プラスチックによる汚染が人間に与える影響が注目されるようになった昨今。
過去の研究でも、体内でも多くのマイクロ(ナノ)プラスチックが存在することが分かり、長期的に害をもたらす可能性が極めて高いことが明らかになってきました。
現在では、このリスクを回避するために多くの研究がなされ、沸騰やフィルターなどによってこの物質をある程度除去できることも発表されています。
今回は、そんなマイクロプラスチックを取り除く新しい方法について触れた記事です。
以下にまとめていきます。
参考記事)
・New Technique Removes More Than 98% of Nanoplastics From Water(2024/08/20)
参考研究)
・Nanoplastics Extraction from Water by Hydrophobic Deep Eutectic Solvents(2024/06/04)
ミズーリ大学の研究者は、マイクロプラスチックなどの汚染物質を水から取り除く方法を開発したと発表しました。
研究では、毒性の低い液体成分(溶媒)を使用し、淡水や塩水からナノスコピックポリスチレンビーズを約98%除去することができることを示しました。
研究者が設計した溶媒は、油のように水の表面に浮かんでおり、そこにプラスチックがたまるような仕組みになっています。
ピペットで液体の最上層を吸い上げたところ、汚染された水のサンプルからほぼすべてのナノプラスチックビーズを取り除くことができ、塩水では、ポリスチレン汚染物質の99.8%を抽出することができました。
また、この方法は費用対効果が高く、環境負荷も低いため「ナノプラスチック問題に対する持続可能な解決策」を示している、とミズーリ大学の研究者は主張しています。
今後の研究では、PFOSやPFOAなどの永久化学物質のような汚染物質の除去にも転用できる可能性があり、飲み物の安全を確保するための大きな一歩になり得ます。
過去の研究では、水道水やペットボトル飲料には、多数のプラスチック片、特にマイクロメートル以下のナノプラスチックが含まれていることがわかりました。
推定では、平均してボトル入り飲料水1リットルあたり約24万個のナノプラスチック粒子が存在します。
それらは、家庭や工場からの排水、タイヤの摩耗、農業による廃棄物、その他の廃水処理など様々な経路から自然の生態系に容易に浸入することができます。
今日、ナノプラスチックは、深海、北極、山の湖など含む世界中のあらゆる水域に見られます。
ミズーリ大学の化学者Piyuni Ishtaweera氏は、「ナノプラスチックは水生生態系を破壊し、食物連鎖に入り、野生生物と人間の両方にリスクをもたらす可能性がある」と述べています。
さらに、重金属や難燃剤などの有害な化学物質は、ナノプラスチックの表面に付着し、生物学的膜と相互作用する可能性があります。
このような小さな汚染物質を環境から取り除くことは簡単なことではありません。
最近では、中国(広州医科大学)の研究によって、水道水を沸騰させることで、ナノプラスチックやマイクロプラスチックを最大90%除去することができることを発見しました。
これは飲料水などの規模の小さなものから汚染物質を除去する簡単な方法と言えますが、規模の大きい汚染された水域では役に立ちません。
本研究で示した技術は、はるかに大きな規模でプラスチック汚染を解決できる可能性があります。
今後、この特殊な溶媒の特徴を明らかにし、リサイクルする方法を検討しながら持続可能で安全性の高い技術開発に取り組むとしています。
この研究は、ACS Applied Engineering Materialsにて詳細を確認することができます。
・世界のあらゆる地域でマイクロ(ナノ)プラスチックが発見されている
・ミズーリ大学の研究者は、特殊な溶液を用いてプラスチックを除去する方法を開発した
・今後、より安全性の高い水が手に入りやすくなることが期待される