、記事ひとつ、自分の行動ひとつひとつの価値感覚と管理に敏感で、みなさまの記事はとても勉強になります。ALIS自体のシステムの可能性だけでなく、ユーザーのみなさん自体が間接的に私の目標へのヒントや助けになっていることをありがたく感じています。
web3.0時代の道を拓き、一人でも多くのアーティストが専業で食べていけるように、失敗しまくりながら体当たりで頑張っていきたいと思います。これからもよろしくお願いいたします!
Twitterもやっておりますのでよかったらぜひ見ていってくださいませませ。