犬や猫などペットを飼っている家庭では、子どもの免疫力が高まる……なんてことを聞いたことはありませんか?
2015年米国医師会が発表した研究結果では、幼い頃(0〜1歳頃)から犬を飼っている家庭では、7歳になったときに喘息が発生する確率が13%低くなることが示唆されています。
今回テーマは日本で研究された、ペットとアレルギーに関するお話です。
犬以外のペットでも、免疫への耐性がつくかどうかについて調べられています。
参考研究)
・Pets Reduce Allergy Risk For Kids: Just Don't Get a Hamster(2023.4.2)
参考研究)
福島県立医科大学Okabe Hisao氏は、子供が生まれた時に、家でペットを飼っていた際の食物アレルギーの発症についての研究結果を発表しました。
これまでの研究では、家庭でペットと過ごすことが、アレルギー疾患の予防に効果的であることが示されており、いくつかの研究では、胎児の発育中、または、乳児期の初期に犬に暴露することが食物アレルギーに有益な影響を与えることを報告しています。(衛生仮説)
また、犬以外のペットによる食物アレルギーの関連性は未解決のままです。
今回の調査の対象となった幼児66,215人の内、およそ22%はまだ子宮内にいるうちから母親を通じてペットにさらされていました。
ペットでは屋内外の犬、猫、ハムスター、亀、鳥が含まれていました。
大学の研究チームは、この研究がペットにさらされることとアレルギーとの関連性を示す十分な証拠を提供していると考えています。
今回の研究結果から、屋内で猫や犬にさらされた子どもは、アレルギーを発症する可能性が大幅に低いことが判明しました。
犬と過ごした幼児は、卵、乳製品、ナッツへ耐性が、猫と過ごした幼児は、卵、小麦、大豆への耐性が見られました。
全体的な傾向としては、ペットを飼っている方が良いと考えられますが、家の外で飼っていた場合だったり飼うペットによって明らかなばらつきもありました。
特に自宅でハムスターを飼っていた人(子どもの0.9%)はナッツアレルギーを発症するリスクが有意に高い傾向にありました。
この研究は原因と結果を証明するのに十分ではありません。
調査結果は観察ではなく、アンケートの回答に基づいていることも注意するべき点です。
研究者は、「関係の性質については推測することしかできず、ペットと過ごすことが子どもの腸内微生物を変化させる可能性があること、動物から排出される物質などによって免疫力が高まる可能性など、多くの要因が考えられる」と述べています。
また、データによると、ペットを家で飼うことで、アレルギーと関連している皮膚の反応である、アトピー性皮膚炎を予防できることも示唆されています。
確実に調べるには、より大きなグループの人々に関するより多くのデータが必要になります。
私たちが知っていることは、アレルギーは年々増加しており、現在、先進国の10%以上の人々が影響を受けているということです。
これからは、なぜそういったことが起こっているのか、またその傾向をどのように逆転させるかについて理解する必要があります。
「食物アレルギーの発生をより正確に評価するには、経口食物(負荷)を使用した、さらなる研究が必要です」と研究者は述べています。
・幼児(母親の子宮内も含む)のときに室内でペットと過ごすことは、アレルギー耐性獲得にとても有益な効果を生む
・犬や猫など様々なペットで、良い効果が生まれる結果が見られるが、ハムスターにおいては、ナッツアレルギーの危険性が高まる結果が見られた
・明らかにアレルギー耐性獲得の結果が見られるが、アンケート回答による調査による点ということに注意が必要
ハムスターだとナッツアレルギーのリスクが増すというのも不思議な話ですね。
しかし、幼い頃のみならず母親の胎内にいる時から動物と一緒に過ごすことで、免疫が高まるというのも生物の不思議な側面が見えて面白いです。
一見、清潔にして人間が住みやすい環境を整えても、“清潔すぎる”ことは時には悪になるという人間の非合理さもまた興味深いです。