昨今話題のシェアリングエコノミーについて、どこまで理解がされているのでしょうか。
シェアリングエコノミーとは日本語で言えば「共有経済」であり、モノやことを共有することによって成り立つ経済の動きを意味します。
シェアリングエコノミーを考えるとき、ネットが身近であるか、そうでないかによって「共有」のとらえ方も変わってくるようで、年代によって受け止め方が大きく異なる印象です。
また、レンタルビデオなど広義のシェアリングエコノミーが以前から存在してきたことが、現在のシェアリングエコノミーを理解する上で混乱を招いているように思えます。
現在のシェアリングエコノミーと以前のシェアリングエコノミーの違いは以下のように理解しています。
現在のシェアリングエコノミーの特徴は、C to C、つまり個人と個人のやり取りであることです。ここは、レンタルビデオなど、以前のB to C(企業と個人)をベースとした共有と大きく違うところです。また、C to Cだけであれば、地域コミュニティによる交換、たとえばお醤油の貸し借りなどもあてはまりますが、現在のシェアリングエコノミーの最大の特徴はWebによるマッチングが行われ不特定多数が参加できることです。
地域コミュニティによる交換は特定少数の者同士の共有でしたが、現在のシェアリングエコノミーは不特定多数による共有です。
以前であれば、不特定多数の人とモノを共有するのは安全性などの面から困難でしたが、それを変えたのは、レーティング(評価)の仕組みです。食べログなどに使われている口コミと理解すればよいかと思います。口コミの評価によって、シェアする相手が信頼できる人なのか、そうでないかを確認することができるようになりました。
シェアリングエコノミーに参加する人も評価によりインセンティブが得られ、信頼が蓄積することによってシェアリングエコノミーをさらに広がりのあるものにしています。
これまで地域コミュニティで担ってきた(お醤油の交換のような)善意に基づく共有が、新たなシェアリングエコノミーに飲み込まれ、金銭交換に変わってしまうと、ネガティブにとらえるケースもあるようですが、それは本質ではないと思います。
これまで結びつかなかった人同士が、Webによるマッチングと評価によって、結びつき、そこに交換が生まれることが大切であり、その交換の一方は必ずしも金銭である必要はありません。
さて、現在のシェアリングエコノミーにおいて、自治体はどのような役割が担えるのでしょうか。
現在の動きをみるとあまりポジティブな動きはないように思えます。
自治体は今あるシェアリングエコノミーのサービスを紹介しているだけではないか、という意見も聞かれます。
ほかに自治体の動きとしてあるのは、規制です。民泊条例を設置して宿泊期間や参入条件を定めるものなどがあります。
規制は既存産業の保護である場合が多いのですが、どこまで既存の産業を守るべきなのか、新しいテクノロジーや価値観の前では自治体も考える必要があるのではないかと思います。
シェアリングエコノミーにおいては、評価と信頼の蓄積が大切であることは記載しましたが、そうなると今後進んでいくのではないかと思うのが、信頼情報の共有化です。
現在は多くのサービスがそれぞれのサービス内で信頼情報を蓄積する仕組みになっていますが、それをユーザーと紐づけて、ユーザーに信頼を蓄積する。つまり、異なるサービスであってもその信頼を共有できるようになる流れです。
ここに自治体など政府が介在する余地があると最初は感じましたが、ブロックチェーンが台頭する今、それも政府の役割ではないだろうと思います。
現在、自治体がすべきことは、既存産業を保護する規制ではなく、シェアリングエコノミーのプラットフォームに参加することではないでしょうか。自治体は多くの公共資産を持っており、その貸出も部分的には行っていますが、とても非効率な状態です。
体育館の予約をするにしても、何か月も前から物理的な申請書をださなくてはならなかったりします。
スペースマーケットなどの、空きスペースを共有するサービスに自治体も参加すれば、そのシステムを活用することができます。条件は交渉すればよいのではないでしょうか。
また、図書館についても、リブライズというサービスが個人同士の本の貸し借りを可能にしており、そこに公共の図書館も参加すれば、まち中を図書館にすることができます。
自治体はシェアリングエコノミーでやることを無理に探すのではなく、できることをまずやってみるのがいいと思います。