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なぜNYはコミュニティ通貨の発行検討を開始したか

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  • MALIS
  • 2018/06/07 01:30

こんにちは、NYにはDOMO TACO(ドーモタコ)ってタコスのお店があるんですが、

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ここ、時々NHKのドーモ君ぬいぐるみが飾られてるんですよねー。関係あるんですかね?今日はいなかったけど。


さて、今日も変わらず真面目に書きますMALISことマリです。

昨日、目にとまったこのニュース

“ニューヨークで コミュニティ通貨の発行が提案される”

”ニューヨーク州議会のロン・キム議員は、地域限定で使えるコミュニティ通貨を発行するための議案A11018を作成し議会に提出した。”


ニューヨークでも話題になっているこの議案、現地の状況も交えながら解説させていただきます。


1.背景にあるのは、ローカル店舗の危機?

議案を提出したロン・キム議員の問題意識はこの発言に集約されています。

”ニューヨークの都市では小さな商店が閉店を余儀なくされ、そのかわりに大型のチェーン店が増加しているという。大型のチェーン店が増えすぎると、商店を営む人々から仕事を奪うことになり、地域経済に悪影響を及ぼしかねない現状をキム議員は懸念していた。”

この問題意識はかねてから言われていたことで、チェーン店のせいでマンハッタンがつまらなくなった、と言う人はとても多いです。

10年ほど前から面白い店舗はどんどんマンハッタンから出てブルックリンに移動してしまいました。そのブルックリンすら、ウィリアムズバーグやダンボといった人気のある地域は今やチェーン店のオンパレード。オリジナリティ溢れる店舗はさらに東へ移動している状況です。

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マンハッタンきってのファッション地区であるソーホーも、今やファストファッションだらけです。ファストファッション好きだけど。

(駅ビル立てすぎて東京がどこ行っても一緒に見えるのと同じですね)


2.ローカル店舗をコミュニティ通貨は救えるのか?

では、コミュニティ通貨で本当にローカル店舗は生き残れるのでしょうか?

この問いに答えるには、なぜローカル店舗は外に出て行かざるを得なかったのか?の理由をしっかり理解する必要があります。

顧客が有名なチェーン店に流れた、というのは勿論大きな要因の一つです。ただそれ以上に無視できないのが、地価の問題です。マンハッタンの地価は2008年の金融危機以降ぐんぐんとあがっており、2013年から2016年の3年で約1.5倍、ものによっては2倍近くまで上がっている物件もあります。

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マンハッタン対岸のマンション価格はマンハッタンと同じか下手したら高い

このような状況では小さな店舗は生きてはいけず、資本力のあるチェーン店舗だけが進出可能となってしまうのです。

この傾向は周辺のエリアにも影響を与えており、ブルックリン、クイーンズといった比較的地価の低かったエリアが再開発対象になる→地価があがる→ローカル店舗出ていく、の循環が生まれています。

果たしてコミュニティ通貨は、地価の問題解決に有効なのでしょうか?


3.ブロックチェーンを使う必然性は?

もう一つの疑問はブロックチェーン技術を用いる必然性です。この技術が生まれる前から、地域通貨は様々な国、地域で用いられてきました。日本でも2000年代初頭に大量につくられましたよね。

さらに、地域通貨を使わずに、ローカルにお金を流すサービスも出てきています。例えば、ニューヨークではCUPSというスタートアップが、ローカルなコーヒーショップへ顧客を誘導するアプリを開発・提供しています。

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私もよく使っています。


じゃあなんで、今回はブロックチェーンなのでしょうか?疑問が残ります。


4.理由は、ブロックチェーンのビジネス発展のため?

ブロックチェーンを使うのは、導入容易性やコミュニティの盛り上げのためだ、というのが一番美しい解説かと思いますが、Ron Kim, a Lawmaker From the NY State Assembly, Advocates Testing Local Digital Currenciesという記事のロン・キム議員の発言をみていると違う意図があることがわかります

“Kim also notes that ever since the New York State Department of Financial Services has introduced BitLicense in August 2015, it has proved to be a major roadblock in supporting important projects, as a result of which several businesses have moved outside the New York state.”

意訳:キム議員は、“ニューヨーク金融サービス局が2015年8月にビットライセンス(NYの規制)を導入して以来、重要なプロジェクトの推進が阻害されている。結果として、いくつかのビジネスがニューヨーク州から出て行ってしまった”と述べた。


というわけで、ニューヨークの仮想通貨市場への規制強化がビジネスを妨げているという危機感が根底にありそうですね。

最近のニューヨーク州議会では、この議案以外にもブロックチェーンセンターの設立やら仮想通貨タスクフォースの立上げやら、一度は規制強化したけどもう一回ビジネスやりやすくしよう、という動きがどんどんでてきていますね。柔軟だ。

今回ご紹介した議案A11018は議会で前向きに検討されていますので、今後どんなビジネスモデルが出てくるのが注目したいと思います。

法案の状況はニューヨーク州議会のウェブサイトから確認できます



後記として、

ニューヨークの動きを見ていると、実現可能性や効果をあれこれ調べる前にとにかく提案!という姿勢を強く感じます。今回の法案も通ればまずはパイロットプロジェクトから始まるのですが、あとはイケイケのスタートアップが出てきてなんとかなるやろ!という自信、見習いたいものです。


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公開日:2018/06/07
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エネルギー政策専門のコンサルタントです。ニューヨークにいることが多いのでこちらの情報発信が多めになる予定。Twitter: @mari_saita

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