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社畜人生小説2 第3章

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  • Hideaki imoto
  • 2018/11/03 08:00



前回のあらすじ


バスの中で車の事故対応と自腹の闇を聞いていたワイン氏

そんな話に夢中になっていると暗闇の中の施設に到着した。
そこで施設従業員が拍手で出迎えてくれる。

ここで地獄の1ヶ月が始まるとは・・・



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暗闇の中の大きな施設。
周りは森に囲まれ、虫の音しか聞こえない。

施設職員の方から簡単な施設の説明が始まった。
どうやらバブル時代に建てられた大手企業の保養所を会社が買い取ったようだ。

ここで私の務める会社を説明しよう。

私は外資系の医療関係会社に務める事となった。この会社はお客様をクライアントと呼んでいる。外資系らしいといえばそれまでだが・・

そのクライアントは製薬企業・病院・薬局・医療系卸業者・医療機器企業と多岐に渡る。
これらのクライアントにコンサルや必要に応じたリソースやサービスをこちらから提供し、課題解決とクライアント目標を共に達成させる業務である。

この会社は自社に大量の医療系のコンサルや営業、創薬の非臨床試験や臨床試験業務の人員を要し、医療データマネジメント・統計解析などを得意していた。グローバルで従業員数は約5万人の社員が働いている。

この会社の武器は創薬・機器開発から患者に渡る・使用するまでの全てのフェーズでビジネスを展開している点だろう。

今世に出ている医薬品のほとんどに私と同じ世界中の従業員の誰かが関わってる。


そしてこの当時も現在もこの会社を知る人は少ない。特に日本人はほとんど知らない。

それは当然だろう。上場もしていなければ、海外の企業である為日本人には縁遠く感じる。

そしてこの当時の私は製薬企業の案件が多くある時期に入社しており、MRとして入社する事となった。しかしMRはMR資格を有していなければ仕事が出来ない。
そこで山奥の研修施設にMR資格を取得する勉強をする為連れて来られたのだ。

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MR:Medical Representative
製薬企業の営業担当者はMR(メディカル・レプリゼンタティブ)と呼ばれています。MRの主な役割は、 患者さまの安全を確保するために、医薬品に関する情報をドクターなど医療従事者へ提供し、医薬品の適正使用を促すことです。 それと同時に、MRは自社製品を普及させるという大きな目的があるため、他社製品よりもいかに優れているか、 効果や効能を詳しく説明できるだけの専門的な知識が必要となります。
(引用:https://www.tohoyk.co.jp/ja/recruit/industry/ms/
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私は勉強が大嫌いだった。学生時代もいかに楽をして課題をクリアするかを考えている様なアホである。そんな勉強が嫌いな私が医療の勉強をするというだけで地獄でだった。

そんな事を考えている内に時は経ち、研修の大まかな流れが明かされた。

研修初日はオリエンテーションとプロジェクト説明。

2日目からはテスト→座学→プレゼン→座学→プレゼン→自習

以上の流れである。1日の始まりは9時。休憩を適宜挟み18時までみっちり疾患、法規など研修を受ける。この時寝ることが絶対許されなかった為、眠たくなったら立って聞くことが許されていた。むしろ立って勉強する方が捗り、私には合っていた。

ここまでだとあまり地獄に聞こえない。本当の地獄は3日目から知る。

3日目は2日目の座学で学んだ事をテストする。しかし2日目の座学を適当に聞いている人間は絶対にわからないテストで医療関係者でもないとわからない専門用語などが出てくる為だ。例えば「ADMEを説明しなさい」など。
こんなの現場では使わないが基本的な知識である為確認テストには出しやすい。

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ADME(アドメ)
生体に投与された薬物が、吸収されて体循環血液中に入り、生体内に分布し、肝臓などで代謝され、尿中などに排泄されて生体内から消失する過程。吸収(absorption)、分布(distribution)、代謝(metabolism)、排泄(excretion)の頭文字である。
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そしてこの様なテストの点数は我々の上司へ毎日報告される。



ここで私の会社のヒエラルキーを説明しておこう。

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こ、こ、こんな感じ。
管理職なので役職はかなり上の様に感じていた。

ちなみに支社長の上もある。海外の執行役員になるのだ。

そんな毎日の報告を受けている課長が研修施設にやってきた。

課長「みなさん。毎日のテスト本当にお疲れ様です。さて皆さんに伝えないといけない事があります。我々が研修している時間も皆さんへのお給料が発生しています。誰が払っていますか?ワインさん!」
ワイン「はい!!会社です。」
課長「どこの?」
ワイン「え?我々の会社ではないのですか?」
課長「違います。皆さんがこれから配属されるG社が払ってくれています。」

この時は「へ〜そうなんだ」くらいにしか考えていなかったが、他社の社員の研修費用をクライアントが支払ってる。今考えると変な話だ。

ここで私のこの当時の仕事を少し解説する。

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この様に課題解決の為に私たちはクライアントから費用を頂き、即戦力として育て上げられ様としていた。

少し詳しく解説するとこの会社は正社員をクライアントへ派遣し、一人派遣するごとにお金を取るビジネスだ。
今までの派遣業というと正社員ではなく、パートや契約社員を派遣し、クライアントで正社員化を目指すスタイルがほとんどでより安く派遣する事で派遣労働のブラック化が珍しくなかった。
しかし、この会社は教育体制サポート確立し、資格が必要な人材を即戦力として育て配属させる事で今まで開拓できなかった市場を開拓していった。


課長「その為、ここでの生活やテスト結果、態度など全てクライアントへ報告する事になります。クライアントへ行くと皆さんは部外者です。テストだけであなたは要りません言われるのはとても悔しいですよね。しっかりお願いしますね。」

外見はスキンヘッドで180cm以上の大柄な大男の課長が丁寧な敬語で激をとばしてきた。

怖かった。笑顔で冷たく冷静で的確な指示。ザ・外資系!!!


それからは全員目の色が代わり勉強に勤しんだ。

最終日には総合テストと題してMR試験本番と同じ様な試験で8割以上の点数を取らなければ合格できない。この勉強は本当に地獄だった。


ちなみにだが、この当時の同期が16名。

慶應、早稲田クラスの高学歴が半数以上。

私は学歴による勉強の仕方の違いや覚える量の違いに差を感じた。
だからこそ彼らと一緒に勉強する様にし、やり方を全部真似していった。

その中でも記憶に残す方法として凄く効果のあったのは問題を出し合うという行為。更になぜそう思うのか考え回答する行為。

これをやり始めてから私の成績はグングン上がり、毎日のテストは100点連発できる程になり、勉強は楽しいと思える様になった。

そこからは勉強をする度に問題を出して遊ぶ事で、高学歴共を負かす事に快感を覚えていった。


研修最後の最終テストは無事合格。

ここからは現場に配属されてから勉強を継続させる
2ヶ月後の試験に挑むだけだった。
しかし仕事をしながら勉強の質を維持する事がとても大変だった事を今でも覚えている。その大変さはまた書く事としよう。


そして


いよいよクライアント勤務の配属先が決まった。


私は香川県に配属になった。


いよいよ香川県でのクライアント社畜人生のスタートだ。



次回予告


地獄の研修が終わり、半人前のMRとして香川県へ配属が決まったワイン氏

この時香川県でうどんを食べる事しか頭になかったが、待ち受けるクライアント上司が天然ハラスメンターである事など知る由もなかった。

次回:VS 天然ハラスメンター

お楽しみに〜




作者

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脳味噌がイタイヤツ



公開日:2018/11/03
獲得ALIS:61.01
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  • @wine
和らしべを世に広めたい人

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