19/08/2015
公演は3分の2が終わり、残すところ4ステージとなりました。
大きなミスもなく毎ステージを順調にこなしています。
舞台というものは生モノとはよく言いますが、映画やテレビとは違い同じステージは1度たりともありません。
全14ステージが毎回違いますし、その全ステージで極限の緊張とザラザラとした肌触りを確かめながらこなしていくのです。
例え前日のステージがうまくいったからといって、それを繰り返そうとしてもそうはいきません。
そこが舞台の魅力であり、究極に難しいところでもあります。
とはいえお客さんからすれば一度きりの作品。
その日足を運んでくれたお客さんに最高のステージをお観せするのがパフォーマーの仕事です。
おかげさまで初日が明けてから一度もゼロをたたくことなく、毎ステージ様々なオーディエンスに観てもらっています。
それどころか当初の予定よりも遥かに多くの人にチケットを買ってくれているので正直驚いてもいます。
劇場側にも「アジア系のカンパニーでゼロの日を出さないなんて凄いよ」と言ってもらえて…。
※昨年度も書きましたが、このフェスティバルは約300会場で49カ国から集まった3300もの作品が、たった3週間の間に5万ステージをこなすんです。
日本ではよく別の演劇フェスティバルに対して「世界最大」というフレーズを多用していますが、間違っています。
70年以上の歴史があるEdinburgh Festival Fringe が間違いなく世界最大の舞台芸術の祭典です。
と、なると観る作品を選ぶのも一苦労。
当然大きな会場に自然と人は集まるので、小さな劇場の海外カンパニーなどはよほどの実績がない限り、公演期間中に何度も無観客の回を経験するのが当たり前なんです…。
全体を見渡してもシアターは集客しにくいジャンル(気軽に路上パフォーマンスなども出来ず、派手な見た目ではないため)で、特にアジア組はシェイクスピアの国に乗り込むわけですから集客は非常に大変です。
そんな中、事前のプロモーションや日々のビラまきのおかげもあって毎日お客さんの前で作品を上演出来ていることは本当に有難いことです。
と、同時に僕たちは客席を埋めること=集客を増やすということだけが参加した目的ではありません。
当然、演劇はお客さんと一緒に創っていくものではありますが、演劇に対して目の肥えた批評家やジャーナリストにキチンとした評価をしてもらい、それを元にして次に生み出す作品を演劇=舞台芸術に昇華させるという、アートとしての演劇という面をもってエディンバラまで作品を持ってきたのです。
これまでに幾つかの新聞社や批評家にも足を運んでもらいましたが、今日はアジアンアワードという賞の選考委員に観に来てもらうことができました。
様々なアジアにおける舞台芸術(ダンスや民族音楽、舞踏、民謡など)を観てきた人物にジャンル違いの「独り芝居」を選考されると思うと複雑な心境ではありましたが、終演後少し話せる機会があり感想を聞くと「独創的でどこのカンパニーにも見られない作品だ」と言ってもらえました。
まぁ、これが直接アワードにどう影響するかはわかりませんが、個人的には非常に興味を持ってもらえたようだったので一安心です。
様々な文化が混ざり合う中で作品を発表するということは当然のことながら賛否も別れます。
日本で作品を発表していた時とはまったく違う角度で論評されたりもするので、創り手としてはそれなりのダメージを受けることもしばしばです。
ですが、中にはこうして僕たちの作品に寄り添い、理解を示してくれ、気に入ってもらえたりすると今までの苦労がスーっと溶けていくような感覚になるんです。
残すところあと4ステージ。
毎回真摯な気持ちで作品に向かいたいと思います。
では、次回のアップデートをお楽しみに。