行動心理学に“インキュベートの法則”というものがあります。
21日間(3週間)継続することで習慣化が可能という旨の法則です。
ビジネス系の書籍などで取り上げられることもあり、聞いたことが方もいるかもしれません。
しかし、本当に21日間続けることで習慣化することができるのでしょうか?
それはどんな習慣にも当てはまるものなのでしょうか?
今回はそんな習慣化についてのお話です。
参考記事)
・No, It Doesn't Take 21 Days to Form a New Habit. A New Study Shows Why(2023.4.19)
参考研究)
・How are habits formed: Modelling habit formation in the real world(2009.7.16)
・The Fresh Start Effect: Temporal Landmarks Motivate Aspirational Behavior(2014.6.23)
・Exercise habit formation in new gym members: a longitudinal study(2015.4.8)
1960年、形成外科医のマクスウェル・マルツは、新しい習慣を身に付けるには、わずか21日間しかかからないという旨の内容を記した本(サイコ・サイバネティクス)を出版しました。
この本は、マルツが患者が新しい顔に順応するのにかかった時間に基づいてまとめられており、非常に人気の本でした。
このことから21日間あれば、物事の習慣化ができるという誤った認識が広がったと考えられています。
カリフォルニア工科大学、シカゴ大学、ペンシルベニア大学の科学者たちは、ジムへ通う30,000人以上を対象とし、ジムへ通う習慣や手を洗う習慣に関してのデータを分析しました。
その結果、一部の習慣は習慣化されるまでに時間がかかることが分かりました。
ジムでのワークアウトに慣れるまでには、平均で約6ヶ月かかることが分かりました。
カリフォルニア工科大学の行動科学者のチームは、「ジムに行く習慣を見に付けるのには通常数ヶ月かかり、病院で手を洗う習慣を身につけるには、数週間かかり、習慣化には魔法の数字があるわけではないことが分かりました」と述べています。
この研究は、心理学研究室の領域外で、習慣化の速さを調べた数少ない研究の一つです。
2009年の習慣化に関する研究では、「朝食を食べる」など何らかの合図に結び付いた習慣を確立するのに、およそ2ヶ月かかることが分かりました。
しかし対象となった96人のボランティアの間で大きなばらつきがあり、その差は18日から254日と個人差がかなり影響することも分かっています。
ただし、これらの研究は人々がアンケートに記入して行動を報告することに依存していました。
このことから最新の研究では、機械学習を通してアンケートの記入漏れやジムに通う曜日の変数なども考慮した上で観察をしました。
それらを含めて習慣化に関係する点で判明したことは、“最後にジムに行ってから時間が経つにつれて、再びジムに戻ってくる可能性は低くなる”ことや、“時間帯は人々の習慣化にほとんど影響しなかった”ということです。
新しい運動習慣が定着するまでには約6ヶ月かかるのに対し、ジムへ通う医療従事者が手洗いを習慣化するのには、ほんの数週間でよいことも分かりました。
これらの事実から、新しい習慣の形成は人によるだけではなく、行動そのものやそれにかかる時間や労力、それを引き起こす合図に存することが示されています。
・週間化21日の法則は必ずしも当てはまらない
・運動は平均的に6ヶ月続けることで習慣化される
・週間化の日数は人それぞだが
・行動するための合図や習慣化のハードルを下げることで習慣化しやすくなる
自分も以前、21日間続ければ習慣化できるという話を聞いたことがあります。
しかし、本当にそれで習慣化できるかどうかが疑問だったという点もありました。
今回の研究は、言ってしまえば人それぞれという結論にはなってしまいますが、習慣化するための動機付けは、自分なりに工夫することができると思います。
ここから先は、自分の経験として、習慣化に役立ったことを例などを踏まえてまとめていきます。
例えば朝のランニングやウォーキングなどの時に、専用の服に着替え専用の靴を履き、決められた格好で外に出る。
などは、外に出るためのハードルが出てきてしまうため、習慣化しにくくなったりします。
ランニングの格好で寝ておく、ランニング中に聴くプレイリストを夜のうちに設定しておく、など起きてすぐに行動しやすいような準備をしておくと、朝のハードルが減って行動しやすくなったりもします。
勉強でも、ノートやワークを開くのがそもそもハードルなので、ノートは机の上に開いた状態にしておいて、鉛筆もその場に置いておく、などをすることで、勉強へのハードルが低くなり、取り組みやすくなったりもします。
パソコンの作業でも、キリの悪いところで終わらせるというのも手です。
文章の途中などで止めておけば、次の一文字から作業に取り組むことができ、やることが明確です。
逆にキリがよく止めてしまうと、次にやることから考えなければいけなかったりするため、取り掛かるためのハードルになったりもします。
習慣化の工夫は様々ですが、それをやらずに習慣化しようとすると、かなり効率が悪くなってしまうことも経験上分かっています。
自分の継続しているブログでよくやるのは、「次の記事を少し書いて止めておく」ということです。
書く当日になってテーマを考えることもしなくて済んだり、最もエネルギーの使う書き始めの文章考えなくて済むのでオススメです。
もし継続に困っている方がいたら、
・明日取り掛かれる準備をしておく
・ちょっとやっておく
・キリの悪いところで終わらせておく
などを意識すると、習慣化の手助けになるかもしれません。