現代、私たちが住む世界では「森」は守るもの、保護するものになっています
しかし中世の人々にとっては「森」は全く違う意味を持っていました。
中世の人々にとって森は薪や建築用の木材、家畜の飼料、蜂蜜など生活に欠かせないものの供給源である一方、聖なる場所、未知の空間でもありました。
中世の人々にとって世界は、未知の空間(聖なる空間)と既知の空間(俗なる空間)に分かれていました。
既知の空間は家や都市、村などの人々が住んでいる場所です。そして都市、村から一歩出るとそこには未知の空間が広がっていました。
未知の空間には、人間には計り知れない力、人間の生活を全て左右する様々な力があり、幸せ、不幸、運、不運、戦争、不作、災難なども全て未知の空間からやってくると考えられていました。森は人間にとって一番身近なところにある未知の空間でした。
ハリーポッターを知らない方にはごめんなさいですが、中世の人々にとっての森とは、ホグワーツの敷地内にある禁じられた森、まさにあの感じだと思います。
真っ暗で得体の知れないモノが住んでいる、めっちゃ怖い場所です。狼の遠吠えが時折聞こえてきます。
そんな森からくる災害や「未知」なるものを追い払うために、教会にある「人工」の鐘が鳴らされました。
ここで、この文章を読んで下さっている皆さんの中には「実際に森に行ったり、テレビやネットで森を見たことあるけど、全然怖くなかったよ?」と思われた方もいるでしょう。
しかし、私たちが「森」と言われてぱっと思い浮かんだり、行ったことのある場所は人間が手を入れていない森ではなくて、人間が手を入れた森です。人間が手を入れていない森は、原生林と呼ばれます。
人間が手を入れた森では、日の光が地面近くまで届くように木の間隔を調整したり、木の枝を切ったりしています。「木」自体も、材木として使いやすいように、品種改良されてまっすぐ生えるようになっています。
それに対して人の手が入ってない原生林は、枝が伸び放題で、幹がうねうねと曲がった木が密集しています。それらの木々が空を覆っていることにより、昼間でも真っ暗でとても不気味な場所です。
原生林は、人間が手を入れた森のように、わざわざリフレッシュをしに行く場所ではなくて、一刻も早く立ち去りたいような場所でした。
ちなみに、現在、日本で人間が全く手を入れていない原生林は国土の4%以下しかないと言われています。
その後、次第にキリスト教の考え方が強くなり、世界は未知の空間と既知の空間に分かれているという考えはなくなっていきました。未知の空間の存在を認めず、空間は一つであり全ては人間のためにあるものというわけです。
それまでは、森から生活に必要な分だけ資源を調達していた人々でしたが、その考えが広まってから森のいきすぎた伐採が行なわれるようになっていきました。
ということで、以上、中世の人々と森との関係についてでした。
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