最近はブロックチェーンの応用が始まっています。
トレーサビリティはその応用例の一つです。
そもそも、トレーサビリティとは、追跡可能性を言います。
経営学の分野でいうと、SCM。サプライチェーンマネジメントに含まれると思います。
この牛肉はどこから来たものか、このオレンジジュースはどこ産のオレンジを使用したものなのか。消費者が輸送経路や産地、生育状況などをたどっていくことができる、というものです。
この要望の背景には、消費者の商品に求める質の向上があげられます。
例えば食品であれば、少々高くても安全に作られたものを買いたいと思うのは自然な流れでしょう。
例えば美術品であれば、だれが保有してきたのかという事で箔の違い、ひいては美術品の価値に影響が出てくるらしいのです。
なので、その商品がどういう履歴をたどってきたのか、それを保証することは大いに意味があります。
「なるほど、それを改ざんがしずらいブロックチェーンで行うから保証できるんだ」
そうなのですが、個人的に非常に気になる点があります。
それは
1)そもそも入力した値が保証されている必要がある
2)データと実物が一致している必要がある
3)大量に処理できない
「問題点ばかり、ほじくるなよ」という方は、どうぞ他の記事をご覧ください。
大切なのは良いところだけ見て内輪で盛り上がるより、それなりの可能性で起こりうる問題点の解決策を練る事だと思うからです。
今、そこにある問題から目を背けて、盛り上がる事は(私だったら)できません。
1)を説明します。
この牛肉は○○産ですというデータが、売り手によって改ざんされない。
なるほどブロックチェーンの性質を活かした応用例で、買い手にメリットがありそうです。
買い手がその「データが保証された商品」に魅力を感じるのでしたら、高く売れるかもしれません。そうなのであれば需要が増大するので売り手にとってもメリットでしょう。
しかし、そもそものデータの入力時点でウソが入力されていれば?
前提が根本から崩れてしまいます。
なので、データ入力時点で別の人からの確認など、データの真正性に関する補償が必要だと思います。
これはコストの増加を意味し、結果的に消費者に対する価格の高騰となって現れます。
2)を説明します。
データの入力はクリアしたとします。その次に起こるのが「データと実物の一致保証」の問題です。
オレンジジュースのトレーサビリティを図っているとしましょう。
オレンジの産地でデータが入力され、きっとコンテナや箱ごとにICタグ等で管理されるのでしょう。
工場への輸送も要所要所で記録され、工場へ入荷した時点で、また、記録。検品されて、また、記録。作ってコンテナや箱ごとにICタグ等で又管理。
小売店への輸送も要所要所で記録され、小売店へ入荷した時点で、また、記録。検品されて、また、記録。
流れとしてはこんな感じでしょうが、途中、ICタグを引っぺがしたり、箱の中の商品を入れ替えるという事がありそうです。
なので、コンテナや箱の中身の未開封状態を保証する、という方向で、データと実物の一致を試みると上手くいきそうです。
3)は説明するまでもありません
ブロックチェーンはその性質上、スケーラビリティが問題になっています。
現状スケーラビリティを解決しているのであれば、非中央集権性が崩れていることが多いようです。であれば、情報操作の余地が増えるという事で、そもそもの「ブロックチェーンで情報管理されたものだから安心」という理屈が崩れます。
なので、まずは美術品や種馬、肉牛など、数は少ないけれど高価なものから順次取り入れられていくと上手くいきそうです。
(原価計算、管理会計の分野をご存知の方。「個別原価計算の対象品目が合致する」と表現するとピンと来ていただけると思います)
最後に、応用例です。
「売って終わり」ではなく、「どこで作られたものがどこに売られたのか」そこを気にする人たちがいます。
現状では、製薬会社や自動車の販社です。
薬にマズいことがあった、自動車のある部品にマズいことがあった。
回収しなければならない。
そんな時に信頼できる記録が残っていれば、正確に迅速に回収することができます。治療より予防というのはその通りだと思います。しかし、予防に100%があり得ないのもまた事実です。
であれば、予防策と同時に効率的な回収策を講じておくことこそが誠意だと言えるのではないでしょうか。
また、データの耐改ざん性だけでなく「ネットにつながって入れれば誰でも見ることができる」という公知性を活かす使途もあるように思えます。
それは政府の公告や、すでに実験段階に入っている登記簿などの公文書です。
さらには、トレーサビリティに話を戻して、データ量の問題が解決するのであれば、温度や湿度等の保存状態などが記録されてもいいかもしれません。実際に「チルド」で輸送したものが実は真夏の炎天下に野ざらしにされており、傷んでしまっていたという事例があります。
繰り返しになりますが、オラクル問題(外部情報をブロックチェーンにつなげる際に起こりうる問題)は重要です。
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