過去、そんなにいやな思いをしたのだろうか?
朝,企業内研修会場に集まる面々の顔は、一様に暗い。
かつて、自分もそうだったことを思い出します。
業務に追い立てられる日常の中で,顧客から、工場から、電話で追いかけ回される毎日が続いていました。とはいえ,e-mailも携帯電話も普及していなかった時代だったので,今よりはまだましだったのかもれません。それでも残してきた仕事で頭がいっぱいで,のんびり研修どころではありませんでした。
そもそも、人が学び成長する機会は、どこにあるのでしょう?
7割が【直接経験】、2割が【薫陶】、そして、たった1割が【研修】や【自己啓発】だといわれます。直接経験、つまり、職場・現場での仕事を通じて、もっとも人は学び成長する。そんな貴重な機会を奪ってまで、どうして社員を集めるのでしょうね。
問い直してみたいと思います。
大きくは,二つ。
ひとつは,普段の経験からは学べないこと。もう一つは,普段の経験からの学びの効果を高めること……かな。
”業務に追い立てられる日常”,まさに,普段は目先の仕事に対応することで精一杯です。なので,研修の場では一度立ち止まり,自分自身のことを振り返って自己理解を深めてもらいたい。自己理解というのは,自分が大切にしたいこと,価値観が何なのか?自分の強みは何なのか?そういったことを自分の言葉で話せるレベルにまで具体化することです。
自分を理解するというのは,ひとりではなかなか難しい。人と話したり,比較したりすることであぶり出されてくるものです。できれば,同期同士がいい。お互いに気心が知れていて,そして,お互いの成長度合いを確認することもできます。
また,会社の戦略や未来の話も,こういった機会に直接幹部から話をしてもらうことが望ましい。社内報や間接的に直属の上司から降りてくる話よりも,経営者の肉声で直に聴くのとでは,腹落ち感が違います。先の見えない経営環境のなかで,経営の重要な役割。社員が自社のことを誇りに思う,期待以上に働き,この会社に居続けたいという思い,エンゲージメントに効いてくるのです。
そして,もう一つは,普段の仕事を通した経験からの学び「経験学習」の効果を高めること。”内省”することです。失敗から学ぶことだけではなく,成功したことからも学ぶ。なぜなら,成功を”まぐれ”にしたくないからです。成功確率をあげ,再現性を高めるのです。タイガーウッズはパットを外した時には,必ず,同じ距離で入るまで練習をしてからその日を終わらせるといいます。いいイメージを刻み込むため。それが,次のプレーにつながるのです。
内省というのは英語では“Reflection”といいます。そのままを映し出すこと。例えば,湖面に映る富士山をイメージしてください。湖面に波が立てば,投影された富士山の姿は,ゆがんでしまいます。波の立たない穏やかな湖面でこそ,そのままの姿が映し出されるのです。内省にも,同じことが必要。心がざわつかないように,穏やかな心でこそ,はじめて事実が投影できるのです。
マインドフルネス瞑想は,そのためのひとつの手段。心地よく座り,頭のてっぺんから糸でつり上げられているように背筋を伸ばします。目は閉じていても,少し開けていてもOK。呼吸は腹式,鼻から吸って,ゆっくり吸った息をお腹に送り込むイメージで,ゆっくり吐いて,吐くときも鼻から吐いて,鼻孔に息が通るのを意識して,呼吸に集中します。
ざわついた心で内省を試みると,感情が勝ってしまって,事実を事実としてそのまま切り取ることができません。そうすると,他人や環境のせいにしがちで,自分でコントロールできないことに意識が持って行かれてしまいます。
研修で求められるアウトプットは,参加者の行動変容です。
とはいえ,自分を責める必要はまったくありません。あなたはあなたのままでOK。心理的安全があってはじめて,ひとはチャレンジできるものなのです。
人が変わる,成長する局面に居合わせることができるのは役得。朝,一様に暗かった参加者の顔が,パッと明るくなる様子を見るのが,スタッフにとって嬉しい瞬間なのです。
心が変われば行動が変わる
行動が変われば習慣が変わる
習慣が変われば人格が変わる
人格が変われば運命が変わる
運命が変われば人生が変わる
~フレデリック・アミエル~