2007年1月9日、スティーブ・ジョブズは「本日、アップルは電話を再発明する」と高らかに宣言した。iPhoneが今やそれなしの日常生活が考えられないほど革新的な製品であることは確かだと思うが、彼自身述べているように、iPhoneは「タッチ操作のできるワイドスクリーンのiPod」「革命的な携帯電話」「インターネットコミュニケーター」の3つを統合したデバイスであり、これら3つの構成要素が発表時点でnovel(=それまでになかった)であったわけではない。
2009年1月3日に創世記ブロック(genesis block)が作られたBTCは、通貨の再発明と言ってよいほど革命的であると思われるが、その技術的な構成要素のすべてがnovelというわけではなかった。(1)電子署名、(2)P2P、(3)Proof of WorkをBTCの中核的な技術的構成要素とすると、このうち真に革新的と言えるのは(3)のPoWのみである(野口悠紀雄『仮想通貨革命』)。(1)を実現する技術としてのRSA暗号はインターネットで非常に広く使われており、(2)を応用したソフトウェアとしては、かつて一世を風靡したNapsterや現在でも多くの利用者を擁するSkype等がある。
BTCの技術的な内実を離れ、外からひとつの貨幣システムとしてBTCを眺めた場合にも、この「通貨の再発明」がまったくnovelなものというわけではないということに気づく。
(1)「中央銀行の管理がないこと」こと
(2)「金などの実物資産の裏付けがない」こと
大まかに言って貨幣としてのBTCの「特徴」は以上の2点であると思われるが、中央銀行を含む広義の政府が通貨発行権を独占した時代は「紀元前7世紀のリディア王国・・で最初のコインであるエレクトロン貨が発行されて以来」(井上智洋『AI時代の新・ベーシックインカム論』)の貨幣史全体で見れば、ごくわずかの期間に過ぎない。「『ピール条例』という法律により、イングランド銀行が紙幣の発行を独占することになり、イギリスのフリーバンキング時代は名実ともに終わりを迎えた」のは1844年のことであり、中央集権に強い違和のあるアメリカでFRSが発足したのは1913年のことである。
また、第一次大戦中の主要各国による金本位制の離脱、20年代の再建金本位制を経て、再び30年代に各国が金本位制を捨て管理通貨制度に移行し、最終的に70年代初期にブレトンウッズ体制がgive upされてからというもの、いわゆる法定通貨にも「金などの実物資産の裏付け」は存在しない。
では、1000文字くらいになったので今回はこの辺で(^^)/~~~