←Webサービスの企画時に「集客」について考えていない老舗企業さんが多い理由1
前回の続きです。老舗企業の経営者にありがちなパターンとして、
ネット上にWebサイトを立ち上げれば、自然と人が集まってくると考えている
その理由として
1.Webの仕組みそのものを理解していない
2.既存事業の仕組みを理解していない
を上げました。
この回では、実際にあった事例についてお話ししたいと思います。
私が大手教育出版社のクラウド型教育コンテンツ事業に参画していた、2016~2018年頃の話です。
まず、前提として、「全社のITリテラシーが低水準」というのが上げれます。
大手企業にはこういったところが少ないと思う人が多いかと思いますが、日本の一部上場老舗企業のIT水準は、米、中国を始めとした諸外国と比較してとても低いのが現状です。私が参画していた企業も、
Webサイトがどのような仕組みの上に成り立っているか理解している人はシステム部門にいる数名のみ
SEO、アドネットワーク、DSP、SSP、DMP、リスティング広告、ディスプレイ広告 等、言葉すらしない人が大半
PowerPointやIllustratorで作ったものが、そのままWebサイトになると思っている人も多く存在
会議で「クラウドファンディング」と言ったら、そんなわけのわからんIT用語使うなと当プロジェクトの担当役員から怒られる
一般社員はおろか、経営陣の上位に近づくほど、こういった知識のある人達がいなくなる
といった状態でした。
そして、「2.既存事業の仕組みを理解していない」は下記の様な流れから培われていました。
現在、大手出版社と呼ばれる企業の強みの一つとして、書籍流通をしっかりと掌握、配下に置いていることがあげられます。
以上のような、確固たる流通網による顧客接点を、創業者と先の経営陣は何年もかけて確立しています。
彼らは、自社の商品がその確立した流通に乗ることで、全国の「書店」という、人の集まる場所に展示、プロモーションされ、効率的に購入、コンバージョンされるような仕組みを作り上げています。
自社の商品と顧客の接点は、全国に何万件とあり、常に人が滞留して集まる書店でした。
良い商品を作ったとしても、顧客が知らなければ売れることはありません。
その意味で、この出版業界の仕組み(特に大手)は、非常に良く出来た仕組みでした。Amazonや楽天が台頭してくるまでは、ですが。
実際に社内の人も言っていたことですが、どんな本でも作って流通に乗せてしまえば、ある程度売れるという仕組みが確立しており、それが何十年と続いていたそうです。
このように出版社は、BtoCではなく、BtoBビジネスと言えます。
出版社は直接顧客と対するのでは無く、商品の出荷先は、取り次ぎと呼ばれる中間代理店です。
代理店が各書店に商品を送り、そして、顧客を集客して商品を実際に販売するのは書店になります。
各書店が取り次ぎに商品を注文するように訴求するのは、出版社の営業と代理店の営業です。
実際に集客を行い、商品を並べて訴求していたのは書店、そしてその書店に営業をしていたのも代理店の営業です。
出版社側の人間は顧客との接点を考えること無く、商品を企画開発することが可能でした。
そういった人々がいざ、Webサービスを立ち上げようとすると、どんな風に考えるでしょうか?
これまで集客を自ら行い、商品と顧客との接点については、考えなくて良かった人達です。
また、商品が書店に並びさえすれば、ある程度売上が維持できていました。
集客をこれまで考えてこなかった人達は、人を集めることにどれだけコストのかかるかが、まったくわかりません。
このように、自ら集客できる状況を作り上げたことがない彼らは、集客をまったく考えずに、Webサイト上にサービスを作り上げようとします。
更に、彼らは、Webの仕組みがわかっていないため、ホームページさえ作れば人が集まってくると考えます。
Web上にページを作り、そこに商品やサービスをならべさえすれば、そこに人が集まってくると考えていたのです。
中途入社のWeb事業担当者としては、入社当初から
二つの理解を、現場と経営陣に求めなければなりません。
次回は、このような状況の場合、どのように対応したら良いかを考えたいと思います。
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Webサービスの企画時に「集客」について考えていない企業での対応方法
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Webサービスの企画時に「集客」について考えていない老舗企業さんが多い理由1