この本を読んだ。経済がわかると銘打ってはいるが、実際は半沢直樹シリーズで登場する台詞や専門用語についての解説や、銀行員の働き方、実態がわかる内容だ。今回は本書の一部を紹介する。
やはり銀行員はかつてエリートが集まる業界とだけあって、熾烈な企業内競争があったみたいだ。役職が上がるにつれて椅子の数は少なくなる。故に昇進できるか篩(ふるい)に掛けるときに減点方式で評価する。少しでも与信を左右する業務を行なったり業績が悪かった人材は減点対象になり、二度と加点されるないとても厳しい世界だ。半沢は西大阪スチールの5億円の回収をどうにか成功しないと、出世の道が途絶えてしまうために懸命な努力をしたみたいだ。(出向する危機感の方が大きいと思うが)
そもそも銀行は企業に貸した金額に利子を付け、その利鞘で稼ぐことを商売にしている。1つの与信判断ミス(貸し倒れや事務的ミスなど)で取引企業の何十倍、何百倍分の利益をチャラにできるほどの力がある。つまり、額面が上がるほど、相当のプレッシャーが重くのしかかる。
総合職として雇用された銀行員は、営業や事務などの経験を積みながら、BS、PL、CS、SS分析を5年以上かけて体得し、各企業に融資するか検討するようだ。事務職は昇給がとても限定される。彼らは"健全なる猜疑心"を持ち、本当に出資に見込みがあり信頼できる企業か疑いながら判断するようだ。
1990年代のバブルとITバブルによって、銀行のあり方は常に変化している。本書でも、銀行の歴史を事件紹介している(イトマン事件や尾上縫事件など)。
昨今はIT技術の発展で通貨そのものがITの力で置き換えられる近未来的な世界がやってきている。半沢直樹の世界観は10年後で全く違った社会情勢に激変しているだろう。