「ノミの体長は,どのくらいあると思いますか?」
問いかけからはじめても,誰も手をあげて答えてくれるようなことはめったにありません。
「目と目があいましたね。ありがとうございます。どれくらいだと,思われますか?」
ノミの体長は,4mmぐらいです。
「では,次の質問です。この体長が4mmのノミが,どれくらいの高さまで,跳べると思いますか?」
「ふしめがちな方が多く見受けられるようになったのは気のせいでしょうか?僕と目が合うと,あてられてしまうんじゃないかと,恐れていませんか(笑)」
20cmくらいの高さまで,跳べるのだそうです。
「では,算数の問題です。体長4mmのノミが,20cm跳べるということは,体長に対して何倍の高さまで,跳べるのでしょうか?はい,高橋さん,どうぞ」
「・・・」
「意外とみなさん算数が弱いので,心配しないでくださいね。体長の50倍。ですから,人間だと160cmの人が……さて,どれくらいの高さ跳べるのでしょう?」
「・・・」
「そうですね,80mの高さまで跳んでしまうという,驚異的なジャンプ力です。」
「160cmの人というのは,ドリカムの吉田美和。80mというのは,太陽の塔が70mなので,それよりも高いということです。」
「さて,このとてもジャンプ力の高いノミ,普段なら20cmの高さまで跳べるノミをビンの中にいれてフタを閉めます。ビンの高さは5cmくらい。閉じ込められた当初は,何度も何度も,フタにぶつかります。ここから飛び出そうと試みているのでしょう。そうして,しばらく放置します。次に,ビンのフタを開けて解放すると,さて,どうなるでしょう?」
「ビンのフタの高さ以上には,飛び上がらない」
「正解です。さすが。そろそろ,流れが読めてきましたね。ありがとうございます。フタに頭をぶつけている間に,「もうそれ以上飛んでもダメ」ということを学習するのでしょうね。なので,フタがあいて天井が解放されていても,もうそれ以上,跳ぼうともしないのです。これを,心理学用語では【学習性無力感】といいます。」
「では,ここからが,本当の問いです。この跳べなくなったノミ,学習性無力感におちいってしまったノミを,元のジャンプ力に戻すには,どうすればいいでしょうか?隣の方と話し合ってみてください。1分間差し上げます。」
過去に,いろいろと伺った答えをご紹介します。
「エサをぶら下げる」
馬ににんじんをぶらさげる【ごほうび型】ですね。
「20cmの高さまで持ち上げて,そこから落とす」
虎が子供を崖に突き落とす【試練・恐怖型】
さらにひどいのがありました,これは,ミドルマネジメントの方からでてきたのですが,
「ビンの下から火であぶる」
怖いですね。【体罰型】。”やる気に火をともす”というのがリーダーの役目であると言われますが,物理的に火であぶるというのは,どうなんでしょう。笑えないですね。
「応援する」
いいですね。この方向性で考えると,よい答えにたどり着きそうです。
ここでは,一応,こういう答えを用意しました。
「跳んでいる集団に戻す」
これが,【コミュニティの力】です。
「カモの法則」と呼ぶ人もいます。
「あいつができるんだったら,自分もできるカモ」です。
集合研修,わざわざみなさんに集まってもらっている目的・意義のひとつがここにあります。
みなさんが,もともともっている跳躍力を,ぜひここで発揮してみてください♪