ハッシュタグイベント、#dappsコミュニティを考えるで多くの方から大変勉強になる、様々な意見を集めることができました。参加してくださったみなさん、本当にありがとうございました。
それらの意見のまとめと自分なりの考えを述べて企画の締めとさせていただければと思います。
まず、はじめに、自分はこの記事でこんな内容のことを書きました。
ここでは、情報をまとめきれない運営と、それに対してミスコミュニケーションが発生してしまう事態が発生し得ることについて問題提起をしました。
そこで多くの意見をいただきました!まとめは下記リンクから
https://alis.to/tathuki/articles/K0ZqnzrQr78A
今回、twitterやALIS、Gaudiy内での反応から新しくわかったことや、なるほどと思った点などを踏まえて、最終的に「Dappsコミュニティとは」という問に対しての自分なりの答えを載せて締めようと思います。
これからのDappsコミュニティとは、単一の中央的な場所をさすのではなく、自律分散的に自由に派生していく、境界の曖昧な滑らかなネットワーク全体を漠然と指す言葉になっていくと思います。
みんなが自律性を持ち、誰もが自分のやりたいことに自由にトライできる。
運営による中央的な管理を離れて、個々人が自分たちのやりたいことへある意味勝手に取り組んでいくと、そうした分散的な活動が自然とDapps全体の価値の共創につながる。
目的や動機はバラバラで、時には複数のコミュニティが絡み合ったりしつつも、最終的に一つの価値のあるネットワークを形成していく。そして、終点がなくどこまでも派生していく。そんな場所。
もっと簡潔にまとめると
①活動の動機が個人のやりたいことベースによって成り立っていることと、
②オープンな場所で広がりを見せていく分散型ネットワークであること
この二つがDappsコミュニティの大きな特徴であると考えます。
これを成り立たせているのが、ブロックチェーンによるglobal stateを共有していることであったり、単なるユーザーとしてではなくアセットを保有するステークホルダーとして関わることができるというWEB3.0的な世界観であり、Dappsコミュニティで特に顕著な特徴と言えるでしょう。
今回の企画の中でも、上記のDappsコミュニティの性質に近い事柄について
投稿をしてくださった方々が散見されました。
こうした新しいあり方を見せるDappsコミュニティですが、
ただ、Dappsコミュニティを魅力的にする要素が同時に問題も生み出していると感じます。
つまり、
①活動の動機が個人のやりたいことベースによって成り立っていることと、
②オープンな場所で広がりを見せていく分散型ネットワークであること
この二つの性質がより強まることによっての問題も同時に発しているのではないでしょうか?
いくつか、実際にこの企画に寄せられた投稿を踏まえて確認していきます。
分散型ネットワークの側面が強いがゆえに、活動を追いきれなくなったり、「ここだけ見ておけば良い」という場所が無くなってしまう。
そのことにより、ユーザー視点としてはそのコミュニティに関係する情報を追い切ることが難しくなることがあります。特に現在主に採用されているtwitterやdiscordはリアルタイム性が強いため、次々と新しい情報が流れ込んできます。そうなると、常に追い続けていないと情報を見逃してしまったり、現在のコミュニティの状態が把握できないことになりがちです。
運営としては、公式情報の発信や、特定の問題に関する議論などを通じてユーザーとコミュニケーションを図りますが、この高いリアルタイム性によって逆に同じ情報を発信し続けて周知を強く図る必要性があったり、負担も大きくなってしまいます。
また、ユーザーの意見を反映しようとしても、全く別の意見を持つユーザー個人個人がバラバラに要望や意見を送ってしまうので、運営としてもどう対処すべきか負担が大きくなってしまいます。
zapさんによるALISでの投稿記事ではこんなことが書かれています。
公式Discodeは現在も大量の意見が投稿されており、それはとても良いことなのかもしれませんが、正直意見の内容は玉石混合。かつ投稿されているのは意見のみです。
つまり誰もその意見を料理していない。採用・不採用・保留中の判断が誰にもされません。よって、定期的に同じ意見は出てくるし、そもそも意見を書くこと自体の生産性に疑問が生じます。
Twitterの場合は意見をどうこうというより、「このゲームを話題にしてくれてありがとう」というお礼の意味が強いように感じます。
開発者をはじめ運営のリソースは限られているため、どうしても何らかの基準によってどれかを優先し、何かを後回しにせざるを得ません。
共創コミュニティとしては、サービスの改善の要望がユーザーから積極的に上げられる状況はとても好ましいものですが、そうした個人毎の価値観毎に多様な意見が提案される状況で、その改善案一つ一つに対して優先度などを割り振り対応する必要性について納得感のある優先度の割り振りや、対応状況をシェアすることは難しいです。
一度説明をしたとしても、すぐにログは流れ、それまでの議論の経緯を再確認することは不可能に近いためです。
どんな場所を使うかどうかは手段でしかないけど、ユーザーと運営とのコミュニケーションを取っていく上で、その「手段」によって問題が発生していると考えます。
通常、少数の中央的な管理ではなく、民主的な手段を取る上で重要になってくるのは、特定の議題に対して深く議論を行う熟議という形式です。
政治学の分野では、中央的な共産主義よりも分散的な合意形成を図る民主主義が、民主主義の中でも単に多数決で物事を決めるよりも、徹底的な熟議を行う方が経済発展の度合いや国民の満足度が高く意思決定方法としての高い効果が実証されています。
※参考文献
しかしながら、現在はその熟議が難しくなっており、個々人毎に同じ議題について毎回話して説明をしていく必要があります。
全体的な意見を統合しようとする時にはアンケートを取ることが現実的に取れる数少ない方法となってしまっています。しかし、これは上記で言う所の多数決型での意思決定であり、不満も残りやすいです。
実際、単なる多数派のユーザーの意見に流される姿勢を望ましくないと考える意見や、「ユーザーが言った意見である」というだけで対応に右往左往してしまう状態を危惧する声もありました。
これは、特定の話題について掘り下げる熟議の場所が足りていないため、ユーザーの意見を広く募るか、そうではなく少数による意思決定をすべきかという二項対立的状況に陥ってしまっているためであると感じました。
また、こうした熟議的な観点については、ユーザーと運営だけでなく、ユーザー間でも対処が必要であろうと考えます。
Dappsでは多様な利害をもつステークホルダーがそれぞれ自分のやりたいことを追求できる状況を求めます。結果として、ときには参加者によっては両立しない意見を持っていることもあります。
こうした時に、今は両者ともに運営に対して直に要望を出し、対処を望みます。そうした中で片方の要望が通らなかったときに納得感を得にくいです。
Dappsコミュニティにおける最大の特徴である二つの性質。
①活動の動機が個人のやりたいことベースによって成り立っている。
②オープンな場所で広がりを見せていく分散型ネットワーク。
これらを最大限活かしつつ、こうした問題を乗り越えていくために
必要なことを考えてみました。
a. 分散的な活動を統合することができる場所
分散的な活動や情報を分散的な運営によってまとめ、評価することのできる総合的な場。そこでは、何が信頼できる情報であるかを可能な限り正確に測定することができ、分散的な活動について形成されている集合知や信頼度を可視化する場所。
twitterやdiscord、独自に運営されるメディアサイトやwiki、果てはyoutubeなどDappsの分散型ネットワーク内で行われるありとあらゆる情報を統合して蓄積する。
そんな場所が求められていると感じました。
これを用いることで、コミュニティの参加者による自律分散的な活動を阻害することなく、コミュニティ内で何が起こっているかをリアルタイムで追い続ける必要性を減らしていくことが出来ます。
こうした統合的な場所を通じて新しく外部での活動が生まれることもあるでしょう。
b. 特定の問題について深く議論を行い、対応状況や結論を確認できる場所
運営による情報発信や、コミュニティメンバーの意見や提案などを1.の仕組みで統合した後に、それらの話題についてメンバー間で話し合いが出来るような場所が必要になると考えます。
ログが流れていかず、特定の話題についてじっくりと掘り下げていくことが出来て、後から参加する人もこれまでの経緯を簡単に確認できると良さそうです。
cosmosさんが考える議論のプラットフォームと近いかもしれません。
(記事から抜粋)
今は意見集約のためにDiscordなんかが使われますが、Discordでもツイッターでも人のふんどしを借りるのでは物足りないので、自サイト内に意見や議論のプラットフォームを作ることがひとつの解決策と思っています。
例としてALISであれば、ALIS掲示板をALIS内に作るというアイデアを提案しています。
それも、5ちゃんねるのようなスレッド型掲示板にすればトピック別にまとまるので、Discordのように一つの流れで様々な話題が錯綜することがありません。
そして見る方は、スレッドのタイトルで何が話題かを俯瞰することができます。
それに、ALIS内に作ることで、Discordのような外部に作るのとは異なりALISユーザーが気軽に見られて参加できるようになります。
また、この機能は単に議論のための場所としてだけでなく様々な活用ができます。
例えば、クリプトスペルズのようなカードゲームの場合には、
デッキ情報やカードの強さ解説などの情報が断片的にSNS上などに掲載されています。こうした情報をまとめた上で、内容を評価したり、議論を発展させて更に良いデッキ構築などを考え出したりなど派生的な活動も生み出すことができます。
そして、その情報はコミュニティ内に残り続けて後からでも参照できるようになる。
現在のSNS上で話し合われた内容は短時間で消えていってしまい、後から遡ることが難しいですが、この仕組みであればそれを解消できます。
(実際、CryptoSpellsのプレイヤーさんにヒアリングを何件か行いましたが、まとまった攻略情報が無くて困っているという意見が散見されました)
c. 自律的な活動を促進し、信頼を可視化する仕組み
上記の情報を蓄積し、その話題について掘り下げる機能を用いることで、個々人の意見や信頼を可視化することもできます。
もちろんこの信頼という評価は運営が定めるものではなく、参加者一人一人がその基準を作り上げていくことになります。評価の軸は人によって異なるが、そうした「評価軸」からコミュニティの参加者自身が作り上げていくことができる仕組みです。
この信頼が積み重なることで、自律分散的な活動を自律分散的に支援していくことが可能であると考えます。
Dappsにおけるコミュニティ活動とは、エコシステム全体の健全度や信頼を規定するもので、それによってDapps自体の価値が共創されていくものです。
そうした価値創出を担う活動に対して、適切に価値を還元したり、
それを支援するような仕組み自体を自律分散的に実現できれば、ますますDappsコミュニティの魅力を磨いていくことができると考えます。
d.コミュニティ間での滑らかなつながりを促進
自律分散的なDappsコミュニティ間における「なめらかな繋がり」を体現するように、特定の場所での信頼が残り続け、他の場所でも転用することのできる。
場所も人も分散的で自由な活動を更に促進しつつ、そうした活動が一瞬しか残らないSNSではなく、これまでの活動や信頼が蓄積されて評価される。
そんなポータル的な場所こそがこれからのDappsのコミュニティとしては
必要になってくるのではと思います。
今回のハッシュタグ企画を通じて、様々な観点からの多様な意見を受け取ることが出来て、とても勉強になりました。
記事の中で掲載しきれなかった意見はまだまだ沢山あるのですが、それら全てがとても参考になるものでした。
この学びを単に「見識が深まった」で終わらせず、ここで出てきたコンセプトを実際にプロダクトの方に直ちに反映させていこうと思います。
今回は沢山の方々に参加いただけてとても嬉しかったです。
この結果をもとにGaudiyでの新規機能を、引き続き皆さんと熟議を通して共創していこうと思うので、興味のある方はぜひこちらのコミュニティにもご参加ください。