先日試しに投稿してみたら、案外「いいね」が付いたので、調子に乗って知財ネタをシリーズ化してみようと思います。
公開番号:特開2008-185025
公開日:2008.8.14
出願人:永井正哉
自動車エンジン等の燃費向上のための技術を調べていて見つけた案件です。いわゆるトンデモ発明っぽいですが、アカデミックな感じも一瞬だけするかもってことで、ちょっと見てみます。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシプロエンジンにおいて、ピストンに働く力Fは、燃焼ガスの圧力Pと、ピストンや連接棒のピストンピンにかかる重さに相当する部分の往復運動に対する慣性の力Fiである。即ち、F=P+Fiである。Fはピストンピンに於て連接棒の反力Fcと、シリンダーの側圧Fnとに分力する。そこで、Fc=F・secφとなる。Fcは連接棒に圧縮または引張荷重として働き、また、ピストンピンやクランクピンに直角に働く。そして、Fcは、クランクピンに於て、連接棒の方向に働く力であるから、クランク半径方向に働く力Frと、接線方向に働く力Ftとに分力する。従って、Ft=Fc・sin(θ+φ)=F・sin(θ+φ)/cosφとなる。この場合のθはクランクの回転角であり、φはは連接棒の傾斜角である。
そこで、従来のように、上死点の直後のPは最高であるがFtは最小であるところで点火燃焼させるのではなく、もっとFtの強い所で点火燃焼させてみたい。Ftに於けるsin(θ+φ)/cosφはクランク回転角75°近辺に於て最大となる。この面だけを考えると、この75°近辺で点火爆発させたい。しかし、FにおけるPはクランク回転角が進むに従って燃焼室が拡大してピストンの圧縮が低下するので減少する。
FtとPの両者の変化進行に於て、両者が増減する関係から比較校量して、出力の最大になる点に於て点火燃焼させるようにした、ナガイエンジンと呼んで貰いたい、高回転力域点火型レシプロエンジンや高回転力域点火型ロータリーエンジン。
、、、ちょっとなに言ってるかわからないけど、ナガイエンジンと呼んでもらいたいロータリーエンジンの発明ですね。
この出願の明細書は段落番号に分けられておらず、方式的に大丈夫か?(つまり、特許法施行規則様式29に沿ってないのではないか)とも思えるのですが、【発明の詳細な説明】から抜粋しますと以下のような熱い想いが書き綴られております。
『 私はアメリカのフロリダやカロライナの大西洋海岸には過去のメキシコ湾岸と同じように莫大な石油が眠っているように思えるし、シベリアの極東地域のアムール河の両岸地帯にも莫大に埋蔵されているように思われるし、フィンランドは国中が石油埋蔵庫のように思え、それらを開発すると人類は今世紀も来世紀も石油不足に泣くことは無いように思える。日本さえ、北海道の根室や釧路には相当量の石油が眠っているように思える。
しかし、今日、既存油田の枯渇化はきびしい。片や発展途上国の石油消費量の拡大は夥しい。世界的に石油不足は慢性化している。従って、石油価格は高水準に高原化し、各国の経済を圧迫している。特に各国の自動車燃料は高価格水準にある。家庭経済は破壊され自動車は売れなくなっている。ガソリン代替燃料探しには各国とも躍起であるが、これはと言う物は見つかっていない。どうしてもガソリンや軽油を余り食わないエンジンを開発して枯渇と温暖化に勝たねばならない。熱効率を大幅に改善する本発明のナガイエンジンは、この今日的要請に応えたものである。』
なるほど、すばらしい大発明じゃないですか!
『 出来ることなら女性には家庭に入って貰いたい。高校や短大を卒業して就労し結婚の相手を見付けて結婚し、退職して主婦として子を生み育てて家計を切り揉みして貰えるようにしたい。家庭を持った男性にはそれだけの給与は支給したいと考えている。給与を上げれば国際競争力が高まるのであった。人としての家庭としての本当の在り方をここらで再び模索してみる必要があり、それが可能視されるところとなった。
技能教育を受けた普通の人は大学より短大に行くべきである。大学に進むと英語の他に第二外国語の履修が待ち構えており、普通の学習能力では通過できない。第二外国語を履修する必要の無い短大がかえってバランスの取れた専門課程の学習が出来る。』
えっと、ナガイエンジンどこいった?
さて、出願経過をみますと、上述のとおり、とっても熱い想いの込められたナガイエンジンですが、審査請求されずに、取下擬制となっています。つまり、結局審査すらされずに、特許権は発生していません。なにがしたかったのやら、、、。
出願人の永井さんは広島の人のようですので、マツダのロータリーエンジンに関わっていた人なのかもしれませんね。