携帯電話をはじめとするデジタル技術の進歩によって、今ではあらゆる人の手の中にPCがある時代となりました。
それに伴い、ニュースサイトや娯楽動画など、時間の隙間を埋めるツールも沢山増えています。
情報過多とも呼べる時代ですが、この情報の多さはときに、負の側面も孕んでいる危険性があります。
今回はそんなデジタル化した社会で生きる人々の注意力に言及した記事です。
アメリカの国際ニュースサイト“THE CONVESATION”に掲載された記事からまとめていきます。
参考記事)
仕事やプライベート問わずスマホから流れてくる通知や外を歩くと目に入るニュースなど、デジタル化された世界は情報には触れています。
そのため私たちは、毎日信じられないほどの量の情報に直面し、脳は意思決定のためにその処理をしなければなりません。
研究者の間では、こういった習慣は、多くの情報に触れることができる反面、一つのタスクに長時間集中し続けることが苦手になってきているのではないかと考えられています。
人間の識字率と読解力を幅広く研究してきた、カリフォルニア大学のMaryanne Wolf氏は、デジタル化した社会においても、本を読むことが重要だと主張しています。
彼女の著書「Proust and the Squid」では、読む力が脳にどのように影響を与えたのかの歴史を紹介しており、学習、思考、識別能力を高めるために、読書は必要不可欠であると述べています。
また、読書をすることで、脳の発達と共に背景知識や論理的思考を身につけ、何が真実で何がそうではないかや、欠如した真実を推測する能力を備えることができると主張しています。
Wolf氏は、デバイスを通した画面でのやり取りの量や情報の高速化は、私たちからそういった能力を奪ってしまったことを懸念しています。
推論、共感、批判的分析に注意を向けることは忍耐力が必要です。
デジタルなアプリやプラットフォームのデザインによる注意力の引き付けを研究するKau Lukoff氏(サンタ・クララ大学助教授)はこう述べています。
「画面の向こう側には何千人ものエンジニア、開発者、デザイナーがいて、ユーザーの注意を惹き、サイトにより多くの時間を費やし、クリックしてもらおうと意図的にサービスを設計しています。無意識に広告をクリックしたりすることもあり、ユーザーは自分に何が起こっているのかを理解することさえ難しい場合がありますが、これは偶然ではありません」
こういったことに注意力を奪われない対応策として、コンテンツをすばやく選択する方法を学ぶことが挙げられます。
情報をスキミングし、自分に必要かどうかを考えるのです。
こういった情報の取捨選択をするためのトレーニングとし読書が必要だとされています。
逆に、簡単に取得できる情報に慣れてしまうと、読書による知的、精神的、認知的利益を享受するために必要な注意力が損なわれてしまうため注意が必要となります。
また、人間とコンピューターの相互作用の心理学を研究しているDaniel Le Roux氏(ステレンボッシュ大学上級講師)は、オンライン、オフライン問わず、複数の情報に晒される時、情報が切り替わる度に脳はエネルギーを消費すると述べています。
これをは“切り替えコスト”と呼ばれ、重要なタスクのパフォーマンスを低下させてしまいます。
運転中にスマートフォンが禁止されているのも、運転という注意が必要なタスクのパフォーマンスを低下させないためです。
こういった注意力を養うためにも、デジタルな情報ではなく、読書が必要であると結論付けられます。
・デジタルに慣れすぎると読む力が低下する
・読む力が低下すると、論理的思考や真実を推測する力が損なわれる
・次々に流れてくる情報に慣れることで、重要な仕事に対して能力を発揮できなくなる
・読書は深く考える力を身につけるために良い習慣と言える
今ではあらゆる情報が、手のひらの上でどこでも手に入る時代です。
情報を自分から取りにいこうとしなくても、YouTubeの動画やショートムービーで勝手に流れてくるようにもなっています。
もちろんこういった技術はとても便利で、自分も毎日使っています。
一方、自分も含め、こういったものの影響によって思考力が低下しているのではないかと感じる部分はとてもあります。
本を読んでいても、事実かどうか曖昧な部分は自分で考える前にすぐ検索したりもしますし、暇な時はYouTubeのかけ流しを行ったりします。
多くの子どもの勉強を見てきた経験上、会話が成り立ったり賢い考え方ができる子は、家庭で親が紙の本を読んでいたり、子どもが自発的に本を読む環境を作っていたりします。
逆に、集中力がなかったり目標とする結果が出なかったりする家庭は、ルールを決めずにスマホを与えていたりといった場合がほとんどです。
もし、注意力や思考力を高めたいならば、大人であってもある程度ルールを決めて、デジタルデバイスに向き合うようにした方がいいのかもしれませんね。