体重ほどやっかいなものもない。
頭の中はその推移で満たされ、生産性は著しくおちる。
気軽に測れすぎる数値に政府は制約をつけた。民間人の体重測定を禁止した。測れるのは一部の有資格者のみ。こうして我々から体重は消滅した。
憑き物が落ちたように人々は学び、働き、そして余暇を楽しんだ。何も問題はないはずだった。
「あれ太ったかな。」そう思っても知るすべがない。つまめるお腹の肉。鏡に映る太い脚。それでも正確なことはわからない。いや私はもっとスマートだったはずだ。そう思いダイエットを始めるが、今度は細すぎる気がする。
目視に頼る不安感。鏡を見る時間が増えていく。すべての人が限界だった。「体重を見せろ。」それで解決することだ。ついに政府も無視できない段階まできた。世界は体重を取り戻すだろう。どんなに残酷な数字でもそれが必要だと気づけたのだ。
そして発表される。
「すべての鏡を禁止します。」