
チューインガムを噛むことで、数百から数千ものマイクロプラスチックが唾液中に放出される可能性があることが、カリフォルニア大学による新たな研究で明らかになりました。
マイクロプラスチックとは、微細なプラスチック粒子のことです。
これらは空気、水、食品包装、さらにはお茶のティーバッグや野菜など、日常生活のあらゆるところで検出されています。
そして今回、新たにチューインガムもその放出源の一つであることが示されました。
研究によると、天然ガムと合成ガムの両方が、ほぼ同じ量のマイクロプラスチックを放出することが確認されました。
今すぐにガムを減らすべきというわけではありませんが、知識の一つとしてまとめていきます。
また、この研究はアメリカ化学会(ACS)の春季学会で発表された内容で、査読はこれからとされているものである点を念頭に読んでいただければと思います。
参考記事)
・Your Chewing Gum May Release Thousands of Microplastics in Your Mouth, Study Finds(2025/04/01)
参考研究)
・Chewing gum can shed microplastics into saliva, pilot study finds(2025/03/25)
・Micro- and nano-plastics in edible fruit and vegetables. The first diet risks assessment for the general population(2020/04/01)

この研究を主導したのはカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究チームです。
研究の目的は、チューインガムがマイクロプラスチックの新たな供給源となり得るかを検証することでした。
【実験の概要】
研究チームは、米国で販売されている10種類のチューインガム(5つの天然ガム、5つの合成ガム)を対象に調査を行いました。
具体的には、以下のような手順で実験が進められました。
1. 被験者は口内のマイクロプラスチック量を測定するために、実験前に3〜5回うがい
2. それぞれのガムを4分間咀嚼(一部の被験者は追加で20分間咀嚼)
3. 咀嚼後、唾液サンプルを採取し、特殊な処理(遠心分離やフィルター処理など)を実施
4. 顕微鏡を用いて、唾液中のマイクロプラスチックの量と大きさを測定
【実験結果 】
その結果、1グラムのガムから最大637個のマイクロプラスチックが放出されることが分かりました。
一般的なガム1粒の重さは2〜6グラムのため、1粒あたり平均100個以上のマイクロプラスチックを摂取する可能性があることになります。
さらに、ガムを噛み始めて最初の8分間で、94%のマイクロプラスチックが放出されることも判明しました。
それ以降は放出量が減少し、20分ほどでほぼ一定になります。
つまり、長時間噛み続けてもマイクロプラスチックの摂取量が大幅に増えるわけではないということです。
また、マイクロプラスチックのサイズは平均82マイクロメートルで、56%が50マイクロメートル以下の微細な粒子でした。
ただし、20マイクロメートル以下の小さな粒子は検出が難しく、そういった一部の粒子は見逃された可能性があります。
研究者は、年間160〜180個のガムを噛むと、約30,000個のマイクロプラスチックを摂取する計算になると推定しています。
チューインガムの弾力や粘着性を生み出す成分が、マイクロプラスチックの原因とされています。
• 天然ガム(主に植物由来):食品包装にも使われるポリオレフィンというポリマーが最大50%含まれていた
• 合成ガム:PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリスチレン、合成ゴム、ポリビニルアセテートなどが含まれていた
この研究の責任者であるSanjay Mohanty 博士(UCLA)は、「通常、食品中のマイクロプラスチック研究は、包装材や製造過程の汚染に焦点を当てている。しかし、ガムは違う。ガム自体がプラスチックと言える」と述べています。
現在、マイクロプラスチックは肺、血流、胎盤、脳、腸内など人体のあらゆる部分で発見されています。(Presence of microplastics in human stomachsより)
その影響についてはまだ研究段階ですが、以下のようなリスクが指摘されています。
• 炎症の引き金となる
• DNA損傷を引き起こす可能性がある
• 酸化ストレスや代謝異常を誘発する
• 心血管疾患のリスクを高める
• 腸内に蓄積すると炎症性腸疾患(IBD)を引き起こす可能性がある
• 生殖能力の低下や神経毒性、インスリン抵抗性の増加に関与する可能性がある
この研究に関わったLisa Patel 医師(スタンフォード大学)は、「マイクロプラスチックは、基本的に体内で炎症を引き起こし、健康な細胞を傷つける」と警鐘を鳴らしています。
研究者らは、「マイクロプラスチックは日常的に様々な製品から摂取されており、チューインガムが特に危険とは言えない」としながらも、「摂取を減らすのは良い考え」と述べています。
・チューインガムは、1粒あたり100個以上のマイクロプラスチックを放出する可能性がある
・天然ガムと合成ガムのどちらにもマイクロプラスチックが含まれている
・マイクロプラスチックは炎症や代謝異常、心血管疾患のリスクを高める可能性があるため、ガムの摂取量を減らすのが望ましい










