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余分なアンモニアが腫瘍の増殖に関与──たんぱく質摂取量減と肝がんの進行遅延

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  • 2026/03/10 15:02

肝臓がんは世界的に死亡率が高いがんの一つですが、新しい研究によって食事中のたんぱく質量を減らすだけで腫瘍の成長を遅らせられる可能性が示されました。

  

研究では、肝臓がアンモニアを適切に処理できない状態にある場合、体内に蓄積したアンモニアが腫瘍の増殖を助ける栄養源として利用されることが明らかになりました。

 

そして、たんぱく質摂取量を減らすことでアンモニアの発生を抑え、結果として肝腫瘍の成長を抑制できる可能性が示されています。

  

この研究はアメリカのラトガース大学の研究チームによって主導され、学術誌「Science Advances」に掲載されたものです。

  

研究結果は主にマウス実験に基づくものであり、人間に同じ効果が当てはまるかどうかについては今後の研究が必要とされています。

 

以下に研究の内容をまとめます。

 

参考記事)

Eating less protein may slow liver cancer growth, study finds(2026/03/07)

 

参考研究)

Impaired nitrogenous waste clearance promotes hepatocellular carcinoma(2026/01/09)

 

 

肝がんは依然として死亡率の高いがん

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肝臓がんはアメリカにおいて最も致死率の高い原発がんの一つとされています。

 

アメリカがん協会(American Cancer Society: ACS)の推計によれば、2025年には約42,240人が新たに肝がんと診断され、約30,090人ががんで死亡すると予測されています。

 

中でも肝臓がんの5年生存率は約22%とされており、依然として予後が厳しい疾患です。

 

さらに問題なのは、肝臓がんのリスクを高める肝疾患が非常に広く存在していることです。

 

アメリカでは成人の約4人に1人が脂肪肝を抱えていると推定されています。

 

脂肪肝は放置すると肝炎や肝硬変へ進行する可能性があり、最終的に肝がん発症のリスクを大きく高めることが知られています。

 

これらに加えて、以下の要因も肝がんの発症リスクを高めます。

• ウイルス性肝炎

• 長期的なアルコール多飲

• 肝硬変

 

研究の上級著者であるWei-Xing Zong氏(ラトガース大学アーネスト・マリオ薬学部教授)は、肝臓の機能障害がある人にとって食事内容が重要な意味を持つ可能性があると指摘しています。

 

Wei-Xing Zong氏は次のように述べています。

 

もし肝臓の病気や損傷によって正常な機能が妨げられている場合、肝がんのリスクを下げるためにたんぱく質摂取量を減らすことを真剣に検討すべきかもしれない。

 

 

たんぱく質代謝で生じる有毒物質「アンモニア」

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アンモニアの構造式

  

私たちの体は、食事から摂取したたんぱく質を分解する過程で窒素を生み出します。

 

この窒素は代謝される際にアンモニアという物質へ変換されます。

 

アンモニアは神経系や体にとって強い毒性を持つ物質です。

 

通常、健康な体では次のような仕組みで処理されます。

1. たんぱく質が分解され窒素が発生

2. 窒素がアンモニアへ変換

3. 肝臓がアンモニアを尿素に変換

4. 尿素が尿として体外へ排出

 

つまり、肝臓はアンモニアを解毒する重要な役割を担っている臓器です。

 

しかし、肝臓の機能が低下すると、この処理能力が低下します。その結果、アンモニアが体内に蓄積してしまう可能性があります。

 

Wei-Xing Zong氏は次のように説明しています。

 

肝がん患者では、アンモニアを処理する肝臓の機構が損なわれていることが多いという臨床観察は、数十年前から知られていた。

  

しかし長年、研究者の間では重要な疑問が残っていました。

 

それは、アンモニアの蓄積はがんの結果なのか、それともがんの成長を促す原因なのかという問題です。

 

 

アンモニアが腫瘍の成長を促すことを確認

この疑問を解明するため、研究チームはマウスを用いた実験を行いました。

 

まず研究者たちは、マウスに肝腫瘍を発生させました。

 

この段階では、アンモニアを処理する肝臓の機能は正常に保たれていました。

 

次に研究者たちは遺伝子編集技術を使い、一部のマウスでアンモニア処理に関わる重要な酵素を停止させました。

 

その結果、実験は次の2つのグループに分かれました。

• アンモニア処理能力が正常なマウス

• アンモニア処理能力が低下したマウス

  

研究者たちは、この2つのグループの腫瘍の成長速度や生存期間を比較しました。

  

すると、アンモニアを処理できないマウスでは体内のアンモニア濃度が高まり、腫瘍がより大きく成長し、死亡も早かったという結果が示されました。 

  

 

アンモニアは腫瘍の「栄養源」になっていた

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研究チームはさらに詳しく調べ、体内に蓄積したアンモニアがどのように利用されているのかを分析しました。

 

その結果、驚くべきことが明らかになりました。

 

余分なアンモニアは、がん細胞の増殖に必要な分子へと再利用されていたのです。

 

具体的には、アンモニアは以下の物質の合成に使われていました。

• アミノ酸

• ヌクレオチド(DNAやRNAの材料)

 

これらは細胞が増殖するために欠かせない分子です。

 

つまり、アンモニアは単なる毒ではなく、がん細胞にとっては増殖を助ける資源になり得ることが示されたのです。

 

Wei-Xing Zong氏は次のように述べています。

 

アンモニアはアミノ酸やヌクレオチドへ取り込まれます。これらは腫瘍細胞の成長に不可欠な物質である。

 

 

低たんぱく質食で腫瘍成長が大幅に減少

この代謝メカニズムが分かった後、研究チームは一つのシンプルな仮説を立てました。

 

たんぱく質摂取量を減らせば、アンモニアの発生も減るのではないかというものです。

 

そこで研究者たちは、マウスに与える食事のたんぱく質量を減らす実験を行いました。

 

結果は非常に顕著でした。

 

低たんぱく質食を与えられたマウスでは、肝腫瘍の成長が大幅に遅くなり、生存期間も大きく延びたのです。

 

この結果は、食事によって腫瘍の代謝環境を変えられる可能性を示しています。

 

 

健康な人には必ずしも当てはまらない可能性

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ただし研究者たちは、この結果を一般の人すべてに当てはめるべきではないと強調しています。

 

健康な人の場合、肝臓はアンモニアを効率よく尿素に変換できます。

 

そのため、通常の高たんぱく食が問題になる可能性は低いと考えられています。

 

今回の研究が特に関係する可能性があるのは、次のような人です。

• 肝疾患を抱えている人

• 肝硬変の患者

• 肝機能が低下している人

• 長期にわたって高タンパクの食事を続けている人

  

こうした場合には、アンモニアの処理能力が低下している可能性があるためです。

 

とは言え、研究者たちは、自己判断でたんぱく質摂取量を減らすべきではないとも警告しています。

  

がん治療の現場では、患者の体力や筋肉量を維持するためにむしろ高たんぱく食が推奨される場合もあります。

 

そのため、適切な食事戦略は患者ごとに異なる可能性があります。

 

Wei-Xing Zong氏は次のように述べています。

  

「アンモニアを排出するのに苦労している患者にとっては、たんぱく質摂取量を減らすことがアンモニアレベルを下げる最も簡単な方法かもしれない。」

  

ただし、この研究は主にマウス実験であり、人間に同じ効果があるかどうかについてはまだ確定していません

  

したがって、臨床的な結論を出すには今後の研究が必要とされています。

  

 

まとめ

・ラトガース大学の研究で、低たんぱく質食が肝腫瘍の成長を遅らせる可能性がマウス実験で示された

・肝臓がアンモニアを処理できない場合、アンモニアががん細胞の増殖に利用されることが確認された

・ただし人間で同じ効果があるかは未確定であり、今後の研究に期待が持たれる

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