久津(@Nunerm)です。
「タダでやってよ問題」と言われてピンと来る方はいるでしょうか?
こちらの記事で澤円さんが説明しています。
このように、形になるものに対しても「タダで」とか「お友達価格で」とか平気で言う人がたくさんいるのですから、パソコンのOSやソフトウェアのメンテナンスなどは、見た目にその違いが分かりにくいのもあって「あなたにとっては簡単なことだろうから無料で当然」という思考になりがちなようです。
ということで、とにかくエンジニアの皆さんにお伝えしたいのは、「エンジニアたるもの、うかつに無料で受けてはならない」ということです。
エンジニアのスキルを「付き合いがあるから」とかいう理由でタダで使おうとする無礼な輩、いますよね。エンジニアの貴重なスキルは搾取されてはなりません。
また、この手の話はWeb業界だけでなくデザイナーやクリエイターの界隈でもよく見かけます。私の妻もクリエイター(靴職人)ですが、たまにサンプル作成などで無料の依頼は来るそうで、いつも愚痴を言ってます。もちろん断ってます。
この記事にあるCM動画は有名ですね。
冒頭の澤さんの記事を読んで、Web業界でマネジメントをしている自分はもう一つの「タダでやってよ問題」が蔓延っていることに気がつきました。
それが「ざっくりでいいから見積もり出してよ問題」です。
何か大きめの案件やプロジェクトを始めるときに、予算感やスケジュール感を把握したい他組織の人や上司、SIerの場合は発注元から飛んで来る「ざっくりでいいから見積もり出してよ」の言葉。この場合、大抵短い期間での依頼になりがちです。
向こうとしては「ざっくりでいいから」の言葉の中に「そんなに時間かけなくていいから片手間でやって」というメッセージを込めているのだと思いますが、見積もりってそんなに簡単にできねえよ!( ゚д゚ )と言いたい。
既に存在する機能のチューニングレベルならまだしも、まだ存在しない機能で何をするのかも決まっていない状態でこの依頼が飛んで来るから困るのです。
見積もりをするには、様々な前提を置く必要があります。
どういう戦略での案件なのか、最低限必要な機能は何なのか、外部システムは関わるのか、QCDSで優先度が高いものは何か…
その前提を決めることなく「ざっくりでいいから」と言われても、ざっくりすら出しようがないのです。結局見積もりという名の下に前提を整理するところから始めないといけないので、エンジニアやリーダーの貴重な時間がそこに奪われていくのです。もちろんお金は払われません。
完全に推測ですが、長らくSIerに課されてきた「相見積もり」という悪しき習慣が「見積もり=無料」という価値観を蔓延させたのではないかと思っています。
そして「ざっくりでいい」と言っておきながら、バッファを積んで多めに見積もったり実態とズレてたりすると文句を言われ「もっと削れ」という無慈悲な指示が飛んできます。こちとら前提がわからないから悲観的に出しているのに。
さらに最も恐ろしいのは、その理不尽に削られた「ざっくり見積もり」が一人歩きし、我々の知らないところでプロジェクトの前提としてコンセンサスを取られることです。その「ざっくり見積もり」を元に予算やスケジュールが決まってしまうのです。その結果「こういう見積もり出したんだからできるよね?」の悪魔の一言が。泣く泣くプロジェクトに取り掛かるも、要件定義で前提を固めていくと全然見積もり通りにいかないことがわかり大炎上…
見事にデスマーチの完成です。
アメリカでPMとして活躍され、最近UdemyにPM講座を開かれた曽根原さん(@Haruki_Sonehara)にも共感いただきました。
この「ざっくりでいいから見積もり出してよ問題」における被害を減らすためには安請け合いしないことと、「ざっくり見積もり」はあくまでざっくりであり合意形成に使用してはいけないとアピールすることが求められます。
そこで後者のアピールに役立つアイテムを曽根原さんに教えてもらいました。
というわけで見積もりを出すマネージャーやリーダー、エンジニアの皆さん。
「ざっくり見積もり」には"SWAG"スタンプをつけましょう!
こういう感じでざっくり見積もりにはスタンプをつけておきましょう。(PDFにしないと意味ないですが)
これによって少しでもデスマーチが減ることを祈ります。
※余談※
"SWAG"でググると『「やばい」や「イケてる」としてセンスのいいもののスラング』という結果が出ます。決してそっちの意味ではないこともアピールしてください。「イケてる見積もり」ってなんだw
※この記事は自分のnote記事からの転載です。