16歳の時。
日本橋の江戸橋茶館と言う喫茶店で、バイトをしていた事がある。
このお店は、野村證券ビルの地下1階にあった。
今はもう、無くなってしまっている。
この喫茶店は、周りのオフィス街への配達が 主な仕事だった。
喫茶店内には、ほとんど客は来ない。
お盆に飲み物や、食事を、たくさん乗せて、それを肩に担ぎ配達に行った。
各会社から注文があると、そこに配達する。
1㎞先位まで、届けた事もあった。
ある時、俺はインフルエンザを、うつされてしまった。
生まれて初めてのインフルエンザだった。
日曜日、朝起きると体の関節が痛く、体もだるい。
何の症状か解らず、とりあえず出勤した。
少し目が回った感覚のまま、数時間仕事をしていた。
しばらくすると気持ちが悪くなり、トイレで吐いてしまった。
俺は流石に何かマズいと思い、早退させてもらった。
そして地元に付いたら、すぐ医者に行ってみた。
そうしたらインフルエンザの診断を受けてしまった。
呼吸もしにくく、体が非常にだるい。
医者に、1週間は安静にしているように言われてしまった。
でもバイトは人が居ない為休めなかった。
明日もバイトに行かないとならない。
俺は医者にわがままを言って、何とかしてほしいと 医者に頼んだ。
そうしたら、特別に今回だけ、強力な薬を打ってあげると言ってくれた。
打つ?
俺はすぐに解った。
それは、俺が大っ嫌いな注射だと。
自分の腕に針が入る所を見るのが 怖い。
それが凄い恐怖だった。
しかも痛い!
でも背に腹は代えられない。
俺は、顔を引きつらせながら、半べそになり、仕方なくその注射を打つことにした。
薬の名前は忘れてしまった。
でも、1回の注射で 8,000円位取られた。
セレブで高級な注射だった。
きっと、注射器も純金製で、ダイヤモンドもあしらわれてたに違いない。
その注射を打って数分後、お酒を飲んだみたいに、体が温まってきた。
俺はお酒を飲むと、吐き気がして頭が痛くなる。
でも、これは凄く気分が良くなる温まり方だった。
麻酔を打った時の様な、気持ちの良さだった。
おれは、ふらふら歩きながら家に帰った。
俺の家は歩いて5分位の所にあった。
もし、もっと遠い所にあったら、変質者だと思われ通報されていたかもしれない。
そして、俺は家に到着したら、すぐ寝てしまった。
おかげで凄く熟睡できた。
次の日の朝。
完全に完治はしていなかったが、インフルエンザは、ほぼ治っていた。
普通インフルエンザは1晩では治らない。
先日打たれた注射は、物凄く効果がある注射だった。
さすが、純金製の注射器だ。
これ以降、何度かインフルエンザになった事がある。
そのたびに、この注射を打ってほしいと、毎回医者に頼んだ。
でも医者には、あんな強力な注射は滅多に打てないよ!
と言われ続けている。
俺はこの時以降、もう1回だけ打ってもらえた。
でも今はもう、あの純金製の強力な注射は打ってもらえない。
その代わり、「ラピアクタ」という点滴を打たれる事が多い。