早速ですがみなさん、周りに仮想通貨を始めたばっかりの初心者がいて、どんな銘柄を買ったらいいか聞かれたとき、なんて答えますか?
ビットコインだけ買っておけば、あるいはリップルだけ、モナだけ、ALISだけなどそれぞれ自分が大切に思っているコイン(トークン)をおススメするのでしょうか。
そして、その投資対象は、本当に、命の次に大切といわれるお金、しかも他人のお金を投資する対象として適格であると、100%自信を持って言えますか??
今日はそんな疑問に応える記事を書いてみたいと思います。
きっちりと理論的な裏付けのある最適なポートフォリオというのが存在するので、是非それを覚えて帰ってくださいね!
最初に結論から言うと、最適なポートフォリオは「仮想通貨の時価総額」の上位から、その時価総額の占有率(ドミナンス)に応じたコインをその割合でポートフォリオに組み込むという結論になります。
【疑問】仮想通貨のみで最適なポートフォリオを組むには?
【結論】時価総額加重ポートフォリオ!
これを株式市場を例にとって言いかえると、日経平均株価に投資する=日経平均株価連動の指数・インデックスに投資する、という事になります。
では、具体的に仮想通貨の時価総額から、最適なポートフォリオの構成がどうなるのかということを説明してみたいと思います。
上の画像の通り、ビットコインの時価総額は22.1兆円、イーサリアムが3.3兆円、リップルが1.8兆円…となっておりますので、各通貨への最適な投資比率は全体の時価総額から各通貨の時価総額の比率をかけて算出した数値、すなわちビットコイン71%、イーサリアム11%、リップル6%...以下略、となります。
よって仮に100万円を仮想通貨に投資する際の最適なポートフォリオはビットコイン71万円、イーサリアム11万円、リップル6万円...以下略、となります。
(なお、上位10銘柄に絞っているのは、個人でポートフォリオを作る際、上位10銘柄の値動きだけで相場全体の値動き簡便的にとらえることができるからです。心配な場合は上位20銘柄でももちろんOKです)
これの意味するところは、以下の画像の通り、仮想通貨全体の時価総額の推移と自身のポートフォリオの資産増加(減少)とほぼ一致させるということになります。こうすることで、仮想通貨全体の時価総額の増加に応じた自分の資産の増加を最大限享受できるのですね!
この「時価総額加重ポートフォリオ」のメリット・デメリットを以下では考察してみたいと思います。
メリット
①リスクを最小限にしてリターンを最大限にする(現代ポートフォリオ理論、効率的市場仮説)
②常に時価総額の大きな銘柄を持っているという事は、それだけ勢いがあって相場に影響のある銘柄を取り込むことができる
③比較的簡単にポートフォリオを構築できる
④買って放置できる
特に①の「リスクを最小限にして、リターンを最大限にする」という項目についての説明ですが、冒頭で「理論的な裏付けのある最適なポートフォリオ」と申し上げた通り、金融工学やファイナンスの世界では現代ポートフォリオ理論や効率的市場仮説というノーベル経済学賞も受賞(※注)した理論的裏付けをもって、時価総額加重ポートフォリオの優位性が証明されているのですね。
※注 ノーベル経済学賞を受賞(Wikipediaリンク)
ハリー・マーコウィッツ…「資産運用の安全性を高めるための一般理論形成」により1990年ノーベル経済学賞を受賞した。
ユージン・ファーマ…専門は金融経済学、とくにポートフォリオ理論と資産価格である。効率的市場仮説を明確に示したことで有名。2013年にノーベル経済学賞を受賞。
なので、金融工学・ファイナンスを専攻する大学生は何度もこの加重平均ポートフォリオがいかに優れているかを過去の株価の価格推移のデータを引っ張ってきて日々学習、検証を繰り返し行っています。
また、金融工学の世界ではリスクは標準偏差(ボラティリティ)であらわされ、価格が変動すればするほどリスク大、価格の変動が小さいほどリスク小となります。そして、現代ポートフォリオ理論では以下のような基準で投資家のリスク資産の選定が行われます。
現代ポートフォリオ理論においては、投資家は合理的でリスク回避的であるということが仮定されている。つまり、同じ期待収益を上げられる資産ならばリスクの小さいものを好むということである。このリスクは収益率の標準偏差で測られる。このリスクを回避する程度がどの程度であるかは投資家によって異なるが、後の分離定理と呼ばれる定理により、全ての合理的投資家のポートフォリオ選択問題は所与の期待収益率を達成するもので最も分散が小さいものを選択するという問題に置き換えられる。(参考:Wikipedia)
そして、この考えるとよると、投資家が選択しうる効率的なポートフォリオ(=所与の期待収益率を得られる分散、リスクが最小のポートフォリオ)は、以下の画像の通り、リスク・リターン平面状で効率的フロンティアとして示されることとなります。
さらに、CAPM(個別株式が持つβ値から、その株式に投資をしている投資家がどのくらいの収益率を期待するのかを関係づけたフレームワーク、参照:グロービス経営大学院)が成立しているならば、効率的フロンティア上のポートフォリオと全てのリスク資産からなる時価総額加重平均ポートフォリオは一致するとされています。
つまり、図の青い線上にあるポートフォリオがリスクを最小にしてリターンを最大にするポートフォリオのリスク・リターンの効率的な点の集合となり、今回提案した時価総額加重平均ポートフォリオは効率的フロンティア上の資産運用方法になるという事になります。
なお、ここでは無リスク資産の議論がされていませんが、元々現代ポートフォリオ理論自体が株式のポートフォリオを対象としており、仮想通貨特有のUSDTのようないわゆる無リスク資産は別個で扱われるべき、などのツッコミなどはあるかと思いますが、いったんは時価総額加重平均ポートフォリオの大まかな説明、概要をつかんでいただき、データ的・理論的な裏付けをもってリスクが小さくて、リターンが大きいポートフォリオがどういったものなのかを視覚的につかんでいただければと思います。
以上により、時価総額加重平均ポートフォリオのメリットとして取り上げた、「リスクを最小限にしてリターンを最大限にするポートフォリオ」が理論的に優れていることが説明されるわけですね。
より噛み砕いて言うと、市場全体に投資することで個別銘柄のリスクを最小化することができ、例えばハッキングなどによる個別銘柄の大きな値下がりリスクも、投資する銘柄を分散させることでより小さなリスクで済ますことができ、全体として大きなリターンを得ることができるという事ですね!
デメリット
①リバランスが必要
②個別銘柄で大きく儲かりそうな機会を逃す(機会損失)
③相場全体が大きく縮小しているような場面ではその分ポートフォリオの価値も縮小する
デメリットとして以上3点思いつくままに挙げさせていただきました。
①のリバランス(=投資資産の再分配、再構築)については、例えば上位10銘柄に分散投資する場合、10位と11位の銘柄が入れ替わる場合に厳密にやろうとすると銘柄も入れ替えなければならない、という意味となります。常に市場の上位10銘柄をポートフォリオに組み込むことで、2019年で言うとBNBのような勢いのある銘柄の成長もポートフォリオに取り込むことが可能となっていきます。
なお、いわゆる金融機関に勤める「トレーダー」と呼ばれる人たちは、市場全体の平均パフォーマンスをいかに上回るトレード成績をあげたかで評価されるような世界となっており、そういった方たちの運用方法はアクティブ運用と呼ばれており、今回紹介したような相場の平均的なパフォーマンスを目指すことをパッシブ運用やインデックス投資などと呼んでおります。
(パッシブ運用の成績がアクティブ型の運用に勝つことはよくあります。)
2019年上半期の仮想通貨市場の値上がり率ランキングを見ていくと、各通貨で値上がり率に大きなバラつきがあったり、マイナーアルトや草コインが上がらなかったりと、全体的には市場規模は3倍程度にも膨れたにもかかわらず、市場全体の平均的なパフォーマンスを個人で上回れなかった人というのが多く見られた印象です。
仮想通貨時価総額上位10銘柄 ー2019年上半期値上がり率
ビットコイン 189%
イーサリアム 118%
XRP 12%
ライトコイン 301%
ビットコインキャッシュ 165%
EOS 125%
バイナンスコイン 424%
ビットコインSV 129%
トロン 69%
カルダノ 100%
(参照; XRP Was Worst Performing Top-10 Crypto in H1 – But BNB Shone)
年金関連の話題で「老後に2000万円不足」するという金融庁の審議会の試算もありますが、いわゆる資産形成の一部として仮想通貨をとらえる場合、今回紹介した時価総額加重平均ポートフォリオは、忙しいサラリーマンでも"買って放置"できるポートフォリオでもあるため、個別銘柄で自信を持てない場合、上半期のビットコインの大幅高に乗り遅れたと思っている場合など、ポートフォリオ見直しの際ぜひ参考にしてみてくださいね♬
(わたしも、個別銘柄には責任持てないけど、相場全体が大きくなりそうと思ってる場合には自信をもっておススメできます!)
また、今回は仮想通貨に限定した最適ポートフォリオによる分散投資について書きましたが、個人の資産運用全体として考える場合、仮想通貨の他に現金を用意しておいて相場が大きく落ち込んだ時に買い増しができる体制の構築や、仮想通貨以外のアセットクラス(国内/国外株式、REIT、国内/国外債券)への分散により個人の資産運用としてはより盤石なポートフォリオが出来上がることはいうまでもありません。
アセットマネジメントONEさんが提供する「ポートフォリオを作ってみましょう」というページでは、資産形成にある程度資産を分散させることを推奨しているようですが、年初から3倍にも時価総額が膨らむ(逆に縮む可能性がある)仮想通貨への投資は、資産に占める一部(例えば、👇の分散投資の図の一部分)を構成する割合でも十分なくらいかもしれません。
最後までご覧いただきありがとうございました(*^^)v