「科学的に……」と言われるだけで、不思議と信憑性が増していく、そんな経験ありませんか?
実際に、仮説と検証を重ねたデータは、“誰かが言っていた”という曖昧な根拠よりも信頼できるものとされています。
しかし、この科学的な根拠を信頼するかしないかは、実験の内容や結果よりも、その人の考え方によっても大きく左右されるようで。
今回はそんな科学についての考え方の研究を紹介していきます。
参考記事)
・Study Finds a Key Way to Build Trust in Science – And It's Not Education(2023/07/24)
参考研究)
科学的に証明した事実を認知させたり信用させることは、科学の発達を迎えた現代では、大きな課題です。
スロベニア マリボル大学の研究者らは、科学に対する国民の信頼についての研究結果を発表しました。
その結果、科学に対する信頼を向上させる戦略の一つとして、神話などの迷信に基づくものが有効であることが分かりました。
アメリカの705人を対象とした新しい調査によると、かつて“情報不足モデル”が示したように、教育は科学に対する一般的な理解を与えないことが示唆されています。
マリボル大学の研究者であるNejc Plohl氏とBojan Musil氏は、「科学への信頼が、科学的プロセスそのものへの理解を深めることに大きく影響しているのは事実だろうが、教育は科学の特定の分野での信頼を決定する役割を果たすだけかもしれない」と主張しています。
この調査結果は、リスクと科学コミュニケーションを研究している人々が数十年来指摘してきたように、人々に科学的事実を示すだけでは科学的なプロセスを信頼させるには不十分であることを示唆しています。
一方、新しい調査結果では科学への信頼のより強い因子は、政治的保守性、宗教性、陰謀思想、開放性であることも示されています。
また、学歴と科学的な事実を信頼するかどうかは関連性がありませんでした。
例えばある研究では、知的謙虚さをあまり示さない人ほど反ワクチンの態度を取りやすいことを発見しました。
知的謙虚さとは、自分の得た知識や判断が妥当ではないかもしれないという自分の知性に対する謙虚な姿勢のことです。
反ワクチンの人とは逆に、より知的謙虚さを示す人はワクチン接種を受け入れている場合が多いことが分かりました。
Plohl氏とMusil氏は、「科学的な主張は、個人が持っている信念や期待に反することがあるので、それに代わる証拠に直面した時に自分の意見を変えられるかどうかは、個人と科学界との信頼関係を築く上で極めて重要なことだろう」と述べています。
人間の思考における論理的な誤りや認知バイアスに切り込むことは、冷徹な事実を伝えることよりも重要かもしれません。
心理学者たちは2022年の論文にて、「科学的な情報は飲み込みにくいものであり、多くの場合、自分が間違っていたかもしれないという情報を受け入れるくらいなら、証拠を否定した方がマシだ」と考えるとしています。
科学的な視点を受け入れさせるには、こういった考えに対して無理矢理結果を突きつけるのではなく、そういう意見に共感する姿勢を取るべきだと結論付けています。
・保守性、宗教性、陰謀観念、開放性は科学への信頼との関連性を示した
・学歴は科学への信頼性との関係性は見られなかった
・自分の視点を修正することを受け入れている人は、科学に対する信頼性が高かった
ワクチン肯定派が良いのか反対派が良いのかは現実問題分かりません。
しかし、様々な意見があることは、そういった知見を発展させることにはいいことだと思います。
判断材料がたくさんあっても、知的謙虚さがなければそれを受け入れることができないというのもまた新しい視点でした。
一方の意見に凝り固まらず、相手の意見を理解するように努力するということが、科学的な理解を深める上で大切なことだということが分かりました。
実はあの陰謀論は本当なのかも、と考えながら世界を見てみるのも新たな気づきがあって良いのかもしれませんね。
それを証明するために、試行錯誤することが、新しい科学の発見になるかもしれません。