8歳の時。
父親が働いている会社で、1泊2日の社員旅行に行ってきた。
俺の父親が務めていた会社は、親戚のおじさんが社長の会社だった。
父親が独身の時、この会社の社長に妹を紹介されて、お見合い結婚した。
その妹が、俺の母親だ。
特に家族経営という訳では無く、従業員はみんな、他人だった。
その従業員の家族もつれて、社員旅行に行こうと言う。
凄く羽振りの良い時代立った。
社員旅行に行ったのは、年末の少し前。
従業員は、旅行の為に仕事を一生懸命、早めに終わらせたらしい。
そして、旅行当日。
集合場所は、東京駅。
東京駅に着いたら、従業員の家族以外に、社長の親戚も来ていた。
全員の人数を写真を見て数えたら、総勢21人だ。
俺の知らない子供達もたくさんいて、楽しくなりそうだった。
目的地は、京都。
俺は、初めての新幹線に乗り、超ご満悦で興奮が抑えきれなかった。
大人達は、早速新幹線の中でお酒を飲み始める。
俺は、事前に「てれびくん」という雑誌で、新幹線の情報を得ていた。
この新幹線には「ビュッフェ」と言う食堂がある。
俺は、そこに行ってみたくて、たまらなかった。
父親に、ビュッフェに行きたい事を伝えたら、連れってってくれると言う。
そして、ほろ酔いの父親と、ビュッフェに向かった。
ビュッフェに入ると、タバコの煙がモクモクしている。
この頃は、まだ新幹線内でもタバコを吸っても良かった時代だった。
俺は、タバコの煙なんて、もう慣れているから気にならない。
この状況の中で、サンドイッチと、ミルクを頼み、食事をした。
外の景色を見ながら食事が出来るなんて、最高の贅沢だ。
俺は、まさにこれが、大人のダンディズムだと、超ウキウキになった。
食事が終わり席に戻ると、おなか一杯で、すぐに眠くなる。
おれは、そのまま京都につくまで寝てしまった。
旅館に向かう途中、大人達が着物を着た綺麗なお姉さん達と何か話してる。
この時は、良く解らな方けど、芸者の予約をしていたのだった。
我々は、旅館に到着して、真っ先に温泉に入る事にした。
その温泉は、もの凄く大きく、しかも貸し切りで混浴だった。
母親達は、バスタオルを巻いて、家では見た事ない姿で温泉に入っていた。
俺は、その姿を見て、何でそんな恥ずかしがるのか意味が解らない。
いつも一緒にお風呂に入っているのに、恥ずかしい事が良く解らなかった。
何だか、凄く違和感を感じる。
でも、すぐに気にならなくなり、大浴場で泳ぎまくって遊んでいた。
そしたら母親達は、後でもう1度入ると言い、温泉から出て行ってしまう。
この後、部屋に戻ったら、豪華な食事が用意されていた。
その中に、鯛の生き作りがあった。
体が刺身にされているのに、口がパクパク動く。
俺は、それが怖くてみる事が出来なかった。
父親は、もう死んでいるから大丈夫だと言うが、怖くてたまらない。
その刺身を、父親に食べさせてもらったが、美味しさが感じなかった。
味なんかより、鯛が怖くて半べそ状態だったからだ。
俺は、自分が食べられる物を選び、たらふく食事が出来た。
基本、魚介類は、テレビで動く所を見ているので嫌いだ。
それ以外の物だけを、食べていた。
そしたら、芸者が部屋に登場してきた。
来てくれた芸者は、4人。
子供の俺にとっては、見た事も無い、絶世の美女達で凄く驚いた。
まるで、本物のアイドルの様だった。
大人達は、芸者の芸で大盛り上がりになっていく。
でも子供達は、芸者の芸があまり面白くなく退屈だった。
そこで俺は、仲が良かった親戚の子達3人で、旅館探検に行く事にした。
とりあえず、旅館の端から端まで行く事にしてみた。
そうしたらこの旅館が、想像以上に大きい。
行けども行けども、行き止まりが無かった。
我々は、旅館の探検していたら、広すぎて迷子になってしまった。
もう、宴会場がどこだったか、さっぱり解らない。
我々は、焦り、テンパり、もう泣きだしそうだった。
その後、30分位、必死に旅館内を走り回って、宴会場を探し続けた。
もうダメかと諦めた時、隣の建物の1階に、父親の姿が見えた。
父親は、芸者と一緒に、一升瓶を片手に持ちバカ踊りをしている。
我々は、とうとう宴会場を発見できて、嬉しくてホッとして腰が抜けた。
でも、向い側の建物に行く連絡通路なんて、どこにあるのか解らない。
我々は連絡通路を探さず、その場から外に出て一気に隣の建物に走った。
外に出た場所は、綺麗な芸術作品の庭園だった、
しかしこの時、そんな事なんて全く気にする事が出来なかった。
我々は、豪快に庭園を荒らし、走って隣の建物に向かった。
やっと、迷子から解放されて、我々はすっかり疲れ果てた。
この後芸者の踊りをしばらく見ていたが、面白くないので、寝てしまった。
この後、父親がおんぶして、寝室に連れてってくれたみたいだ。
俺は、そのまま朝まで寝てしまう。
翌朝、母親に何時まで宴会をやったのか聞いてみた。
そしたら、深夜2時までやったらしい。
大人達は、お酒が入ると凄くタフになる事に、感心してしまった。
Pt2に、続く