富士通研究所とトロント大が開発の革新チップ「DAU」と1Qbit社の量子COMソフトがデジタルアニーラ(DgitalAnnealer)を生んだ。
日本最速「京」でも8億年かかる難問「組み合わせ最適化問題」をわずか1秒で解けるんだって。
この革新的なコンピューターを開発しただけでなく、富士通のクラウドサービスとして提供が開始された。
この前のCEATEC JAPAN2018のFUJITSUブースでも注目が高かった。
ちなみに、クラウドでの”お試し”もあって、アカウントを作成すれば利用できるみたい。
コンピュータの能力の進化は、「半導体回路の集積密度は2年ごとに2倍になる」という、Intelの創業者ゴードン・ムーア氏が唱えた「ムーアの法則」が有名ですよね。
でも最近は、半導体製造の微細化技術の行き詰まりが懸念されており、この法則が限界に来ていると言われている。
iPhoneにチップ提供のTSMC)モリス・チャン氏の発言
この中で、もはやムーアの法則は無効だと述べており、チップの自社の微細化製造も2025年には大きな問題(行き詰まり)になると言っている。
その壁を破るには大きな技術革新が必要で、次のような進化があると予想されている。
現在)デジタルコンピュータ(0と1)
→量子コンピュータ(量子利用、0と1と重ね合わせ)
→脳型コンピュータ(脳神経のような素子間の多重&階調的繋がり)
これに対して、今回のデジタルアニーラは、量子コンピュータを待たずに、その一部の機能を新デジタル技術によって先取りすることに成功した、言わばハイブリッドコンピュータ。
量子コンピューターは、量子素子を安定させるため、超電導技術と超巨大電源が必要で、しかも量子の揺らぎデータからノイズを取り除く技術がまだまだ実用に程遠い。
今まで10年以上かかると言われてきた量子コンピュータの実用について、最近、最短5年に縮まるかもしれないとのニュースが一部にあったけど、それは町ひとつに匹敵する電力を食い、量子素子は使っているものの性能は小さないもの。
私たちがイメージする「今の大型コンピュータ並みに実社会に使える物」には、常温超電導やいくつかの画期的発明が必要で、10年どころですまないのが現実だって。
もちろん、今回のデジタルアニーラは、量子コンピューターの一部の機能を先取りしたものであり、万能コンピューターではない。
その特徴は量子の揺らぎからヒントを得た新技術。
富士通のデジタルアニーラでは、この量子コンピュータでの演算方式である量子ビットの「重ね合わせ」からヒントを得て、汎用コンコンピューターの「0か1かの2値」だけだったデジタルビットを進化させ、「多階調」と「演算素子間の繋がり関係」という新たなアーキテクチャに成功。
実は、デジタルアニーラの試作機が完成した2016年。
富士通自身はこのコンピューターがとんでもない性能のものだとあまり自覚していなかったとのこと。
富士通がテストをしていたカナダで、デジタルアニーラの情報を聞きつけたのが量子コンピュータソフトの開発で世界最先端のひとつである1QBit社。
「これは凄い」と富士通に研究を申し入れてきたことから富士通もそのポテンシャルを知ったんだって。
1Qbit社アンドリュー・フルスマン最高経営責任者
仕様:
量子コンピュータや脳コンピュータみたいな特徴を持っている。
・量子コンピュータをヒントの多階調値:8192個のビット値が全相互結合
・脳コンピュータのような素子同士の繋がり:全てのビット間の結合の強さを65536階調(64Bit)で表現
特徴:
デジタルアニーラはコンピューターにとっての難問「組み合わせ最適化問題」で脅威の性能を発揮する。
有名な代表例は「巡回セールスマン問題」。
多くの都市最短ルートで回る計算のこと。
5都市を回るルートは5!=5×4×3×2×1=120通り。
ところが30都市では1京×1京通り。
スーパーコンピュータ「京」でも8億年の計算時間が必要となるんだって。
ところがデジタルアニーラは、これを1秒以内で計算できちゃう。すごい。
そのひみつが先の全ビット結合と多階調だそうです。
難しいので超ザックリのイメージがこちら。
一つずつやってダメならまた最初からやり直しが旧来のコンピュータで、全部を「ガシャガシャ、エイ!」がデジタルアニーラってことかな?
この組み合わせ最適化問題って、意外に応用が広いそうで、例えば新薬の開発なんかは効率が飛躍的に高まる期待があるそうです。
金融の投資では、投資リスクを低減するポートフォリオのアドバイスのために対象銘柄が20を超えただけで100京通りの組み合わせになってしまうけど、デジタルアニーラなら瞬時に最適を導き出せるそうです。
その他にも用途はとても期待されている。
量子現象に着想を得た、組合せ最適化問題を高速に解く「デジタルアニーラ クラウドサービス」を提供開始 (2018.5,15)
富士通研究所と早稲田大学、「デジタルアニーラ」に関する包括的連携活動協定を締結(2018.9.18)
中分子創薬へ適用可能な組合せ最適化問題を解く技術を開発(2018.9.19)
富士通、Royal Bank of ScotlandグループNatWestにおいて「デジタルアニーラ」の実証実験を実施(2018.10.23)
「組み合わせ最適化問題」に限れば、量子コンピューターに並ぶ(もしかすると抜いたかも)のデジタルアニーラがすでにクラウドでサービス開始ってすごい。
ブロックチェーンのハッシュはどうなんだろ??
2年後には普通の会社のサーバールームにあるかもって、国産コンピューターなかなかやりますね。
※この記事の写真・図及び情報の出展:富士通 pr.fujitsu.com
11月29日追記:
CEATEC報告としてクリプト→ビジネスへカテゴリ変更しました
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