一部報道がされていますが、FBの進める暗号通貨;Libra構想からPaypalが脱退を表明しました。 決済業界だと、VISAとMasterも脱退への検討を開始したとのこと。
発生事象/背景/今後の展望についてまとめてみましたが、やはりこういった大きい構想を進めるときにはいかに当局/行政を味方につけて、各機能で必要となる企業へのincentiveを明示化/用意して、何よりユーザーの支持を取り付けないと厳しいなあと感じます。
その意味では、イーロンマスクのビジョンっていい意味ですさまじいし、マクロとミクロ両方で攻めていて非常に緻密なんだなと。日本だと永守さんとか孫さんとか ですかね。良い意味のほら吹きはVisionaryと同義なんですよね。
<発生している事象>
・FBがメインスポンサードするLibra構想からPaypalが脱退を正式メディア通じて表明
└BBC:https://www.bbc.com/news/world-australia-49944421
└FT:https://www.ft.com/content/6bc9a0f8-e6e1-11e9-b112-9624ec9edc59
・他にもVISA/Masterも「撤退を選択の一つとして検討」とWSJが報道
・7月に公表されたLibra構想に対し、基盤中の基盤である決済企業が一斉に離反が始まった
(背景)
・決済系企業の離反は「AML/KYC」への各国規制の急激な厳格化/強化が大きく影響、暗号通貨としてLibraが認定されない可能性も高まった中で協賛/協力意義が低下したため
・Libraの目指すInternet of Moneyにはまだまだ時期尚早との判断も
<決済系企業の狙い>
・決済系企業はLibraの構想が現実味を帯びており、座して(Libraに)決済基盤を奪われるのであれば、最初から参加してシステム構築に関与して、既存基盤の高度化につなげる狙いがあった
・付随して、従前リーチしなかった層にもLibraの自立的拡大によりリーチでき、事業基盤を拡大可能
*LibraのInternet of Money構想:金融包摂の実現(世界中にLibraで金融サービス提供)
<各国規制の厳格化/強化>
(前提)
・従前より各国金融当局/治安当局は、暗号通貨を利用する個人を直接規制するのが困難なため、交換事業者(VASP)への規制を適用
└暗号通貨の運営者不在/機能として停止させることが不可能…法定通貨への交換部分で規制
・Libraは暗号資産による送金には当該規制が適用されないことに着目、規制対象外での自由な送金手段を構築/提供しようとし、実際に行う算段を立てた
(各国対応)
・Libraの暗号資産認定へ各国当局が難色を示すとともに、19年のG20ではFATFがトラベルルールと呼ばれる新たな規制導入を決定。
└VASPに対して取引に関する顧客情報の収集/送付を要求するもので、取引時に金融サービス提供者同士が顧客情報を相互共有することを定める
・BTCやETHに比較して「高いUI/UX」「バスケット方式での価格安定性担保」といった面で使い勝手が良いLibraの社会インパクトは大きく、各国中央銀行/金融当局は「果たし状」と受け取った??
(結果として…)
└Libraは暗号資産として認められないリスクが高まり、認められたとしてもトラベルルールに抵触してAML/KYC規制が掛かり、当初予定していた規制対象外グローバル通貨たりえなくなった
<今後について>
・LibraがAML/KYC規制への潜脱手段として使われる可能性に対して各国当局は規制強化で穴をふさぐ一方、Stable-coin全般についてはまだディスカッションのさなかであるため、規制に服する形でのLibraのような暗号通貨が発行される可能性はまだ高い。
・だが、まだ規制の方向性(各国当局やFATF)が流動的であり、規制当局/決済企業の動向には注視が必要。