「私は市長だけど、そんなに顔がきかなくてね。市内の大学教授では君くらいにしか、相談なんてできないんだよ」
「例年どおり、市の財政が厳しいですね」
「ある程度、大きな企業は腰を据えてはくれているが・・・な。しかし、日本中が厳しい時代だ。大変なのは私だけでなないだろう。国なんてもっと大変なんじゃないか?」
「ギリシャ破綻やユーロ危機が論点を開き、債務の多い国は今まで厳しい立場にありましたが、これからはより現在の債務状況は受け入れられてくるでしょう。」
「なんでだ??どんどん国の債務は増えているぞ?」
「ようやく最近理解されてきましたが、中銀のバランスシートと政府のバランスシートを連結して考えれば、中銀が通貨を発行した分だけ利益が入るはずです。政府の債務というのは増やしても行っても問題なく、通貨の発行益で補えるのです。」
「そんなことしたら、政府の信用はガタ落ち、通貨の価値も誰も信じないじゃないか?」
「ですから、債務が増えすぎを抑え、名目のインフレ率が一定になるように進めていけばいいのです。つまり税収はこのペースを維持する分でよく、債務というのは、このインフレを注意するための指標にすぎないと理解されたのです。これを現代金融理論、略してMMTといいます。」
「まだ理解はできていないが、注意していれば債務は増やしてもよいのか。MMT、なるほど。」
「市の話ではないですよ?」
「そうか。市政は苦しいのに国が苦しくなくなるのはこっちに中銀がないからだな。」
「わが市が誇る気品ある大学・高校生諸君。『1日ぼらんてぃあ!いうこときく券』、これを渡されたら君たちはその日はその人のために一所懸命に働きなさい!!それが君の心の清らかさを証明し、みんなが君を認めてくれるようになる。最近は政治をダメだという口だけのオトナばかりだ!この市は違うことを口ではなく行動で証明しようじゃないか!誇りを胸に活動しよう!そうすれば、今日から君たちは立派なオトナだ!」
「はい!!」
「そんな声では、この市の東京にも張り合える力を証明できないぞ!!もう一度、頑張るぞ!!」
「はい!!」
===通りで=======
「最近の学生さんはいい子が多いわね〜。あの腕章をつけた子たちはボランティアに毎日お店番に立ってるんだって!」
「結構遠いうちの近所でもいたよ。流行りなのかな?」
「そりゃすげーな。俺が同世代だったらぜってーフカして逃げてっけど笑」
「へー、あのピンクの券さえあれば、助けてくれるのねー。今は誰が持ってるの?」
「今は役所の人たちだけらしいよ」
====1週間後=======
「こちら、市のボランティア局です。『1日ぼらんてぃあ!いうこときく券』を1枚2万円でお配りしております。券をお金に戻すことは承っておりませんのでご了承ください!!2万円分の価値があることは市が保証いたします!」
「あの券あれば大学と高校のボランティア部のやつは1日なんでも言うこと聞いてくれるらしいぜ!!」
「いい時代になったもんだな。今は助けあいの時代だよ!!」
「行列になりそうだぞ!2万円と交換しよう!」
===市庁=======
「どうやら3億円が集まったそうです!!市の起こしたキャンペーンの中では大成功なんではないでしょうか??」
「そうか、ではそれを全て使ってしまおう!!」
「え!!!!?????市長??」
「その三億円を市内の企業と店舗にばらまいて、代わりに『1日ぼらんてぃあ!いうこときく券』を少しでもいいから導入してもらうんだ??いいな!?
あと、専用の口座システムを作れ!その口座にお金をためておいたら、40%の金利の代わりにその分と同じだけの『1日ぼらんてぃあ!いうこときく券』をプレゼントしろ!」
「かしこまりました!急いで方法について有識者会議を行います!!」
===2週間後 通りで=======
「あの腕章つけた子たちどこでもいるな!!」
「びっくりしたのが、カラオケにもいたのよ!!いったいあんな子が1日なにするっていうの?」
「俺の知り合いの店だと、あれで1日ホントに一所懸命働いてくれて、大助かりだったらしいぞ!」
「あれ一枚あるだけで天国だ!!俺ぁもっと買うぞ!!」
「あの口座に金を預けておくと40%分あの券が降ってくるらしいぞ。元本保証で!!」
「ホントか?元本保証?今すぐ銀行の金をそっちに移そう!!」
「(市が値上げするかもしれん、これは沢山買っておいて損はないな・・・)」
===市庁=======
「市長、40億円が交換され、口座には合計300億円の入金があったそうです!!」
「ではその口座の金を運用する!市の割と大きめの企業の株をそれで買い占めろ!筆頭株主になれ!!そして『1日ぼらんてぃあ!いうこときく券』を本格的に導入させろ!!」
「直ちにとりかかります!!」
===2ヶ月後 市庁=======
「市長!!担当の者が株主総会にでたところ、店での支払いが『1日ぼらんてぃあ!いうこときく券』で行われているためか、日本円での収益が激減しており、またこの券が日本円と交換することができないため資産としても認められません。バランスシートは各社大変なことになっているそうです。」
「そうか、では『1日ぼらんてぃあ!いうこときく券』の利用を廃止するように呼びかけろ!ボランティア部は全部解散させる!!」
「し、市長!!!??そんなことしたら。。。。。」
「さらに、『1日ぼらんてぃあ!いうこときく券』への返金はこちらの指定したペースで徐々に行う!長い年月をかけて円に戻すことを”目指す”!」
「そんなことをして良いのでしょうか?」
「MMT!どういうことですか?」
「お前は高度で難しいことなど考えなくて良い!これは市長である私の仕事だ!教授をここに呼んでくれ!」
===2時間後 市長===
「さて、君のおかげで市政は順調に回復したよ。多くの資産が手に入った。『1日ぼらんてぃあ!いうこときく券』はちょっとした負債になったが、時間をかけさえすればどうにでもなる。これからはどうすれば良いだろう..?
」
「何をおっしゃっているんです!!これは断じてMMTなどではありません!!MMTでこんなに急激に流通貨幣の価値が下がるわけがないでしょう!!私の言ったことを聞いていましたか!!??」
「君は一体なにをこの私に言っているんだね!!??
」
========
さて、善良な若者たちと、新しいことを積極的に取り入れる市長の心温まる話は如何でしたか?
===追記===
普通に読めば分かると思いますが、この記事の主題はMMT批判ではありませんのでご了承下さい。