糖尿病やがんなど、砂糖が及ぼす害が知られるようになるにつれ、世界的にも砂糖の摂取量が減っていることが分かってきました。
しかし、甘いものへの依存性が失われることはなく、代わりとして人工甘味料を摂取するというケースが増えてきたことも事実です。
アスパルテームやアセスルファムカリウムなどを代表とする人工甘味料ですが、日本においても、カロリーの消費を抑制したり、血糖値を上昇させないといった効果を謳い文句に幅広い製品に使用されています。
場合によっては、肥満や糖尿病の予防や治療に有効として、そのメリットが強調されていることもあります。(大阪健康安全基盤研究所より)
今回のテーマは、そんな人工甘味料を使用した“健康的”と言われているソフトドリンクについてです。
参考記事)
・Here's What 'Diet' Soft Drink Could Be Doing to Your Health in The Long Term(2024/07/29)
・Artificial sweeteners as a sugar substitute: Are they really safe?(2016/05)
・WHO advises not to use non-sugar sweeteners for weight control in newly released guideline(2023/05/15)
参考研究)
・Association Between Soft Drink Consumption and Mortality in 10 European Countries(2019/11/03)
・Sucralose Promotes Food Intake through NPY and a Neuronal Fasting Response(2016/06)
世界保健機関(WHO)は、「遊離糖の1日の摂取量を総エネルギー摂取量の10%未満に減らすべし」としています。
遊離糖は、果汁100%ジュースに含まれる糖分やケーキなどに含まれる砂糖、スポーツドリンクやハチミツなどの食品から離れた状態の糖を言います。
口に入れてからすぐに吸収されはじめるため、血糖値の急な上昇やそれに伴う体の炎症によって様々な健康被害が現れます。
遊離糖を1日あたり5%以下、約25グラム(小さじ6杯)以下に減らすと、糖尿病や生活習慣病の予防につながるとされています。
しかし、ほとんどのソフトドリンクには異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)を代表とする遊離糖が含まれており、オリジナルのコカ・コーラの(通常335ミリリットル)の缶には、少なくとも小さじ7杯の砂糖が含まれています。
一方、ノンシュガーやノンカロリーといったダイエットソフトドリンクには砂糖が含まれていません。
砂糖の代わりに、アスパルテームやスクラロースなどの人工甘味料、もしくはステビアなどの植物由来の天然甘味料が入ってる場合があります。
ダイエットソフトドリンク(ノンカロリーやノンシュガーの飲み物など)は、特に砂糖の摂取量を減らしたり、体重を管理したい人への健康的な代替品といった名目で販売されています。
しかし、ほとんどの人が砂糖の摂取量を減らすことの利点を理解しているにもかかわらず、ダイエットドリンクが健康にどのような影響を与えるかについてはあまり認識していないことがよくあります。
ソフトドリンクに含まれる人工甘味料は、米国やオーストラリアを含む食品当局によって摂取しても安全であると考えられています。
しかし、一部の研究では、日常的な摂取による長期的なリスクについて懸念を表明しています。
ダイエットソフトドリンクを普段から飲む人は、ダイエットソフトドリンクを飲まない人と比べ、糖尿病や心臓病など特定の病気を発症する可能性が高くなります。
この関連性は、飲酒や喫煙、運動など他の食事やライフスタイルの要因を考慮した上でも有効でした。
2023年、WHOは、ダイエットソフトドリンクに使用される主な甘味料であるアスパルテームが「ヒトに対して発がん性を示す可能性がある」と発表しました。
この報告の中では、「現在、アスパルテームががんのリスクを高める可能性があるかを確信する十分な科学的証拠がない」と指摘し、時々、消費する分には問題はないとしています。
“ダイエット”という言葉にもかかわらず、ダイエットソフトドリンクは体重減少に有効とは言えません。
2022年、WHOは、人工甘味料の摂取が体重管理に有益であるかどうかについて、体系的なレビューを実施しました。
ランダム化比較試験では、人工甘味料を使用した人々は、体重減少と言える結果をわずかに多く示唆しました。
しかし、観察研究(介入が行われず、参加者が時間の経過によって監視される)では、大量の人工甘味料を消費する人は、肥満になる可能性が76%増加する傾向があることが判明しました。
この結果からWHOは、人工甘味料を体重管理に使用すべきではないとしています。
動物を対象とした研究では、高レベルの人工甘味料を消費すると脳はエネルギー不足の反応を示し、結果的により多くの食事につながる可能性があることが示唆されています。
これが人間に起こっている証拠はまだ証明されていませんが、体重増加の傾向を踏まえると何らかの相関関係がある可能性は否定できません。
古くからの研究においても、人工甘味料が消化器系の内膜を刺激し、炎症を引き起こし、下痢、便秘、膨満感、および過敏性腸症候群に関連する他の症状のリスクを高める可能性が示唆されています。
もちろんダイエットソフトドリンクも、炎症に基づく肝疾患と関連性が指摘されています。
ダイエットソフトドリンクの消費は、歯の浸食にも関連しています。
結局のところ、「安全とは言えない」というのが結論になりますが、確実に言えるのは、長期的な人工甘味料の摂取が人体に与える良い影響はない、もしくは極めて少ないということです。
・人工甘味料は一般的に安全とされているが、長期的な摂取は害をもたらす可能性が高い
・ダイエットソフトドリンクを普段から飲む人は、糖尿病や心臓病などの病気の発症率が高い
・人工甘味料は短期的にはわずかに体重減少をもたらすが、長期的には体重増加につながる
・動物実験では脳のカロリー不足によって、より多くの食べ物を摂取する傾向がある