勉強の合間に運動をすると、脳が活性化され定着が良いとはどこかで聞いたことがある話です。
実際、運動をすることによって“やる気”や多幸感に関係する神経伝達物質のドーパミンが分泌され、その状態で勉強することで集中力がUPするとされています。
これはほんの一部の効果ではりますが、同様に運動と学習には少なからず関連性があることが示唆されています。
今回はそんな運動のメリットについての研究紹介です。
参考記事)
・Regular Exercise Is Linked to Larger Brain Volume in Memory And Learning Regions(2024/01/02)
参考研究)
・Exercise-Related Physical Activity Relates to Brain Volumes in 10,125 Individuals(2024/12/07)
定期的な運動は、健康上のメリットだけでなく、脳の特定の領域の大きさとも関係がある可能性が示唆されました。
ワシントン大学、プロビデンスセントジョンズヘルスセンターの太平洋神経科学研究所脳保健センター(PBHC)の研究者らは、ウォーキング、ランニング、スポーツなど定期的な運動を行う10,125人の被験者を対象に、磁気共鳴画像(MRI)脳スキャンを行い、関係性を分析しました。
分析では、特定の被験者はある領域で脳の容積が大きいことが分かりました。
これらの領域には、記憶の保存方法と処理に重要となる前頭葉と海馬が含まれていました。
また、この脳の活性化は、激しい運動や長時間の活動などを伴わない軽い運動をしている場合にも見られました。
PBHCの精神科医で神経科学者のデビッド・メリル氏は、「1日に4,000歩未満歩くなど、適度なレベルの身体活動でさえ脳の健康に良い影響を与える可能性があることが分かった」と述べています。
これは、一般的に頻繁に推奨される一日10,000歩の基準よりもはるかに少なく、多くの人が達成可能な数値です。
脳の容量が直接その人の能力や機能の向上を示すものではありませんが、認知能力の変化に対する指標と見なされることがよくあります。
この研究は、運動による脳の白質の増加が人々にどのように現れるかという点では詳しく説明していません。
しかし、白質が増加した領域は記憶や学習能力と関連性があります。
運動が体内(脳を含む)の血流を改善し、ニューロンを健康に保つためのタンパク質のレベルを増加させるなど、神経機能を高めることを示唆した研究が数多くあることも事実です。
そしてこれは、老化などを原因とする神経変性疾患の発症リスクが高まるに連れてより重要になります。
過去の研究では、脳の容積が大きい場合、アルツハイマー病などの認知機能低下を遅らせるのに役立つ可能性があると考えられています。
直接的な原因と結果を証明するのに十分ではありませんが、相関性は高いものと言えます。
ワシントン大学の放射線科医サイラス・ラジ氏は、「運動は認知症のリスクを下げるだけでなく、年齢を重ねるにつれて重要な脳の大きさを維持するのにも役立つ」と述べています。
研究の詳細は、Journal of Alzheimer's Disease.にて確認することができます。