この病棟には、がん患者が多く入院していました。
転移して、再発を繰り返して、最期にたどり着く人たちの住処です。
不思議なことは、ここでも起こります。
ほとんどの人が、口からは、食べ物を受け付けなくなっていました。
それに、病院食は味気ないものばかりです・・・
医師は、「何でも好きなものを食べていいですよ!」と家族に言うのですが、せっかく好物を持って来ても、ほとんど口にする事が出来ず、無くなく、家族は持ち帰っていました。
そんな人が、ある日
満足そうに、私に話しかけるのです
「昨日の夜ご飯は、美味しかった、私の好きな牛タンがでたのよ!」
・・・・
出るはずがないと思いながら
「よかったですね!」
と、返します。
「看護師さんが、運んでくれたお膳、私の好物ばかりだったわ!ありがとう」
・・・・
私には身に覚えがありません。
それから、数日後、その方は亡くなりました。
そんな事が、何回か有って・・・
先輩看護師に聞いてみたんです・・・
「ありえないでしょ!」と笑われてしまいました。
私しか知らない事だったのです
この病棟に入院した人たちの多くが、最期の晩餐を楽しんで、こうして旅立っていくのです。
そして、その最後の晩餐のお膳を運ぶのが私・・・・
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