パワハラの実態調査の中で「過去3年間にどのようなパワーハラスメントに関する相談がありましたか。(略)(複数回答可) 」という質問に対して、「精神的な攻撃」の比率は73.5%、パワーハラスメントに該当すると判断した事例は「精神的な攻撃」の比率は49.1%となりました。どちらも他の項目と比べ最も高い比率になっています。パワーハラスメントで最も行われる「精神的な攻撃」について知りたかったので読みました。
職場におけるモラルハラスメントとは、言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせて、その人間が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせることである。
最初はモラハラだと思わない、ちょっとした皮肉屋嫌がらせがエスカレートし被害者は追いつめられる。
相手を傷つけるようなことをいった後、謝罪もなく、相手の誇りを傷つけたり、相手に屈辱を与える行為が何回も繰り返される。
自己愛的な変質者の特徴(p9)
誇大妄想的でたとえ業績がなくても、自分には才能があり、仕事がてきると思っている。人からもそう認められたい。自分が特別であり、自分のためなら誰もが喜んで尽くしてくれるべきだと思っている。自分の目的のために他人を平気で利用する。他人に対する共感に欠け、誰かが苦しんでいるのを見ても同情を感じない、他人を羨望する、などである。
DSM-4による自己愛的な人格の規定(p211)
①自分が偉くて、重要人物だと思っている。
②自分が成功したり、権力を持ったりできるという幻想を持ち、その幻想には限度がない。
③いつも他人の称賛を必要としている。
④すべてが自分のおかげだと思っている。
⑤人間関係のなかで相手を利用することしか考えない。
⑥他人に共感することができない。
⑦他人を羨望することが多い。
メランコリー親和型(p10)
几帳面で家庭や職場の秩序を愛し、まわりの人々に献身的に尽くす。真面目で責任感が強いので、仕事の面では成功することが多い。だが、罪悪感を持ちやすく、抑うつ状態になりやすい傾向を示す。
(p242)
モラルハラスメントの被害者は素直な性格で、人の言うことを信じやすい。相手が心底から破壊的な人間であるとは想像することもできず、なんとは相手の行動に論理的な説明を見つけようとし、もしそこに誤解があるならそれを解こうとする。〈もし私がちゃんと説明したら、相手は理解して謝ってくれるにちがいない〉。そう考えるのだ。
(p116)
被害者がモラル・ハラスメントの支配に屈するのは、失業が恐ろしいからだけではない。加害者である経営者や上司が自分は絶対的な力を持っていると思いたいために、意識しているにせよ、していないにせよ、さまざまな方法を用いて、相手を心理的にしばりつけ、反抗できないようにしてしまうからだ。相手を罠にかけるとしか思えないようなこの方法は、かつては強制収容所で使われていたもので、いまでも全体主義国家や宗教的なカルト集団などで人々の精神を支配するのに利用されている。
確かにモラルハラスメント的な行為をすることは誰にでもある。だが、そういった行為は一定の期間に何度も繰り返されたりしなければ、他人の心を破壊するまでには至らない。人間は誰でもーたとえば怒った時などに、相手を傷つけるようなことを言ったりしたりする。だが、そういった行為は「あんなことしなければよかった」と必ずあとで反省されるものだ。だファ、モラルハラスメントの加害者はそんなことはしない。自分を省みることなどは決してしない人間なのだ。
パワーハラスメント実態調査p107図98よりパワーハラスメントを「一度だけ経験した」「時々経験した」「何度も繰り返し経験した」に分けて調査した結果、すべての項目において「何度も繰り返し経験した」が心身に影響があった比率が高かった。頻度が高まるほど影響があったと回答する者の比率が高まる。パワーハラスメントかそうでないか判断する基準になる(多分)。
睨みあいの段階(p250)
加害者はも被害者もはっきりした対立を避ける。ただ間接的な攻撃を加え、精神状態をゆさぶる。
被害者は対立により関係性が壊れるのを恐れ抵抗しない。
混乱(p251)
相手の支配下におかれると、被害者は混乱する。
相手のすることが不当だと感じても、あまりに混乱しているのでどう行動していいかがわからなくなる。
いちばん不安に感じるのは、はっきりした攻撃を受けることではない。たとえわずかでも自分に責任があるのかどうかわからない状況に置かれることだ。
↑ここら辺のことでパワーハラスメントか判断しにくいとされるのかな?
(p252)
モラル・ハラスメントの被害者が事態をはっきり認識するのに、加害者に影響されていない第三者の存在が大切。
被害者は自分が悪いことをしたと思っているので正しい判断ができない。
孤立無援(p258)
こういった攻撃に対して、被害者はまったくひとりで戦っているように感じる。とりわけ、相手の暴力が巧妙に、またひそやかにふるわれている段階では、誰かに理解してもらうこともできず、結局は孤立するしかない。
モラルハラスメントであると認識する(p281)
まず、何よりも大切なことは、自分がモラルハラスメントの被害を受けているのだと認識し、できることならその過程を分析してみることである。
また、その時から、挑発や攻撃だと感じたものは書き留めておくことが大切である。家族におけるモラルハラスメント同様、被害にあったことを証明するのは難しいことだからだ。
手紙やメモ、ファックスなど、相手の侮辱や中傷を証明するようなものは、保存しておくか、コピーをとっておくとよい。
証人になってくれそうな人間を確保しておくのも大切である。といっても、残念なことに、モラルハラスメントが行われる状況では、同僚たちは加害者の報復を恐れて被害にあっている人間から距離を置くことが多い。
たったひとりでも証言してくれる人がいれば、被害者の申し立ては認められる可能性が高くなる。
(p282)
企業で働く人間は解雇の勧告を受けてからでないと行動を起こさないことが多い。このやり方はあまり賢明ではない。というのも、解雇の勧告が行われた時には事態はかなり悪化していて、モラルハラスメントに関わっていない上司が介入しようとしても効果は発揮できないからだ。モラルハラスメントと戦うならば、もっと早い段階で行動を起こすべきである。