今回の本は、
「他者と働く」 著:宇田川元一
他者との関わり合いについて普遍的に必要な1つ考え方が多くの例や根拠を用いて解説されています。
不要な対立を避け、組織の未来を明るいものにするために、ぜひ身につけておきたい考えである。
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ビジネスの現場で生じる課題には2つのタイプがある。
1つは、既存の方法で解決できる「技術的問題」
もう1つは、これといった解決策が見つからない複雑で困難な「適応課題」
例えば、ロジカルに提案のメリットを説明しても、何か別の理由をつけてまた断られてしまう。しかも、その理由がいまひとつはっきりしない。こうしたことを繰り返すとき、それは適応課題だということがわかる。
組織のなかで私たちが抱えたままこじらせている「わかりあえなさ」や「やっかいなこと」の背後に、適応課題が潜んでいる。適応課題とは、向き合うことが難しい問題、ノウハウやスキルでは解決ができない問題なのである。
そういった関係性の中で生じる「適応課題」は、
対話により、新しい関係性を築くことで解消することが出来る!
適応課題は関係性の問題であり、関係性を改めなければならない。その第一歩は、相手を変えるのではなく、こちら側のナラティヴを変えてみること。
「ナラティヴ」⇒物語, その語りを生み出す「解釈の枠組み」のこと。
こちらのナラティヴとあちらのナラティヴに溝があることを見つけて、「溝に橋を架けていく」こと。これが「対話」(dialogue)である。ここでいう対話とは、コミュニケーションの手法ではなく、「新しい関係性を構築すること」を意味する。
対話により、自分の中に相手を見出すこと、相手の中に自分を見出すことで互いを受け入れ合うことによりお手上げに思えるような厄介な状況も乗り越えていくことができる。
哲学者のマルティン・ブーバーによると、人間同士の関係性は、2つに分類できるという。
「私とそれ」の関係性、そして「私とあなた」の関係性だ。
前者は、向き合う相手をまるで自分の「道具」のようにとらえる。
例えば、お店の店員を料理や飲み物を運んだり、お会計をする機能だと捉えてはいないだろうか?
これに対し、後者は、相手の存在が代わりのきかないものだと捉えている。
対話とは、「私とそれ」の関係性を乗り越えて、「私とあなた」の関係性へ移行することを促すものだといえる。
関係性の溝に橋を架けていく「対話」には4つのプロセス。
①準備「溝に気づく」
⇒ここが一番厄介で重要。自分のナラティブを脇に置き、「私とあなた」の関係に近づく。
②観察「溝の向こうを眺める」
⇒あいてのナラティブがどういったものなのか考える。相手が置かれている状況や立場や地位である。
③解釈「溝を渡り橋を設計する」
⇒相手のナラティブから自分を見て新しい関係性の構想
④介入「溝に橋を架ける」
⇒行動に移す
これら4つのプロセスで適応課題を解決することが可能である。
4つのプロセスの途中でぶつかる困難がたくさん本書には紹介されている。
重要なのは、自分の価値観を脇に置き、他者視点で考えてみるということである。
そこから自分と相手のナラティブの違いを認め、そうした中で有効な解決策を考えることが適応課題の解決に結びつくのである。
他者と関わって生きていく上で、必要となる考え方である。
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