皆さんにも経験があると思うんですよ。ちょっとAmazonを覗いただけなのに、そこで見た商品が色々なサイトでも表示されるようになった経験。今回はそんな広告の話です。
あのストーカーのように執拗に追跡してくる広告は「リターゲティング広告」こと、通称リタゲと呼ばれているインターネット広告です。
僕程度の広告営業マン(普通レベル)であれば、ついてくる広告を総じてリタゲ広告と呼んでしまうのですが、それ専門に扱うWebマーケターの場合、Googleで表示される場合を「リマーケティング広告」と呼び、Yahooで表示される場合を「リターゲティング広告」と区別しているはずです。
基本的に広告を表示する場所がGoogleかYahooの違いであり、基本的にどちらも「追跡型広告」であることには変わらないので、今回はリタゲ広告として紹介したいと思います。
例えば、Amazonでコーヒー豆のページを表示した場合。それを見たPC上(正確には使用したブラウザ内)には「Amazonでコーヒー豆を見た」という情報が書き込まれます。いわゆるcookie情報というものです。
そのcookie情報がPC上に残ったまま、追跡型広告が表示されるWebサイトに訪れると、瞬時に「この人は過去にAmazonでコーヒー豆を買おうとした人」と判断されて、コーヒー豆の画像がついたAmazonの広告が表示されます。
例に挙げたのは、Amazonが追跡型広告の広告主として出稿している話であって、もしかするとZOZOかもしれませんし、メルカリかもしれませんし、Netflixかもしれません。それくらいリタゲ広告は多くの企業が広告主として利用しているインターネット広告なのです。
ほとんどの追跡型広告の場合、cookieによる広告表示と、tagによる効果計測が行われています。(cookieがボールなら、tagはネットで、ボールを持ったままネットを揺らすとゴール、つまり効果計測ができるイメージです)
もし、職場でネットサーフィンしていることがバレたくないとか、家族共有のPCだけど自分がどんな商品を調べているのか知られたくない場合は、ブラウザの設定画面を開いて、保存されているcookie情報を削除してしまえば良いだけです。
とはいえcookie情報には、過去に入力したログイン情報などが一定期間保存されていたりして、再訪時にログイン情報を入力する手間が省けるといった超便利なメリットがあるので削除する際は慎重に。
追跡型広告に追われないようにするためには、ネットサーフィンをする場合に限って、ブラウザを閉じるたびにcookie情報が削除される「シークレットモード(シークレットブラウザ)」を使うと便利です。
僕個人としては「時代ですね…」としか思えないのですが、今から約1年前の2018年5月、EUで「GDPR(General Data Protection Regulation)」が実施されました。
日本だと「EU一般データ保護規則」と呼ばれており、簡単な話が「これからの時代はcookie情報も個人情報として扱うから勝手に取得するの禁止な」「ユーザーの同意なく利用したら罰金26億な」というヤクザもビックリな規則です。なお、EUで実施された規則ですが、その範囲は日本企業も例外なく対象になります。
GDPRによって、新たに個人情報として取り扱われるオンラインデータには、cookie情報の他にも「IPアドレス」「IDFA」「AAID」なども対象となります。
現時点では、あくまでもユーザーの同意があればcookie情報を取得してOKということなので、最近よく「このサイトでcookie情報を取得しています」といった表示を見かけるのは、もしかするとGDPRの一件が影響しているのかもしれませんね。
今回はリターゲティング広告の話から、cookie情報によって広告表示が行われていることをお伝えしましたが、そもそもそんなに広告に追跡されるのは嫌ですか?正直、僕は嫌ではありません。
確かに、同じような広告が何度も表示されたり、そういった広告のせいでWebサイトの表示速度自体が遅くなることでイライラすることもありますが、では何故広告が表示されるのかを改めて考えてみてください。───そのWebサイト、無料で使っていますよね。
Webサイトを運営する側も、決してボランティアで運営しているわけではなく、お金を稼ぐといった明確な目的があります。その手段の一つとして、リタゲ広告が表示される広告枠を設けているだけなのです。
リタゲ広告はユーザーのcookie情報───つまり過去の閲覧履歴を基にして、その人に合った広告が瞬時に表示される仕組みなので、そういった意味では関連性の高い広告が表示されるだけであって、それは全く悪質とは思えず、むしろ良質な広告ではないでしょうか。
検索サービスやキュレーションサイトのように情報を無料提供しているWebサイトや、アメブロのように無料でサービス提供しているWebサービスは、往々にしてインターネット広告によるマネタイズが主流となっています。
そのようなWebサイトから「ウザいから」という理由だけで、インターネット広告によるマネタイズができないようにしてしまったら、一体どうなるでしょうか。
広告に変わるマネタイズ方法として「サブスクリプション」と呼ばれる、いわゆる月額制度が話題になることがありますが、なんでもかんでも月額制に変わるのは、個人的にチョット嫌です。
───というわけで結論。無料で使えるWebサイトやサービスの裏側には、インターネット広告によるマネタイズが存在しています。
いつも当たり前のように無料で使っているサービスから広告を無くしてしまったら、月額制や課金制になってしまうかもしれないので、そこは利用するユーザーとして広告を許容してあげても良いと思うんです。(…という広告屋の戯言でした!)