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筋肉量と内臓脂肪量が「脳の若さ」に影響するという新研究

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  • 2025/12/03 16:02

加齢とともに私たちの身体にはさまざまな変化が生じますが、その変化が脳の健康にも深く関わっていることが、近年の研究によって次第に明らかになってきています。

 

特に、筋肉量と内臓脂肪の量といった身体組成が、脳の見かけ年齢、すなわち「脳の生物学的年齢」に直接的に関連している可能性が示されつつあります。

 

シカゴ北米放射線学会の年次総会で発表された研究から、筋肉量が多く、内臓脂肪が少ない人ほど、MRI上で脳がより若々しく見えるという旨の内容が公表されました。

   

この研究では、「筋肉量が多く、隠れた腹部脂肪である内臓脂肪が少ない人は、より健康で若々しい脳を持つ傾向がある」と述べており、さらに「脳が若々しいということは、将来的なアルツハイマー病などの神経変性疾患のリスクが低いことを意味する」と強調されています。

 

以下に、年次総会で発表された内容をまとめます。

 

参考記事)

More Muscle, Less Belly Fat Slows Brain Aging(2025/11/24)

 

 

MRIが示す脳の“生物学的年齢”とは

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MRI(磁気共鳴画像法)は脳の構造を精密に描き出すことができ、その構造的特徴から“脳の年齢”を推定することが可能です。

 

研究では、こうした推定年齢を「脳の生物学的年齢」と定義し、被験者の身体組成との関係を詳細に検証しています。

 

身体のMRIでは、筋肉量を測定できるだけでなく、内臓脂肪や皮下脂肪など、体内の脂肪の種類や分布を精密に捉えることができます。

 

筋肉量は一般的に、加齢に伴う虚弱化や活動量の低下と関係する指標であり、身体の健康状態を示す重要なバイオマーカーとして扱われています。

 

研究チームは、筋肉量の減少と内臓脂肪の増加という一般的な加齢変化が、脳の老化にも直接関わっている可能性を示したと述べています。

 

この点については、従来から推測はされていたものの、MRIとAI解析による大規模データで検証された点に研究の新規性があります。

 

ただし、脳年齢の推定はあくまでAIによる構造的解析にもとづくものであり、実際の認知機能の状態と完全に一致するわけではない可能性があることにも留意が必要です。

 

 

研究の詳細:MRI解析・AIモデル・参加者プロファイル

Content image

 

この研究では、4つの研究施設から集められた 1,164人の健常成人(女性は52%)を対象に、全身MRIスキャンを実施しました。

 

参加者の平均年齢は約55歳であり、中年以降の健康状態が脳にどのように影響するかを検討するには適切な集団といえます。

 

使用されたT1強調画像では、脂肪は明るく、水分は暗く映し出される特性があり、筋肉や脂肪組織、脳の構造を高いコントラストで観察できます。

 

AIアルゴリズムは以下の情報を解析しました。

• 総筋肉量

• 内臓脂肪量(隠れ肥満の指標)

• 皮下脂肪量

• 脳の推定年齢(AIによる予測)

  

解析の結果、筋肉量が多く、内臓脂肪が少ない人ほど、AIが予測した脳年齢が若かったことが明らかになりました。

 

一方で、皮下脂肪については脳年齢との関連性が見られなかったと報告されています。

 

研究者は、「筋肉量が多い人ほど見かけ年齢が若い脳を持ち、逆に筋肉量に対して内臓脂肪が多い人ほど脳が年老いて見える傾向があった。皮下脂肪は脳年齢と関係がなかった」と説明しています。

 

この結果は、内臓脂肪が脳の健康に与える影響が大きいことを示唆しており、従来言われてきた“お腹まわりの脂肪が健康リスクを高める”という知見とも一致します

 

 

健康への示唆:筋肉を増やし、内臓脂肪を減らす重要性

研究が明らかにしたのは、日常生活で実践可能な健康戦略が脳の老化防止に寄与する可能性が高いという点です。

 

全身MRIとAIモデルを組み合わせることで、内臓脂肪を減らしつつ筋肉量を維持・増加させる健康プログラムの効果を、より明確に評価できるようになる可能性があります。

 

ただし、MRIを広く健康診断として利用するにはコストや機器の普及の問題があるため、すぐに一般化することは難しいという点には注意が必要です。

  

 

GLP-1薬との関連:筋肉量維持の重要性

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近年、肥満治療薬としてGLP-1受容体作動薬(例:オゼンピック)が広く使われるようになり、体脂肪減少に優れた効果があることが知られています。

  

しかし、一部の研究では、GLP-1薬が筋肉量の減少も引き起こす可能性が指摘されており、その点が懸念されています。

 

研究者は、今回の研究結果が今後の治療薬開発に貢献し得ると述べており、「理想的には、内臓脂肪を減らしながら筋肉量を維持する、あるいは増やすことが脳年齢にとって最も利益が大きい」と指摘しています。

  

また、研究チームは、MRIによる筋肉・脂肪量の測定と脳年齢の指標が、将来的にGLP-1薬の最適投与量の検討に役立つ可能性があると述べています。

 

ただし、これはあくまで仮説段階であり、今後の臨床試験が必要である点も明記されており、現時点では確定した結論ではありません。

 

 

研究の限界と今後の課題

本研究は大規模なデータを基にAI解析を行った点で意義が大きいものの、以下のような限界もあります。

・因果関係は証明されていない:筋肉量が脳を若く保つのか、または脳が若い人がより活動的で筋肉量が多いのかは明確ではありません。

・参加者は比較的健康な中年層に限定されており、他の年齢層への一般化は慎重に行う必要がある

・脳年齢の推定はAIのアルゴリズムに依存するため、モデルによっては推定にばらつきが出る可能性がある

 

これらの点について、研究者たちも今後より長期的かつ多様な集団を対象とした検証が必要であると述べています。

 

 

まとめ

・筋肉量が多く内臓脂肪が少ない人ほど、MRIで見た脳年齢が若い傾向があることが示された

・内臓脂肪と脳年齢には関連があるものの、皮下脂肪とは関連が見られなかった

・健康維持やGLP-1薬の活用において、筋肉量の維持は重要である可能性がありますが、因果関係については今後の研究が必要

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