札幌ではヒグマが市街地に出没しているらしい。
ニュース映像でみる限り、どこか愛らしい表情をしている。
でも実際に普段の生活環境でこんなんに出くわしたら卒倒するだろう。僕だったら腰が抜けて動けなくなってしまうかもしれない。
体重200キロ、立ち上がれば2mにもなる。とても太刀打ちできる相手ではない。
手の平は人間の顔より大きい。一撃で首がもげる。
牙はトラより大きく、人間の頭蓋骨などわけなく噛み砕く。
こんなものが悠然と街の中を闊歩しているのである。
なんてこった!
日常生活が成り立つはずもない。
通勤、通学、買い物、すべてアウト。
家の中にこもっていたって安全とはいえない。ガラス窓など簡単に打ち破ってしまうだろう。おちおち寝てもいられないではないか?
極めて当然とは思うが、すぐに駆除しないといけない。
誰だってそう思うはずなんだが…
なのにこのヒグマの駆除が決定されるまで3日程度を要している。
それまでは箱罠で生け捕りしようと試みていて無理と判断し、猟銃で仕留めることにしたわけなのでそんなに遅い意思決定ではないと思われる方もいるだろう。
しかしだよ、その間に住民は恐怖におののき、危険にさらされ、まともな生活ができなかったわけだよね。
なんですぐに駆除しないんだ?
人間の生活圏に現れたら速攻駆除でしょ?
そう。ダメなんです。
そんな単純にはいかない世の中になってます。
猟友会の高齢化?
町中での発砲がためらわれた?
まあそういう事情もいくらかあるでしょ。
でも、札幌市が駆除決定を遅らせた最大の理由はやはり
”動物愛護”への配慮からでしょう。
今回のように大々的に全国ニュースに取り上げられている中で
さしたる理由なく(?)ヒグマを殺してしまっては、その後の動物愛護団体や動物愛護家からの徹底的な避難に晒されることになります。
これを避けるには、とことん時間と労力をかけて最大の努力をしたけど、やっぱ駆除するしか無いよね、ってことが納得される演出が必要だったわけです。
住民の不安な様子、徹底した警戒態勢などテレビやメディアでさんざん報道して
ようやく国民的な総意が得られ、初めて駆除を決定できたわけです。
ヒグマ一頭の駆除にここまでしないといけない、いまはそういう時代です。
しかしですよ、もし、住民に被害があったら札幌市はどう責任をとるのでしょう。
明らかな危険に対して万全を期さなかったことになりませんか?
滅多に発生しないことなら今回の対策でも文句はありません。
しかし、クマ出没はもはや珍しいことではなくなってます。
北海道だけではありません。日本全国でクマが人間の生活圏を脅かしています。
なぜそうなっているかは野外調査によって明確になっています。
クマが増えすぎちゃった。
それだけの単純な理由です。
人がクマを狩らなくなった結果、彼らは急激に増えています。
ここ10年で2倍に頭数を増やしていると報告されています。
クマに限らず鹿やイノシシなど日本の野生動物は、近年増え続けています。
天敵がいないので人間が狩らなければ極限まで増え続けることになります。
狼でも放てば問題解決になるかもしれませんが、それはそれで問題が大きそうです。
若い人たちはハンターになりたくないようです。
ジビエ料理が人気化して需要はいくらか増えているので、ハンターになって生計はたてられそうです(責任は取りませんが)。
それでもやはりハンターは不人気です。
動物を殺すのは嫌だ、命を奪うなんてありえないって感じているようです。
わからなくはないです。ぼくも嫌です。
でも、誰かがやらないとたぶんたいへんなことになるでしょうね。
夏の盛りに全国でクマの出没が頻繁に報告されています。
秋口になったら倍増しませんか。
クマは冬眠に備えて大量にエサを摂らないといけません。
子連れの母グマなら凶暴になってでもエサを探し回ります。
どこかで普通の生活をしている住民が、近いうちに犠牲になる。
そんな蓋然性がどんどん高くなっています。
そうなってからでは遅い。
でもそういう既成事実がないと行政は動けない。
困った問題です。
そして最初の犠牲者が出るまで、もう時間は残されていない。