うつ病は、楽しみの欠如や悲観的な感情を引き起こし、活動への嫌悪を特徴とする気分障害です。
厚生労働省が3年ごとに行っている調査では、2017年あたりから1,200万人を越えたと報告されています。
自殺未遂者の聞き取りから、うつ病を原因とする自殺者も増加している傾向にあります。
今回の記事は、そんなうつ病治療の一環として“運動”がとても効果的であるという研究結果についてのお話です。
2023年3月1日にScience Newsに掲載された記事を参考にまとめていきます。
参考研究)
Huge New Study Shows Why Exercise Should Be The First Choice in Treating Depression
参考研究)
南オーストラリア大学の研究者は、「運動はうつ病やその他の一般的な精神健康状態の大きな治療法であるべき」と主張しています。
彼らの研究では、12週間またはそれより短い期間生活の中に運動を取り入れることが、メンタルヘルスの症状を最も軽減することが分かりました。
それまでの研究では、運動をすることは、うつ病などの心理的苦痛に苦しんでいる患者に対して、精神療法や薬物治療と同じ程度の恩恵を受けるだろうということがわかっています。
「しかし、それらの証拠があるにも関わらず、第一の治療法として広く選択されているわけではありません」とUniSAの臨床運動生理学者Ben Singh氏は述べています。
これまで行なわれてきた研究では、研究ごとに運動の種類、強度、母集団などのデータがバラバラなため、運動によるメンタルヘルス障害の治療にどう役立つかを示す強い根拠とは言えませんでした。
Singh氏は、これらの種類の身体活動が、うつ病や精神的苦痛にどのように影響するかを評価するため、アンブレラレビューと呼ばれる広範囲なタイプの研究を実施しました。
アンブレラレビューとは、レビューの統合とも呼ばれ、研究から得たメタ分析などのデータをさらに比較検討して科学的根拠を示す手法のひとつです。
研究チームは12の電子データベースから、2020年より以前に公開された的確な研究を全て抽出しました。
全体として、128,119人以上の参加者による1039件の試験からレビューを分析しました。
その結果、うつ病や不安障害、精神的苦痛の症状に対するトークセラピーや投薬より、運動によるプログラムの方が1.5倍ほど効果的であることが分かりました。
ウォーキング、筋力トレーニング、ヨガ、有酸素運動など、あらゆる種類の身体活動が有益であることも分かりました。
中でもヨガや心身のエクササイズは、不安を最も軽減するのに役立ちました。
スクワットや腕立て伏せ、ダンベルなどの強度の高い運動はうつ病に対して最も効果的なことが分かりました。
しかし、これら強度の高い運動は、長時間やるよりも短時間のほうがより効果的であり、これは長い運動プログラムに固執することが負担になっている可能性があることが原因と考えられています。
また、注意点としては、これらの参考となった研究は、軽度から中程度のうつ病患者が中心であり、不安障害や精神的苦痛に関するレビューが少ないことが挙げられます。
今後メンタルヘルスの様々な分野で研究が行われていけば、より確固たる結論につながると考えられます。
この研究から、投薬やカウンセリングの他に、運動も重要な治療法となるということが期待されています。
・これまで運動は、薬物療法やカウンセリングと同程度の効果があるとされてきた
・アンブレラレビューによって、運動の効果はそれらの療法より1.5倍ほど効果的であることが示された
・運動をすることがうつ病や不安障害の治療に先立つケアの一つとして期待される
運動をすると気分がスッキリするということは、誰しも一度は経験があることだと思います。
今回の研究から、運動は精神の健全さを保つためにもかなり重要な役割を担っていたことが分かります。
ダイエットや筋力トレーニングだけでなく、自分の心を上向かせるためにも、日々の中に運動を取り入れていくのはとても良いということに気付かされました。
そんな体を動かすことのモチベーションが上がる話題でした!