ニュースは、ときに、ミスリードを誘います。
先日、NHKの逆転勝訴確定 映らぬテレビに契約義務 最高裁 という見出しのニュースがありました。
これは、事件の性質上から見ても、明らかにミスリードを誘います。
最高裁判所というのは、判断せずに、門前払いするケースがほとんどなのです。
このNHKのテレビの事件も、そうです。
↑NHKサイトより引用
日本は三審制ですが、実は、最高裁に上告できる案件は限定されています。原則として、憲法や最高裁の判例に違反するかどうか、法令の解釈が間違っているか、といった法的な問題を含む案件だけです。最高裁が「上告できる案件だ」とみなし、最高裁としての判断を示す場合は、法廷を開いて「判決」を言い渡す形で結論と理由を示します。判決の前に双方の主張を聞く「弁論」を開くこともあります。弁論が開かれると、多くの場合、地裁や高裁の判断が変更されます。
逆に、最高裁としての判断を示さない場合や、「上告できる案件ではない」とみなした場合は、法廷を開かず、当事者に結論を示した文書(「決定」と言います)を送って終わりになります。ほとんどの場合は「上告できる案件ではない」という短い説明だけで上告が退けられています。いわば「門前払い」の形です。その理由は、事実関係の認定は地裁や高裁が担い、最高裁は法的な判断に徹するという「役割分担」が法律で定められているからです。ただし、刑事裁判では、地裁や高裁の判断に問題があり、そのまま確定させると「著しく正義に反する」と考えられる場合は、「最後の砦」として、地裁・高裁の判断を覆すこともあります。
法律に明るくない市民を混乱させるニュースは、やめてもらいたいものです。
この事件では、最高裁は、テレビ保有者の訴えを退けただけなので、
法律的には、まだ確定してないとみるのが正解でしょう。
すなわち、NHKの映らないテレビをもっている人の全員が受信料の支払い義務があるとは言えないのです。
追記
この事件のテレビは、フィルターをかませて、NHKを受信できなくしたもののようでした。
高裁では、「機器(フィルター)を外したり機能させなくさせたりすることで受信できる」と認定されているのですが、このニュースの報じ方は、そこが隠されておりミスリードですね