ここ数日、会談を書かなければという思いに苛まれていたのだが、特にこれといった話も無く。せめて心霊写真でも撮りに行くかということになった。
それに先立って予習をしようとYouTubeで心霊スポット巡りの番組を見た、何か良い感じの心霊写真を撮る方法でもないものかと思ってのことだ。
僕は心霊スポットに行くことや心霊写真を撮ることは全く怖くない。
その根拠となっているのは霊感が無いことだ。僕の理論では霊感が無い人間というのは霊にとっての霊のような存在だ、声も聞かせられない触れることも出来ない、だから僕が霊に干渉できないように、霊も僕に干渉できない。
だから大丈夫、と思っていたのだが。この理論で想定されている心霊現象は、例えば水難事故があった湖に行くと霊に引きずり込まれる、自殺の名所の橋を渡ると霊に呼ばれて自分も落ちてしまう、といった類のものだ。
僕のことは呼べないし触れないので向こうもどうしようもないだろう、それに万が一そういうことが出来るのだとすれば僕は死ぬ前に心霊体験が出来て感動だから良し。
と思ってたんだけどね。帰りに事故に合うパターンあるのね、あと病気になるパターン。それはダメだよね、ズルい、そして全然面白くない。
そんなん単に事故にあっただけなのか呪いなのか区別が出来ない、死んでも死にきれない、そんな死に方じゃ僕が霊になるわ。やるなら直接やってくれなきゃさ!
こんなんで後からあいつは心霊スポットに遊び半分で行ったから事故にあったんだ、なんて言われても全然嬉しくない。沼から手が出て来て引きずり込んでくれないと!
そう思ったら急に、無駄呪われはしたくないな、という気分になってしまい、心霊写真を撮りに行くことにもそんなに乗り気じゃなくなってしまった。
ええ、ええ、何も映ってないですよ。ただのビニールハウスだ。
真っ暗な口が開いたビニールハウスが左右に並んでいる農道って雰囲気的には不気味なんだけどね。よく考えるとそこに霊がいる理由がわからない、真夏のハウス作業で熱中症になったお爺ちゃんの霊かな、あんまり人を呪いそうじゃない。
心霊番組を見ていて思ったのは、結局心霊現象なんてのはストーリーなんよね。
そうそう、その番組で、甲冑姿で背中に矢を受けた武将が「しげみつ」って言ってるという情報で応仁の乱だって断言していたんだけど。応仁の乱に重光なんて人いた?
武将で重光と言えば誰?
泉田重光でしょ、伊達政宗の重臣、泉田重光。
応仁の乱で重光って誰よ、と思って調べてみたけどいないんよね。
8代将軍足利義政の正室で9代将軍義尚を産んだ日野富子、これの曽祖父に日野重光って人がいるらしいんだけど、応仁の乱の頃にはとっくに死んでるしね。
まあ日野家が代々足利家との婚姻関係で位を得ようとしてきたことが富子に義尚を産ませることになった訳だから、そういう意味で応仁の乱の原因は日野重光。
って考え方が出来ないでもないが、お前は歴史評論家か、そんなことで重光を恨むくらいなら武芸の稽古をしろ、だから背中に矢を受けるんだって話になる。
何の話だっけ、そうストーリー。結局心霊現象なんてものは、ここで怖い事が起こる理由があるんですよってストーリー在りきで成立するものなのだ。
さっきただのビニールハウスって言った写真、あれは嘘で、実はあのハウスで男性が首を吊って死んでいるのが発見されて、それ以来あのハウスだけは使われてないんよね、ハウスの奥、暗くなってるところをよく見て。
って言うと何か怖い写真のような気がする。嘘だけど、いや、嘘かどうかも知らん、もしかしたら墓を取り壊してその上に建てられたビニールハウスかもしれん。
止めよう、名誉棄損で持ち主に怒られるわ。