他カテゴリ

思い出「兄の幻覚」

鈴木穣's icon'
  • 鈴木穣
  • 2020/10/04 05:14

 

Content image

 

【孤高の祖母】

2歳半の時。

今まで住んでいた西川口から、東京の町屋と言う所に引っ越してきた。

引っ越し先は、おばあちゃんの家。

母親が弟を妊娠したので、お祖母ちゃんが家事全般ををする為だった。

そして、体に負担をかけない様にと言う理由で、引っ越してきた。

更に、出産費用を捻出する為、家賃を浮かせようと言う考えもあった。

実は、俺のおばあちゃんは、人間嫌いで親族以外の人付き合いが悪い。

1人でいる事大好き人間だった。

そんなお祖母ちゃんが、よく今回の引っ越しを了解してくれたと感じた。

そんなお祖母ちゃんだけど、俺の事は凄く可愛がってくれていた。

でも出不精で、西川口にいた時も、なかなか俺に会いに来てくれなかった。

いつも母親が、何とか説得してやっと来てくれる位だった。

なので、お祖母ちゃんに会いたいと言うと、いつもこちらから出向いた。

しかも今回は、一緒に長期間住む事になる。

自分の娘の事だと思い、本気で覚悟を決めたのだろう。

一人大好きお祖母ちゃんなのに。

Content image

 

【消えゆくパンタグラフ】

一緒に住み始めると、お祖母ちゃんは、俺の面倒をしっかり見てくれた。

俺は、お祖母ちゃん大好きっ子だった。

そして、いつもお祖母ちゃんに甘えていた。

その度に、全く嫌な顔をせず、ずっと一緒に遊んでくれた。

そのせいで、母親が家事全般をやる羽目になってしまっていた。

母親の家事の負担を減らす為に引っ越してきたのに、本末転倒だ。

でも俺は、そんな事なんて全く気にせず、お祖母ちゃんを1人占めした。

この時お祖母ちゃんは、ずっと嫌がる事も無く、俺と遊んでくれていた。

たまに、親戚のおじさんも遊びに来た。

この時、俺の大好きな電車のおもちゃを、よく買って来てくれた。

この電車のおもちゃは、またいで乗れる大きな電車のおもちゃだった。

この電車のおもちゃには、リアルなパンタグラフが付いていた。

それが結構尖った部分が多く、触るとチクチク痛い。

でも、いかにも電車っぽくて、俺は嫌いじゃなかった。

そのチクチク痛がっている姿を、お祖母ちゃんはしっかり見ていた。

そうしたら、4台あった電車のパンタグラフ全部むしり取ってしまった。

俺は「それを取らないでくれ~」と思ったが、問答無用で全部取られた。

Content image

 

【一人っ子最終日】

俺は、3歳になっていた。

俺は、外で遊ぶ時、怖くて遠くには行けず、いつも玄関前で遊んでいた。

そこで三輪車を乗って遊んでいた。

その他にも、三輪車をひっくり返し、ペダルを回して遊んだ。

この時何故か「お弁当屋さん~」と言って遊んだが、何故かは解らない。

多分直感で、そんな感じがしたのだと思うけど、分け解らん。

お祖母ちゃんがトイレに入ると、寂しくてよく泣いていた。

俺は、常にお祖母ちゃんのそばに居ないと、寂しくて仕方なかった。

そんな生活をしていたある日、とうとう母親に陣痛が来た。

この時、急いで救急車を呼び、父親にも連絡して帰ってきてもらった。

父親は、お祖母ちゃんの家から、歩いて10分位の所の職場で働いていた。

なので、即帰ってこれた。

そして母親と父親が、救急車に乗り病院に向かって行った。

この時俺は、お祖母ちゃんと家で留守番する事になった。

この日は、お祖母ちゃんと2人で過ごす事になった。

でも、お祖母ちゃん子だった俺は、全然寂しくなかった。

俺はこの時、兄になる実感なんて全くなかった。

なので、生まれてくる赤ちゃんの事なんて、全く無関心だった。

お兄さんになると言うのは、前から聞かされていた。

でもこの時は、兄の意味なんて全く解らない。

ずっと甘えていたいと言う気持ちしかなかった。

Content image

 

【兄貴の初日】

次の日の1月9日、とうとう弟が生まれた。

俺とお祖母ちゃんは、朝ご飯を食べた後、早速病院に向かった。

病院は、歩いて15分の町屋駅前にある「竹内病院」

途中まで1人で歩いたが、結局疲れておんぶしてもらい、向かった。

病院に到着して、母親とお祖母ちゃんが、生まれた時の状況を話している。

俺は、そばでその話を聞いていたら、安産だったと話してた。

しかも、病院に到着して4時間後に生まれたらしい。

そして俺は、母親のベットに上って赤ちゃんを見てみた。

赤ちゃんを見てみたら、男か女か全く解らない。

母親に、性別を聞いてみたら、男だから弟だと言っていた。

俺は、弟が出来た事は理解できたが、お兄さんの実感が全くない。

突然現れた赤ちゃんに、何をどうしてあげれば良いのかも解らない。

でも、とりあえず頭を撫でてみた。

そうしたら、プヨプヨしてゴムみたいに柔らかかった。

まるで、すぐに壊れそうな危険ささえ感じた。

でも、この感触を実感し、やっと可愛がりたいという感情が出てきた。

Content image

 

【しぼんだ風船】

しばらくして、母親用に病院食が運ばれてきた。

俺は、母親に抱っこされながら、その病院食を食べてみた。

そうしたら、凄く美味しい。

大人にとっては、味が薄くて不味いらしいが、俺にとっては最高の美味だ。

思わず、母親の料理より美味しいと感じてしまった。

この時、父親がもう少し美味い物を作ってくれと言っていた事を思い出す。

俺は、その言葉の意味が今わかった。

母親は、料理がもの凄く下手くそなんだと。

この日、母親は病院に入院する事になり、我々は家に戻った。

そして次の日の午後、母親が病院から帰ってきた。

子供が生まれたのに、たった1日の入院で戻れたのは、意外だった。

俺は1週間位、母親が戻って来ないと聞いていたからだ。

この時の母親は、おなかの膨らみが無く、しわだらけだった。

まるで風船がしぼんでしまった様な感じがした。

このしわの事を母親に言ってみたら、しばらくすれば消えると言う。

このしわを触ってみたら、赤ちゃんの頭よりブヨブヨして、なんか面白い。

俺は、一緒にお風呂に入ると、このしわをいつも触っていた。

そうすると母親は、転げる様に、くすぐったがっていた。

それが更に面白くて、嫌がる母親に関係なく、よく触っていた。

Content image

 

 

Article tip 0人がサポートしています
獲得ALIS: Article like 10.68 ALIS Article tip 0.00 ALIS
鈴木穣's icon'
  • 鈴木穣
  • @MoonlightLoneiy
ブログ内容月水 「思い出」火金 「科学技術」水土 「日記」日  「思い出」HP https://mirai-gijutu.com会社を辞めて、1人で稼げる道を、手探りで模索しています!

投稿者の人気記事
コメントする
コメントする
こちらもおすすめ!
Eye catch
トラベル

梅雨の京都八瀬・瑠璃光院はしっとり濃い新緑の世界

Like token Tip token
216.64 ALIS
Eye catch
他カテゴリ

テレビ番組で登録商標が「言えない」のか考察してみる

Like token Tip token
26.20 ALIS
Eye catch
他カテゴリ

警察官が一人で戦ったらどのくらいの強さなの?『柔道編』 【元警察官が本音で回答】

Like token Tip token
114.82 ALIS
Eye catch
クリプト

ジョークコインとして出発したDogecoin(ドージコイン)の誕生から現在まで。注目される非証券性🐶

Like token Tip token
38.31 ALIS
Eye catch
ゲーム

【初心者向け】Splinterlandsの遊び方【BCG】

Like token Tip token
6.32 ALIS
Eye catch
クリプト

Bitcoinの価値の源泉は、PoWによる電気代ではなくて"競争原理"だった。

Like token Tip token
159.32 ALIS
Eye catch
クリプト

Bitcoin史 〜0.00076ドルから6万ドルへの歩み〜

Like token Tip token
947.13 ALIS
Eye catch
グルメ

バターをつくってみた

Like token Tip token
127.90 ALIS
Eye catch
トラベル

わら人形を釘で打ち呪う 丑の刻参りは今も存在するのか? 京都最恐の貴船神社奥宮を調べた

Like token Tip token
486.35 ALIS
Eye catch
クリプト

17万円のPCでTwitterやってるのはもったいないのでETHマイニングを始めた話

Like token Tip token
46.60 ALIS
Eye catch
他カテゴリ

京都のきーひん、神戸のこーへん

Like token Tip token
12.10 ALIS
Eye catch
他カテゴリ

警察官が一人で戦ったらどのくらいの強さなの?『柔道編』 【元警察官が本音で回答】

Like token Tip token
114.82 ALIS