日本国内で大麻と聞くと“麻薬”のイメージが定着しており、その所持についても法律で禁止されているのは皆さんご存知の通り。
世界の限られた国ではその大麻に解禁の動きがあり、日本においても大麻の解禁を希望する声が囁かれています。
それ自体の良し悪しについては賛否が分かれるところですが、大麻を使用する(吸引する)ことに対する人体への影響に関しては、研究にて判明してきているようです。
今回のテーマとして取り上げていきます。
参考記事)
・Cannabis Use Linked to Epigenetic Changes, Study Reveals(2024/04/26)
参考研究)
・Genome-wide DNA methylation association study of recent and cumulative marijuana use in middle aged adults(2023/05/31)
ノースウェスタン大学による1,000人以上の成人を対象とした研究から、大麻の使用は人体のエピゲノムに変化を引き起こす可能性があることが主張されています。
エピゲノムは遺伝子のはたらきを決める情報の集まりのことです。
私たちのその他生物の身体の中のDNA(遺伝子)は、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の塩基配列によって役割が決められています。
このDNAの塩基配列を変えることなく遺伝子の働きを決めるものを“エピジェネティクス”と呼び、このエピジェネティクスの情報の集まりを“エピゲノム”と呼んでいます。
英国でクローン猫がつくられた際、同じDNAを持っているはずなのに毛の模様が異なったことは有名ですが、これは遺伝情報ではなくエピゲノムによって変化が生まれたからであるとされています。
双子が大人になるに連れて、少しずつ違いが生まれてくるのもこのためです。
ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部の予防医学博士で疫学者のリファン・ホウ氏、「我々は、マリファナの習慣的な使用と複数のエピジェネティックマーカーとの関連性を観察した」と研究について説明しています。
最早米国において大麻は一般的に使用されている物質であり、ホウ氏の報告では、およそ49%の人が少なくとも一度は大麻を試したことがあるとされています。
研究の対象となった約1,000人の成人(らは、以前にも20年間の大麻の使用について調査を求められた者たちであり、その間、15年目と20年目の時点で2度、血液サンプルを提供しました。
ホウ氏とチームが得た血液サンプルから、5年の間に大麻とDNAとの間にどのような関係があるのか(エピジェネティックの変化、特にDNAメチル化レベル)を分析しました。
DNAのメチル基の付加または除去は、近年最も研究されているエピジェネティック修飾の1つです。
環境やライフスタイルがこれらのメチル化の変化を引き起こす可能性があり、これは子の世代に受け継がれる可能性も示唆されています。
分析によると、15年間の血液サンプルから多数のDNAメチル化マーカーを発見し、そのうち22個は直近で使用した大麻に関連し、31個は習慣的な大麻使用に関連していました。
20年時点で採取された血液サンプルでは、132個のマーカーが直近で使用した大麻と関連し、16個は習慣的な大麻の使用に関連していることが特定されました。
興味深いことに、タバコとマリファナの使用の間に共通のエピジェネティックな規制が存在する可能性を示唆されました。
これらの生体マーカーは、細胞の増殖やホルモンシグナル伝達、感染症や統合失調症、双極性障害などの神経障害などに関連付けられていました。
ただしこの研究は、大麻がこれらの変化を直接引き起こしたり、健康上の問題を引き起こしたりすることを証明していないことに注意が必要です。
ノースウェスタン大学の疫学者ドリュー・ナニーニ氏は、「これらの関連性がさまざまな集団で一貫して観察されるかどうかを判断するには、追加の研究が必要である」と今後の研究の期待を述べています。
この研究の主張から考えられるのは、必要がないなら使用しなくても良いということではないでしょうか。
大麻の成分の一部は、てんかんの発作の緩和や抗炎症作用などが確認されています。
しかし、これは医療用として医師の監修の下で行われた場合です。
そうでない場合の使用は、体を壊す原因となりかねません。
特に日本においては所持自体が非合法のため、持っているだけでもリスクです。
触らぬ神にりなしということで、いくら効能があろうとも快楽目的で素人が手を出すようなものではないと感じます。
この研究はMolecular Psychiatryにて詳細を確認することができます。