一部の腸の無い生物を除き、動物は腸で栄養を吸収するために様々な進化を遂げてきたという説があります。
腸の調子が体の調子を整えると言われるほど、人体において重要な臓器です。
今回はそんな腸についてのお話です。
腸を健康な状態に保つためには、より個別的なアプローチが必要になるかもしれません。
参考記事)
・The Human Digestive System Varies Way More Than We Realize(2023.5.3)
参考研究)
・Hidden diversity: comparative functional morphology of humans and other species(2023.4.24)
最新の研究によると、人間の消化器系は私たちが考えるよりもはるかに多様であり、健康な人間の間でも、腸の構造に大きな違いがあることが分かっています。
これには個人差だけではなく、男性と女性の違いなどによってさらに大きな差が生まれると研究者は報告しています。
注目すべき例では、女性は男性よりも長い小腸を持つ傾向があり、その長さは平均で30.7cmあるとされています。
ノースカロライナ州立大学の生物学者Amanda Hale氏はこう述べています。
「小腸が長くなると、食事から栄養素を吸収するのに役立ちます。これにより、女性がストレスの期間中、より良い栄養状態で生き残ることができるのではないかとと考えられます」
この研究は、腸の違いを明らかにし、健康な人間の消化器系は多くの専門家が評価していたよりもはるかに変動性があることを示唆しています。
一世紀以上前に、人間の腸の相対的な長さにばらつきがあることを発見した研究がありましたが、その事実はほとんど無視されてきたとHale氏は言っています。
例えば盲腸は、大腸と小腸の結びつきにある機関です。
ある人はわずか数センチの長さの盲腸を持ち、またある人は小銭入れサイズの盲腸を持っていることもあります。
その他にも、多くの消化器官で同様の変動性が見つかりました。
研究者たちはこれが、ヘルスケアに大きな影響を与えると指摘し、一般的な人間の解剖学的構造に焦点を当てるのではなく、胃腸系の個人差を認識することが重要であることを強調しています。
この研究から得られる重要なポイントの一つは、消化器系の変動の幅について学ぶ必要があるということです。
共著者のミネソタ大学の生物学者Roxanne Larsen氏はこう述べています。
「学生の場合、平均的な解剖学についてのみ学び、それは彼らが人間の多様性の範囲に精通していないことを意味しています。解剖学変異を理解することは、将来医師が個別化された医療の重要性を理解する上で重要な役割を果たすことができます」
他の動物と比べると、人間は特に腸の長さに個人差があることが指摘されています。
これは標準化された食事ではなく、文化や地域による食べ物の違いが関係しているものと考えられています。
これらの発見が、人体の健康にどのような影響があるのかについてはさらなる研究が必要と彼らは付け加えています。
・同じ種類でも動物消化器官の長さはそれぞれ違う
・特に人間では腸の長さが違う
・栄養を吸収する最も重要な器官が違うということは、健康に必要な要素も個人差がある
・一般的に画一された健康食品なども、人によって効果が違うことが考えられる
厚生労働省や各研究機関から、人が一日に必要な栄養素が発表されていたりします。
一方、様々な研究を見ていると、「この量が絶対」という基準はなく、結局は“人それぞれ”という見解が多く見受けられます。
栄養を吸収する消化器官の長さが人によって変わるということは、そういった考えの裏付け的な要素にもなるため、人の健康にとって重要な発見だと感じます。