揚げ物やピザ、ハンバーガーなど、高脂肪食をが体に好ましくない影響があるということはこれまでもいくつか取り上げてきました。
過去、様々な研究に目を通してきましたが、動物の実験でも人間での長期的なデータ分析でも、高脂肪食のメリットは「美味しい」意外に見当たりません。
これは現代が飽食の時代と呼ばれており、そういった食べ物を好きなだけ食べることができるからかもしれません。
高脂肪食の恐ろしい点は、体のあらゆるところで“炎症”が起きるところです。
これは血管や内臓だけでなく脳においても影響があり、特に体が回復を求めている際には非常に厄介な問題になります。
今回のテーマはそんな高脂肪食と脳への影響についてです。
以下にまとめていきます。
参考記事)
・Eating Fatty Food Days Before Surgery May Impair Memory(2024/04/02)
参考研究)
オハイオ州立大学による研究では、手術前の3日の間に脂肪分を多く含む食べ物を与えたラットが、最長2週間の持続的な記憶障害の兆候が見られたことを発表しています。
また、脳内の炎症の急増も見られ、それが3週間続いたことが明らかになりました。
これらのことから、手術前や体に侵襲性のある事象の前に高脂肪食を摂取していると、記憶障害が起こった際に長期に渡って影響が長引く可能性が示唆されました。
これに伴い、高脂肪食の摂取は手術に対する神経炎症反応を増強するものと考えることができます。
人間を対象とした過去の研究では、脂肪分の多い食事を摂取することで、炎症反応を助長するだけでなく、老化に伴う認知機能の低下を早める可能性があることも示されています。
これは、習慣的な摂取はもちろん、たまに食べる甘いおやつや脂肪の多いごちそう(ケーキやピザなど)でさえも、脳機能に影響を与える可能性があることが、他の動物研究によって示されています。
オハイオ州立大学の行動神経科学者ルース・バリエントス氏は、「高脂肪食だけでは脳の炎症がほんの少し増加するに過ぎないが、手術と組み合わせると負の相乗効果が得られ、長期記憶に問題が生じる」と述べています。
研究チームは、腹部手術に似た処置を試験的に行う前に、若年ラットと老ラットに高脂肪食または標準食を3日間与えました。
また別の対照グループとして、高脂肪食を与えられながらも手術を行わないラットを用意しました。
2週間後、実験の対象となった全ての動物に一連の記憶テストが行われました。
テストの結果から、高脂肪食を与えられた若いラットと高齢のラットの両方で記憶障害が見られ、これは手術後少なくとも2週間は残りました。
また、脂肪の多い食事を与えながらも麻酔や手術を受けなかった対象群も、不健康な食事によって同様の記憶障害を示したため、これらの影響は麻酔とは関連していないと判断しました。
これらの認知効果がどのくらい続くのか、またモルヒネなどの術後のオピオイド鎮痛剤などの影響によってどうなるのかについては今後さらなる研究が必要となるでしょう。
続く研究では、DHAオメガ3脂肪酸のサプリメントを1か月間摂取することで、若いラットと高齢のラットの両方で術後の炎症反応が鈍くなり、それに伴う記憶障害が予防されることを発見しました。
バリエントス氏は、「驚くべきことに、DHAは高脂肪食に伴う負の反応を防ぐのに効果的だった。特に、手術を受けることがわかっていて食生活が不健康な場合に、これが前治療になる可能性がある」と述べ、術前の高脂肪食に対する処置の選択肢として考えることができることについて言及しています。
しかし、この実験の結果は動物によるもので、人間、特に肥満の手術患者にどのように当てはまるかは不明です。
さらに言うと、過去の研究から、手術で使用される全身麻酔薬に対する男性と女性の反応が異なることなど様々な要因があるため、これらについても今後の研究課題となると述べています。
この研究の詳細は、Brain, Behavior, and Immunityにて確認することができます。