みなさんは韓非子という中国の古書をご存知だろうか。韓非子は岩波文庫にて全4冊で販売している。僕は第1巻だけ読み序盤のリーダー論に唸ったことがある。ちなみに1巻の冒頭から中盤までがリーダー論、終盤から2巻にかけて論語のような説法が主体となる。
今回は韓非子1巻の印象的だったリーダー論について紹介する。なお3年前に読んだ本なので、雑な説明になるのであしからず。
1.自分の地位を守ること。
権力者になれば得られるものがたくさんあるが、誘惑や敵も多い。たいていの権力者はちょっとしたミスを突かれ失墜する。特に警戒すべき人物は側近であることだ。側近たちは社長の椅子に座るべく、あの手この手で社長の失墜を目論んでいる。酒、遊戯、女性、賄賂、金銭の授受、接待といった誘惑を断ち切ることだ。また政略結婚は地位向上のために有効活用できる。
2.あえて意味不明な態度を取る。
人間は何をしでかすか予想できない人物を恐れる。組織に属するとキャラや性格がわかっていくが、あまり想定外の言動をすることは稀ではないだろうか。リーダーも一緒だ。例えば、そこまで重要でないときに部下にキレたり、逆に失敗してはいけないタイミングで褒めたりすると、(確実に変人だと思われるだろうが)何を考えているか全く掴めず、得体の知れない人物になる。わからないほど君主の深みにはまることになる。
3.自分の素性やプライベートを簡単にさらさない。
これも2と共通することだが、リーダーがどんな人物か未知数だと分かれば他人はおそれを覚え一目置く。自分の私情を話せば油断して弱点を晒してしまうことになる。威厳や恐怖を根付かせるために、常に掴み所のない君主として振る舞うのだ。
以上が韓非子の話だ。論語のように政治の理想的な人物像を延々と述べるのではなく、リーダーの立場を守るための対処法を具体的に述べている点が韓非子の特徴である。僕は孔子(論語)よりも韓非子や孫子(孫子の兵法)といった実践的で現実味のある言葉を聞く方が好きだ。彼らは人間の心理や特徴を捉えて作戦を立てており、観察力、洞察力がとても優れている。一方で孔子や老子の言葉は頭でっかちになりやすく、現実世界で使うには抽象的すぎる概念だと思う。
この本のリーダー論は権力闘争を想定して執筆されているが、現代では隙があって放っておけないタイプがリーダーに向いてると誰か(どこかの偉い社長さんか誰か)がインタビューで述べていた。現代はインターネットが普及しているし、平和な時代になったから、求められる人物像が違うのだろう。
人間は今も昔も変わらず基本的な考えや欲しがるものが一緒なんだろうか。