京都の人にすらあまり知られていない、秘境ともいえる場所にたたずむ修験者の行場が京都市にあります。
その名は「大悲山 峰定寺(ぶじょうじ)」。
由緒があって、目を見張るような見どころもあるお寺ですが、とても不便な山奥にあるため訪れる人も少なく、観光地化もされずに昔の雰囲気を残したまま今に至ります。
そんなの、魅力的ですよね。
今回は、そんな秘境のお寺を訪ねてみます。
峰定寺はこんな場所にあります。
ここ京都ちゃうやろ?
と言いたいのですが、山であっても立派に?京都市左京区です。
どうやって行くの?
ここへ行くには、一日3本のバスしかありません。
京阪電車の終点、出町柳駅から鞍馬経由で花背(はなせ)という山間の場所まで、なんと1時間半。
しかもバス停から徒歩30分。合計2時間かかります。
もはや、京都ちゃうやろ。
以前から峰定寺にはとっても行きたかったんですが、交通が不便なゆえになかなか訪ねることができませんでした。でも、今回は行きます!
僕はバスには乗らずに、マイカーで行っちゃいます。
高雄・京北経由で行ったので国道など整備された道が多く、そんなに恐くはありませんでした。
峰定寺近くでもこんな川沿いの広めの道で、いい感じです。
それでも時間はかかります。
峰定寺に到着!
駐車場はあるので車を止めて、境内に向かいます。
ゴールデンウィークに行ったのですが、あまり人がいないような…。
新緑がきれいです。
あと、小さくしか写っていないのですが、薪が積まれています。
冬は薪で暖をとっているのでしょう。
ちなみに冬は雪が深くなるので、拝観は不可となります。雨が降っても足元が滑るのでダメです。入山できるのは春から秋までです。
美しい山間の景色です。
この川は桂川の源流。この水が嵐山を経て淀川に流れこみ、大阪湾に行き着きます。
やっとのことで寺務所にたどり着きました!
と、まだここは寺務所であり、ここで入山の許可をもらって境内に入ります。
これがまたちょっと大変。
お寺の拝観というより聖域への入山なので、気軽には行きません。
まず、入山料(500円)をお渡しし、荷物をすべて預けます。
荷物の持ち込み不可なんです。
小さなズタ袋を渡され、財布とハンカチだけ入れてくださいと言われます。
もちろんカメラ持ち込み不可、写真撮影不可です。スマホも寺務所に預けないといけません。
その上で、入山の注意点を聞きます。
本堂まで430段の階段があるので、六根清浄と唱えながら登ること。
15分で登り、上の本堂で15分瞑想し、15分で降りてくること。
途中鎖場もあるので、気をつけて登ること。
では、ずだ袋と杖を持ってのスタート!
これは、お遍路さんのスタイル。
そう、入山はお遍路と同じとの考えとのことです。
この立派な仁王門から入山します。重要文化財です。
さっそく階段がありますので、どんどん登りましょう!
境内の景色は…。
残念、ここから先は写真撮影不可なのです。
境内の地図は、頂いたパンフレットにあるので載せますね。
峰定寺 境内
出典:京都府 花背大悲山京都府歴史的自然環境保全地域パンフレット
仁王門から山の斜面に作られた階段を430段登ります。
途中は杉やひのきの林で岩場も多く、自然が残る険しい修行の場の雰囲気そのものです。
途中、鎖場もありますがそこも階段ですので、それほど危ないという感じはありません。
でも杖をついて歩かれるような方には難しいと思います。それに小さいお子さんにも厳しいでしょう。
どんどん登れば15分で本堂に到着しますが、六根清浄と唱えつつ新鮮な空気を吸って雰囲気を味わいながらゆっくり登ると20分ちょっとでした。
この本堂が見事です。
峰定寺 本堂
出典:京都府 花背大悲山京都府歴史的自然環境保全地域パンフレット
清水の舞台のようなすごい舞台の本堂!
よくこんな山の崖にこんな立派なお堂を建てたなと驚きます。
ここは国の重要文化財に指定されています。
お堂の中には入れませんが、舞台には登れます。
舞台からの景色は素晴らしく、青空と白雲の下に緑が美しい京都北山の杉林がずっと向こうまで見えます。そして、人家はまったく見えません。いかにここが山の奥かがわかる光景です。
天気も良く、気温も適度、少し風が吹いて快適。この舞台で景色を見ながら10分ほど瞑想をしました。
他に誰もいないので静か。珠玉の時間です。
45分くらいで下山するように言われていて、あんまりお堂に長居すると心配されるかもしれないので、そろそろ戻りましょう。
下山すると、石楠花が青空に映えて美しい。
さて、この大悲山峰定寺とはどういうお寺なのでしょうか。
この寺は平安時代末の久寿元年(1154年)、鳥羽上皇の勅願により観空西念(三滝上人)が創建したもので、鳥羽上皇の念持仏の十一面千手観音像を本尊として安置し、本堂や仁王門の造営には信西と平清盛が当たったという。
大悲山中には「鐘掛岩」「蟻の戸渡り」などと称する行場が点在し、古くから修験者の修行の場であったとされる。
修験の行場として著名な大和の大峯山(奈良県吉野郡天川村)に対し、大悲山は「北大峯」とも呼ばれた。
ということで、修験者の行場なのですね。
下山して、峰定寺が所蔵されている文化財を見せていただきました。
下のように重要文化財だらけなんですよ。
峰定寺所蔵 重要文化財
出典:峰定寺パンフレット
文化財は収蔵庫に保管されていますが、この収蔵庫が公開されるのは春と秋の年間数日とのこと。ちょうどよいタイミングで拝見でき、説明まで伺いました。
もちろんどれも素晴らしいもので、まじまじと見せていただきました。
御朱印もいただきました。
達筆ですね。「大悲閣」と書かれています。
大悲とは大きな慈悲のことで、とても悲しいという意味ではありません。
大悲閣とは、一般的には観世音菩薩像を安置した仏堂のことです。
山の日暮れは早く、もう傾いた日がさしてきました。
本堂に登っていた方もみなさん下りてきており、あたらしく来られる方はもうないようです。
帰路も時間がかかるので、そろそろ帰りましょう。
帰り道、運転する車の窓からまだ花が残っている桜を見つけました。もう5月5日なのに。
でも、青空はもう初夏。
ここに季節の境目を感じながら、次の季節に向かって少しアクセルを踏んで、この秘境の地を名残惜しく去りました。
Camera: PENTAX K-3II with SIGMA 17-70mm F2.8-4
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