高木彬光をして〈恐怖小説としては、「古今東西、空前絶後の最高傑作」と、めったなことでは使えない讃辞を呈してもよいのではないか(角川文庫版解説より)〉とまで言わしめた怪作。
話の筋は至ってシンプル。
それ故文章のセンスが問われるところ、そこは天下の大乱歩、艶やかなグロとでも言うべき凄まじい描写と終盤の突っ走る狂気で見事に乗り切っている。
題字も本文と同じく新仮名に改められているが、後半のとある箇所だけは旧字体の〈蟲〉がそのまま使われ、主人公の心象を一層病的なものにしている。