節足動物の起源はおよそ5億年前カンブリア紀からとされています。
クモも幾度の絶滅を経て、現在まで進化してきた節足動物の一つです。
今回紹介するのは、そんなクモの新種が発見された記事についての話。
THE TIMES OF ISRAELに2023年2月16日付で掲載された“7 new spider species found in the depths of Israeli caves”をを紹介していきます。
ヘブライ大学の調査によると、イスラエルの洞窟の奥深くで、未だ知られていなかった7種のクモを発見したと報告されています。
テゲナリアに属するこれらのクモは、遺伝的な差異、生殖器の特徴、そして目の発達度合によって新種と特定されました。
今回発見されたクモは、盲目もしくは半盲目であり、種としては洞窟の入口付近にいるようなクモよりも南ヨーロッパに生息するクモに近いことがわかりました。
ヘブライ大学はこう声明を出しています。
「この発見は、洞窟での種の分化や進化を知るのみならず、イスラエルで起こった歴史的、地理的、気候的プロセスを明らかにするための科学的な発見である」
洞窟の奥深くに生息する蜘蛛の多くは、その環境に適応する過程で失明や色素の消失、代わりにその他の感覚器官が発達するなどの特殊な変化が見られます。
哺乳類のクジラやイルカと魚類が同じように泳ぐことに特化するように、種が違う生物でも同じ環境下だと似たような進化をたどることを収斂(しゅうれん)進化といいます。
この環境の適応は、新たな種の生物を生み出すきっかけになることが多いです。
研究者は洞窟内で捕獲されたクモからDNAを抽出し、これまで知られている自然界のクモと照らし合わせました。
そのうち5種は洞窟固有のもので、他の2種はいくつかの洞窟で発見されたものと同一のものと判明しました。
この研究の驚くべき発見の一つは、洞窟の周辺に生息している種より、南ヨーロッパの地中海地域の洞窟の種類に近いことを示していたことです。
この発見は、生物地理学的な歴史を示唆していると研究では述べています。
研究者たちは、洞窟に生息する前に絶滅した先祖の種類がいたと考え、気候の変動によって生物がどのように分布、進化していったのかを研究する良い材料になるとされています。
また「私たちはイスラエルのユニークな性質を保護し、将来のためにこの生物が生まれたシステムを調査していく必要がある」と述べています。