今日の現場は、40代ALSの女性Aさんに寄り添うSヘルパー(スーパー・ヘルパー)さんです。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)については、詳しくは検索してください。
筋萎縮性側索硬化症は、身体を動かすための神経系(運動ニューロン)が変性する病気です。変性というのは、神経細胞あるいは神経細胞から出て来る神経線維が徐々に壊れていってしまう状態をいい、そうすると神経の命令が伝わらなくなって筋肉がだんだん縮み、力がなくなります。しかもALSは進行性の病気で、今のところ原因が分かっていないため、有効な治療法がほとんどない予後不良の疾患と考えられています。
Aさんは、夫と子供の3人家族です。30代で発症して、症状が進み現在はベッドの上での生活です。
呼吸器を付け、全介助を受けています。
コミニケーションは、アイコンタクト、透明文字盤を使っています。
時々、パソコンを操作して、文章を書いています。
胃ろうから、食事を入れています。
身体は動きませんが、精神状態は健康です。
呼吸器をつける前までは、スピーチカニューレを使って会話されておりました。
今は、意識がしっかりして居るのに、全てを人の手に委ねなければならないのです。
想像して下さい・・・・
手の指が、曲がったままになっています。
ヘルパーさんが気づいてくれなければ、又は伝えなくては、伸ばしてもらえません。万事が全部、そうなんです。
これは、ある日の一コマです
Aさんがヘルパーさんの動きに視線を動かします。
ヘルパーさんが、それに目を止めます。
透明板の文字盤を取り出し、二人の会話が始まります。
A・・・「吸引して!」
・・・・「足の裏が痒い!」
・・・・「腰の所に、何か当たっている、痛い!」
・・・・「手の指先が、伸びていない!」
命に関わる事から、順に伝えます。でも、伝えるのはしんどいんです。
Aさんは、イライラしています。
ヘルパーさんに、思い通りにやってもらったあとで、
「いわなくても、さっしてよ!」と、文字盤で訴えました。
ペルパーさんは、なんて答えたと思いますか?
「分かりました」とだけでした。
でも心の中では、やっと心が繋がった!と、思ったそうです。
なぜなら、Aさんが、初めて心をぶつけてくれたからです。
はた目からは、「大丈夫?」という会話も出てきます。
例えば、「殺されるかと思った」
「へたね!もっと上手くやってよ!」
「しんどいから、いちいち聞かないでよ!」
等々・・・・
でも、Aさんは、新人のヘルパーさんにはとても気を使います。厳しくして、辞められたら困るからです。いつも、緊張しているんです・・・それが解るから、Sヘルパーは何も言いません。
24時間体制で、数人のSペルパーさんの交替で介護は続きます。
この時期、何よりも困る事があります。
眼に、まつ毛が入ってしまう事です。アイコンタクトで、コミニケーションを図っているのですから、眼が命綱なのです!
そんな時も、S ヘルパーさんにはわかるのです。
ちょっとした雰囲気を察知して、眼藥をさして、そして、まつ毛を流します。
お見事です。
こうして、無事に1日が、過ぎていきます。
呼吸器の管理、加湿、ルートの水抜き、吸引(気管、口腔、鼻腔)胃ろうの管理、栄養、薬の注入、着替え、トイレ介助、清潔保持、お顔や、髪の手入れなど、すべてです。
今、アイコンタクトできる状態ですが、いつかそれも難しくなります・・・
誰もが、それまでになんとか、脳の動きを察して会話できるシステムが出来る事を願っています。
最後の最後まで、耳は聞こえ、知覚は残り、精神は正常なのですから・・・
ただ、意志を伝えるすべがないのです。
以上
現場からALISのお婆ちゃんでした。
過去記事 https://alis.to/users/Enigma
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